病んでる僕は、

蒼紫

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【改訂前】なんて面倒くさい…

変な奴に会った。

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『あと十分でゲーム終了です』

そろそろ終わりか…。
どうせ鬼だし、もう体育館に戻ろうかな。
今から向かえば丁度終わる頃にあっちに着けるだろう。

しかし、今日は本当に疲れた。
一年分の気力と体力を使った気がする。

そんなことを考えながらゆっくり歩いていると突然真上から悲鳴が聞こえた。

「わぁぁあっ!!」
「っ!?」
上を見上げると茶髪のイケメンな男の子が降ってきた。
多分木登りして滑ったんだろう。

取り敢えずすっと一歩下がればどしーんと言ういい音と共にぐえっと言う蟾ヒキガエルの死に際の鳴き声みたいな呻きが響いた。
因みに蟾の死際の鳴き声なんて聞いたことない。

「ひ、蟾の死際の鳴き声みたいな…酷いっ…そしてさり気に一歩避けた…」
あ、生きてた。
あと声に出てた。
「…大丈夫ですか?」
「建前で聞かないで……、もう少し同情を含んだ眼差しを…地球にも人間にも優しくねっ…うっ…後のことは、頼んだ、ぞ…」
そうやって彼は仰向けになって右腕を伸ばしてきたので叩き落とす。
そして冷たい目を向ける。
「…なんか親友が死別するみたいな感動的シーンを意識するの辞めてくれませんか?鬱陶しいです。普通に喋ってくれませんか?」
「…ぷくっ、ぶふっ…ちょっ腰に響く!扱いが雑!酷すぎ!俺イズ怪我人よ!?っうぐぅ…」
さっきまでとは打って変わって元気そうだ。
でも少し顔が青白いし無理をしてるのははっきりと見て取れる。
腰を打ち付けたのか?あれは痛いぞ。昔一回だけ階段から転げ落ちて腰打ち付けた事があった。しばらく動けないレベルで痛かった。

「…。」
「あたしの訴えは無視なのね…その冷ややかな視線は辞めないのねっぐすんっ、あんなに愛し合った仲じゃないのよあたし達…」
「……。」
…このまま放置してもいいけど放置されたとか言いふらされても迷惑だな。それに僕は怪我人を放っておくほど鬼じゃない…と思う。

うーん…あ、そうだ。

「あの、貴方を保健室に連れてく代わりに鉢巻きくれませんか?」
「え?」
「交換条件って奴です。僕は今二つ鉢巻きを持ってますがその二人には願い事などしたくないので貴方の鉢巻きを僕にください」
すると、その子は暫く考える素振りを見せたあと、いいよんと気の抜けた返事をしてゆっくり立ち上がり僕に鉢巻きを渡す。
「ありがとうございます。じゃあ僕の肩に右腕を回してください」
「うぃーっす」
そうして肩に腕を回してもたれかかってくる変な奴。

うーん、重い。
鍛えた方がいいかな?
そんなこんなで時々ずるずる引きずりながら保健室に来た。

「失礼します」
「夜霧?なんかあったか?」
その顔は完全に病弱な若者を見る目だ。
でも僕は至って健康だし、よく見れば隣のやつがボロボロだし分かるだろ。

「やっさん、こっちこっち!」
「あ、お前…何やったんだよ」
どうやら保健医と変な奴は知り合いらしい。
「あっははー!まあまあ、そんな事より!今日は誰も保健室に来てなかったすか?俺の生BLウォッチングは今日は屋外だったんだけど、保健室に避難してた方が良かったっすかね?いつもの特等席にいたら足滑らせて落ちちゃったし…。いやでも今日は告白現場をこのカメラに収めたので満足っす!不良×平凡!サイコーっ!平凡くんはおどおどしつつも結構満更でもなかったっぽいし、不良くんは平凡くんを一途に思ってて可愛いし!あれ?てか、先生が夜霧くんを呼び捨てっ!?ちょっ、スクープスクープ!しかし俺の推しは親衛隊総隊長×夜霧くん…いや、ここは夜霧くん総受け!ホスティーとも色々あったみたいだし…はっ年の差ラブ!BL最高!イェイ!!」

僕はポカンとしてその変な奴を見つめる。
てか、この人一息でめっちゃ早口で言い切ったし。ブレス大事。

大半が早すぎて理解できなかったけど、聞きたい。
「あの、貴方は腐男子って言う奴ですか?」
真顔でそう言うとぶふっと二人が吹き出す。

「真顔で聞くことじゃない!」
二人して腹を抱えて笑っている。
なんとも失礼な奴らだ。

むっとして眉を寄せると慌てたように二人がすまんと謝ってきた。

「…て言うか、送り届けたんで僕は帰りますね」
「あ、待っち待っち。俺は日向 茉莉(ヒュウガマツリ)!気付いてないかもだけど一応同じクラスだよ!」
ばちんっとウインクをする日向くんにゾワッと鳥肌が立って腕をさすると酷いっ、と膝から崩れ落ちよよよ、と泣き真似をする。
それを冷めた目で一瞥すると失礼しました、と保健室の扉を閉めた。

後ろから「スルースキルっ!無視っ!!俺の扱いが酷すぎるっ!!」などと聞こえたが勿論無視した。

てか普通に元気じゃないか。
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