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サイラス、ローズに叱られる
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※サイラス視点です。時系列はフランソワ王女ジュリアに抱きつき事件の前あたりです。
「サイラス、待ちなさい」
扇子で口元を隠しながら冷やりとした目でサイラスを見ているのはこの国の王妃であるローズだ。その隣には国王が慌てた様子で座っている。
「あなたとフランソワ王女が婚約するって話が出回ってるそうね」
「お、おい、その噂は真っ赤な嘘でだな・・・」
──パチン──
国王がローズに弁明しようとするも、ローズは扇子を閉じてそれを遮った。その目は怒りに燃えているようだ。
「あなたは黙っててちょうだいな。サイラス、あなたの恋人にはちゃんと説明したのかしら」
「説明、ですか・・・?」
「ああ、やっぱりどんだけこの事が深刻か分かってないみたいね。ジュリアはあなたがフランソワ王女と婚約すると思っているわよ。それを信じたままその婚約者を護衛しなければならなかったなんて、どんな苦行だったかしらねぇ」
理解ができていない様子のサイラスに、ローズは机の上をトントンと苛立つように扇子で叩く。いくら天才と呼ばれる宰相でも女心は分からないようだ。
「ジュリアは優しいから、そんな相手の身代わりまでして、彼女を助けて自分が犠牲になったのよ」
(そんな・・・考えてもみなかった)
サイラスは他の貴族に嫌われることも多く、根も葉もない噂が今までどれだけ飛び回ったであろうか。それにいちいち反応するのも億劫で、いつも無言を貫いていた。
(私は、ジュリア殿に伝えていただろうか)
仕事が忙しくなり、さらにフランソワの我が儘に付き合わされきちんとジュリアと話が出来ていなかったことに気づく。さらにジュリアが護衛中フランソワと出掛けなければいけなかった際にもフランソワの結婚するという発言に否定していなかった自分に気づく。
(なんてことだ・・・)
小さい頃フランソワがサイラスと結婚すると駄々を捏ねた際に反論するとさらにわめいて煩かったので、それからはそのような発言をしても何も言わないことにしていた。サイラスはあくまで宰相であるので、王女であるフランソワに対して失言は控えたい。
「ジュリア、泣いていたそうじゃない。フィン副団長がちゃーんと慰めていたらしいけどね。まあ普通の女の子だったらフィン副団長を選ぶでしょうねぇ」
「っ・・・」
「その後にあんな拷問を受けて、レイプまでされかけたのよ。・・・私のお気に入りのジュリアには幸せになってほしいの。もし私があなたがジュリアに相応しくないと判断したら、無理矢理あなた達を引き離すつもりよ」
キッとローズはサイラスを睨んだ。
(そんなの、嫌だ。俺には彼女しかいないのに・・・)
「っ・・・ローズ様」
「分かったら早く仕事なんてしてないでジュリアのところに行きなさい!!」
「はい、失礼致します」
(ジュリア殿っ・・・)
サイラスが部屋を出ると、セバスチャンが慌てた様子でサイラスに駆け寄った。聞くとフランソワが屋敷に無理矢理入り、ジュリアに会おうとしているそうだ。
(くそっ、なんでこんな時に)
サイラスは急いで屋敷に戻るとフランソワがジュリアに抱きついているところが見えた。サイラスはフランソワを引き離し、ジュリアに弁明をした。無事誤解はとけたようでホッと胸を撫で下ろす。
(これからは、誤解を与えないようにきちんと伝えないと)
サイラスはその後すぐにフランソワとの噂は嘘だという情報を情報屋たちに流させた。その後サイラスは勇敢な女騎士に夢中だという噂が飛びかった。(その噂は市民にも知られる有名な話となるのだが・・・)サイラスとジュリアが一緒にいるところを直接見た人は納得するだろう。
「ジュリア殿、今日も愛らしいですね。愛していますよ」
「ジュリア殿、今日は髪を下ろしているんですね。ふわふわでいつまでも触っていたいです」
「ジュリア殿、てんとう虫が髪の毛に付いていますよ。ああ、私もこのてんとう虫になれたらあなたにずっと付いていられるのに・・・」
+++
周り:「げほっ、砂糖吐きそう」
「ぐほぉ、勘弁して・・・」
「サイラス、待ちなさい」
扇子で口元を隠しながら冷やりとした目でサイラスを見ているのはこの国の王妃であるローズだ。その隣には国王が慌てた様子で座っている。
「あなたとフランソワ王女が婚約するって話が出回ってるそうね」
「お、おい、その噂は真っ赤な嘘でだな・・・」
──パチン──
国王がローズに弁明しようとするも、ローズは扇子を閉じてそれを遮った。その目は怒りに燃えているようだ。
「あなたは黙っててちょうだいな。サイラス、あなたの恋人にはちゃんと説明したのかしら」
「説明、ですか・・・?」
「ああ、やっぱりどんだけこの事が深刻か分かってないみたいね。ジュリアはあなたがフランソワ王女と婚約すると思っているわよ。それを信じたままその婚約者を護衛しなければならなかったなんて、どんな苦行だったかしらねぇ」
理解ができていない様子のサイラスに、ローズは机の上をトントンと苛立つように扇子で叩く。いくら天才と呼ばれる宰相でも女心は分からないようだ。
「ジュリアは優しいから、そんな相手の身代わりまでして、彼女を助けて自分が犠牲になったのよ」
(そんな・・・考えてもみなかった)
サイラスは他の貴族に嫌われることも多く、根も葉もない噂が今までどれだけ飛び回ったであろうか。それにいちいち反応するのも億劫で、いつも無言を貫いていた。
(私は、ジュリア殿に伝えていただろうか)
仕事が忙しくなり、さらにフランソワの我が儘に付き合わされきちんとジュリアと話が出来ていなかったことに気づく。さらにジュリアが護衛中フランソワと出掛けなければいけなかった際にもフランソワの結婚するという発言に否定していなかった自分に気づく。
(なんてことだ・・・)
小さい頃フランソワがサイラスと結婚すると駄々を捏ねた際に反論するとさらにわめいて煩かったので、それからはそのような発言をしても何も言わないことにしていた。サイラスはあくまで宰相であるので、王女であるフランソワに対して失言は控えたい。
「ジュリア、泣いていたそうじゃない。フィン副団長がちゃーんと慰めていたらしいけどね。まあ普通の女の子だったらフィン副団長を選ぶでしょうねぇ」
「っ・・・」
「その後にあんな拷問を受けて、レイプまでされかけたのよ。・・・私のお気に入りのジュリアには幸せになってほしいの。もし私があなたがジュリアに相応しくないと判断したら、無理矢理あなた達を引き離すつもりよ」
キッとローズはサイラスを睨んだ。
(そんなの、嫌だ。俺には彼女しかいないのに・・・)
「っ・・・ローズ様」
「分かったら早く仕事なんてしてないでジュリアのところに行きなさい!!」
「はい、失礼致します」
(ジュリア殿っ・・・)
サイラスが部屋を出ると、セバスチャンが慌てた様子でサイラスに駆け寄った。聞くとフランソワが屋敷に無理矢理入り、ジュリアに会おうとしているそうだ。
(くそっ、なんでこんな時に)
サイラスは急いで屋敷に戻るとフランソワがジュリアに抱きついているところが見えた。サイラスはフランソワを引き離し、ジュリアに弁明をした。無事誤解はとけたようでホッと胸を撫で下ろす。
(これからは、誤解を与えないようにきちんと伝えないと)
サイラスはその後すぐにフランソワとの噂は嘘だという情報を情報屋たちに流させた。その後サイラスは勇敢な女騎士に夢中だという噂が飛びかった。(その噂は市民にも知られる有名な話となるのだが・・・)サイラスとジュリアが一緒にいるところを直接見た人は納得するだろう。
「ジュリア殿、今日も愛らしいですね。愛していますよ」
「ジュリア殿、今日は髪を下ろしているんですね。ふわふわでいつまでも触っていたいです」
「ジュリア殿、てんとう虫が髪の毛に付いていますよ。ああ、私もこのてんとう虫になれたらあなたにずっと付いていられるのに・・・」
+++
周り:「げほっ、砂糖吐きそう」
「ぐほぉ、勘弁して・・・」
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