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地下1階 駐車場
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送ってくれなくてもいいと言ったのにどうせ戻る方向一緒だからって、五十嵐と二人並んでスペイン坂を上っている。
一応、周りに社内の人間がいないかキョロキョロしてたら「余計怪しいだろ」って五十嵐に言われた。
確かにそうだった。
「で、おまえは何で木村課長があんなに疲れてるか知らないんだな」
「うん。催事の準備だって他の人はあそこまで疲れてるようには見えないし……」
「……本当に付き合ってなかったんだな」
「え?まだその話?」
てっきりその疑いは晴れたと思っていた。
「なら、駐車場行ってみるか?さっき木村さん、駐車場のことを気にしてただろ」
「うん」
「ま、戻るついでにちょっと巡回してくか」
「そうだね」
Be!渋谷店の地下は駐車場になっている。
south館とnorth館それぞれに駐車場があって、それぞれに店内へ入っていける扉がある。
たけど駐車場は一か所が、south館とnorth館と廊下みたいにつながっているから分かりにくくて、初めて来た人は迷路みたいと思うらしい。
south館には地下にショップと私たちの事務所みたいなものがあるけど、north館にはなくて駐車場だけ。
五十嵐と私はnorth館から入ってsouth館の事務所の方まで歩いてみることにした。
連休初日のお昼時。車の往来もあって、普通の駐車場の光景と何も変わらない。
ちょっと排気ガスの匂いが臭いくらいだ。
「大丈夫?」
五十嵐を見ると眉間にシワを寄せて歩いていた。
「無理しなくてもいいのに、はい」
渡した物はハンカチ。
五十嵐は昔、排気ガスの匂いが大嫌いと言っていた。
「悪い」
珍しく素直に私からハンカチを受け取った五十嵐は、
「ったく、くせーっての」
駐車場に対して悪態をつき始めた。
「はは。私一人でも良かったのに」
苦手なのに無理について付いてきてくれた五十嵐にちょっと感謝した。
「こうやって見ると、駐車場って意外と死角になるとこ多いな」
防犯カメラの位置を確認しながら歩く。
「あの扉ってどこにつながってるの?」
「俺も知らない」
駐車場の片隅にクリーム色の普通の扉がある。
「ここも死角だな」
五十嵐の声にカメラを探したけど、角になっているここを向いているカメラはない。
「開けてみようか?」
今は車が止まっていないけど、ここに大きな車を止めたら誰にも気付かれずにここから店内に入れるかもしれない。
私と五十嵐がその扉に手をかけようとした時、
ジャリっ……
背後で人の気配がした。
五十嵐と同時に振り返ると、柱の陰に影が隠れたのが一瞬見えた。
静かな駐車場。
そいつも私たちも息を殺している。
「誰だ」
五十嵐が呼ぶと、
「俺だ」
そこから出てきたのは、警備の真田部長だった。
「真田部長?こんなところで何してるんですか?」
銀髪、銀縁眼鏡の真田部長がポケットに手を入れたまま近付いてくる。
「おまえ達こそこんなとこで何やってるんだ?って野暮なこと聞いたか?」
ニヤリと笑う真田部長。
「野暮な訳ないじゃないですか。私たちは巡回に……」
「なんで隠れたりするんですか」
私と五十嵐と同時に口を開いた。
真田部長は五十嵐を一瞥すると、
「そりゃおまえ。俺が見てたらできるもんもできねぇだろ」
意味深に笑う。
「だから気配消して近付いたんですか?」
五十嵐のその聞き方が何かを言いたげで、思わずそっちを見た。
「おまえ達こそここで何してる?」
真田部長も目が笑っていない。
どういうこと?
この扉の向こうには何かあるの?
一応、周りに社内の人間がいないかキョロキョロしてたら「余計怪しいだろ」って五十嵐に言われた。
確かにそうだった。
「で、おまえは何で木村課長があんなに疲れてるか知らないんだな」
「うん。催事の準備だって他の人はあそこまで疲れてるようには見えないし……」
「……本当に付き合ってなかったんだな」
「え?まだその話?」
てっきりその疑いは晴れたと思っていた。
「なら、駐車場行ってみるか?さっき木村さん、駐車場のことを気にしてただろ」
「うん」
「ま、戻るついでにちょっと巡回してくか」
「そうだね」
Be!渋谷店の地下は駐車場になっている。
south館とnorth館それぞれに駐車場があって、それぞれに店内へ入っていける扉がある。
たけど駐車場は一か所が、south館とnorth館と廊下みたいにつながっているから分かりにくくて、初めて来た人は迷路みたいと思うらしい。
south館には地下にショップと私たちの事務所みたいなものがあるけど、north館にはなくて駐車場だけ。
五十嵐と私はnorth館から入ってsouth館の事務所の方まで歩いてみることにした。
連休初日のお昼時。車の往来もあって、普通の駐車場の光景と何も変わらない。
ちょっと排気ガスの匂いが臭いくらいだ。
「大丈夫?」
五十嵐を見ると眉間にシワを寄せて歩いていた。
「無理しなくてもいいのに、はい」
渡した物はハンカチ。
五十嵐は昔、排気ガスの匂いが大嫌いと言っていた。
「悪い」
珍しく素直に私からハンカチを受け取った五十嵐は、
「ったく、くせーっての」
駐車場に対して悪態をつき始めた。
「はは。私一人でも良かったのに」
苦手なのに無理について付いてきてくれた五十嵐にちょっと感謝した。
「こうやって見ると、駐車場って意外と死角になるとこ多いな」
防犯カメラの位置を確認しながら歩く。
「あの扉ってどこにつながってるの?」
「俺も知らない」
駐車場の片隅にクリーム色の普通の扉がある。
「ここも死角だな」
五十嵐の声にカメラを探したけど、角になっているここを向いているカメラはない。
「開けてみようか?」
今は車が止まっていないけど、ここに大きな車を止めたら誰にも気付かれずにここから店内に入れるかもしれない。
私と五十嵐がその扉に手をかけようとした時、
ジャリっ……
背後で人の気配がした。
五十嵐と同時に振り返ると、柱の陰に影が隠れたのが一瞬見えた。
静かな駐車場。
そいつも私たちも息を殺している。
「誰だ」
五十嵐が呼ぶと、
「俺だ」
そこから出てきたのは、警備の真田部長だった。
「真田部長?こんなところで何してるんですか?」
銀髪、銀縁眼鏡の真田部長がポケットに手を入れたまま近付いてくる。
「おまえ達こそこんなとこで何やってるんだ?って野暮なこと聞いたか?」
ニヤリと笑う真田部長。
「野暮な訳ないじゃないですか。私たちは巡回に……」
「なんで隠れたりするんですか」
私と五十嵐と同時に口を開いた。
真田部長は五十嵐を一瞥すると、
「そりゃおまえ。俺が見てたらできるもんもできねぇだろ」
意味深に笑う。
「だから気配消して近付いたんですか?」
五十嵐のその聞き方が何かを言いたげで、思わずそっちを見た。
「おまえ達こそここで何してる?」
真田部長も目が笑っていない。
どういうこと?
この扉の向こうには何かあるの?
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