殺人兵器が溺愛する戦場の天使

ほのじー

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三章:大人

ヴィンセントの変化

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「リリィ、まだいたのか」
「・・・ヴィー。うん、最近仕事のあと書類仕事が多くて」


リリィは患者の書類を纏める仕事を任され、しばらく残業する時間が増えるのだろう。もう外は暗く、人影もない。


「寮まで送ってあげよう」
「い、いいよ。一人で帰れる」
「ダメだ。夜は危ないんだから」


ヴィンセントはあれから職場でもリリィによく話しかけるようになった。ヴィンセントの瞳は今までの保護者に向けるものでも、ここ一年の気まずいものでもなくなった。甘く、色気のある瞳だ。


「ほら、行くぞ」
「う、うん」


リリィの寮は職場から十五分程歩いた場所にある。ヴィンセントの家の方角とは逆だ。


「しばらく残業続きそうなのか?」
「う、うん。二週間くらいはそうなるかも」
「じゃあ、明日も送ってあげるから一人で帰るんじゃないぞ」
「で、でも・・・」
「でも、はなしだ。リリィ」


こういう時だけ保護者のようにリリィを嗜める。このモードのヴィンセントにリリィはノーとは言えないのだ。



「ありがとう、ヴィー」
「どういたしまして」


あっという間に寮の前にたどり着く。ヴィンセントはリリィの顔に唇を近づけ、リリィは身構えるも、ヴィンセントはリリィの額に軽くチュッとキスをするだけであった。リリィが部屋に入るのを見届けて、去っていった。







「あれぇ、リリィ、ヴィンセント様に送ってもらったの?愛されてるわね~」


リリィの寮として与えられた家は同僚のジナと一緒だ。キッチンやリビング、風呂場は共同で一人一部屋与えられている。ジナはリビングでなにやら人体実験の本を読んでいるようだった。


「リリィが飲み会の後帰ってこなかったあの日から、あの男、リリィにデロ甘な眼を向けてるんだもん、なんか皆察しちゃったわよね~」
「ヴィーとはそんなんじゃっ」


(他の人にも分かっちゃうくらい変わった!?)


リリィは騎士団員たちに気づかれてなんだか恥ずかしくなる。火照る顔を手で仰いだ。


「顔赤くなっちゃって、可愛いわね~。ああ、そういえば赤面すると胃の内側も赤くなってるって知ってる?この人体実験の本に・・・」


ジナは相変わらず、話が変な方向に向かうのだが、いつものことなので聞き流しておく。



(あんな顔されたら、私も拒否できなくなっちゃう)


リリィが女学校を卒業してからヴィンセントの家を出たのは良い機会だと感じていた。それでもヴィンセントとの繋がりを無くすことはできず、女々しく同じ職場で働いているのだ。遠くから見ているだけで良い、影でサポートできたら良いと思うのだが、彼を見れば見るほど、もっと会いたい、もっと触れたいと欲が出てきてしまうのだ。



(ヴィーには幸せになってほしい・・・でも私の存在が、ヴィーの命を危険に晒す)



パーティーで東の国にリリィの存在がバレた可能性がある。そうなると東の国はリリィを東の国の戦力としようとするかもしれない。リリィは「もう少しだけヴィーといさせて」と天に祈った。



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