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076. 猫狼の再会
しおりを挟む「(……!!)」
その背中を瞳に捉え、更に加速する。
「(あと……っ! 少しぃ……っ!!)」
背中がぐんぐんと近づいてくる。
――
――。
「(何か聞こえた?
……。
気のせいか。)」
……。
「(やはり何か……。)」
二度振り返るも、そこには何もなく。
前を向いて再び歩き続ける。
これで良かったんだと。
自分を偽るように。自分を欺くように。
自分に言い聞かせながら歩いて来た。
これは、単なる自分の未練でしかないのだ。
――。
俯き、拳を握り締める。
次の瞬間。
――ブオン!
物凄い勢いで何かが通り過ぎ、それによって巻き起こされた風が
ラウルの毛並みを激しく靡かせる。
――
――ドッ! ゴロゴロゴロッ……!
もはや止まるほどの余力が足に残っておらず、
崩れるようにして地面を転がるアシュリィ。
そして仰向けになり、置き去りにされていた分の呼吸を大口で行う。
「コヒュッ、ヒューッ。ヒューッ……」
もはや普通の呼吸では足りず、喘鳴している。
身体が止まった途端、全身から汗が吹き出し、熱気が立ち昇る。
獣人、半人は人間のように汗腺を持ち、発汗することで体温を調整する。
「……アシュリィ、なのか……?」
行き先は告げなかった。
町からの距離も、場所が分からなければ
決して近いとは言えないはずだ。
だが、手足を痙攣させ、汗で地面をも湿らせ、
生きるために呼吸を続けるアシュリィが間違いなくここにいる。
「どうして……いや、どうやって……。」
あまりの出来事に事態を受け止めきれず、呆然と立ち尽くすラウル。
そんな中、アシュリィが痙攣する身体を懸命に動かそうとするがままならず、
横になったままラウルの方を向く。
酸欠を起こし、眩暈を発症しているのか、目の焦点が合っていない。
が、その姿勢のまま痙攣する人差し指をピッとラウルに指差し、
「ゼェッ、ハッ……!
ぜっ……たいっ! ダメ……なんっ……だからっ!!
あなた……っ、はっ!
――! ゲホッ、ゲホォッ……!
……リリ……ナっ……ちゃん、とっ! 一緒っ、にぃ……っ!!
……泣い、てたんっ……だから……っ!!
ゴホッ! ヒュッ、ヒュー……!」
意識が朦朧としてきているせいか、言葉がうまく出て来ない。
だが、その感情は鬼気迫るものがあり、彼女自身が感極まってしまい、
涙が溢れ出してくる。
「もどっ……てっ……!
っく……。一緒に……! ひっく。
いて……っ、あげて……っ! よぉ……!!」
流れる涙が頬を伝い、地面を濡らす。
言い終えた彼女は、虚ろになっていく意識に抗えず、
そのまま、気絶する。
嵐のようにやってきて激情をぶつけた彼女を後押しするように、
一陣の追い風がラウルを一歩、前へ踏み出させる。
進んだ先には、
自分の願いを汲み、自分を戒め、そして呼び戻す為に
死力を尽くして走ってくれた恩人が横たわっている。
狼の獣人は
再び俯き、拳を握り締める。
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