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本編
前編
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「僕、あなたの運命なんです!」
そう言って、僕と幼馴染の行く手を阻んだのは、愛らしい容姿をしたオメガだった。
「俺、運命ってわからないんだよね」
オメガを面倒そうに見下ろしながら、幼馴染が言い放った。
生まれてきてからこのかた、ずっと幼馴染の隣にいる僕はこの光景を幾度となく見てきた。
――幼馴染は運命のフェロモンを感じない。
同大学にいるオメガには周知の事実で、わからないなら同じことだと皆こうして突撃してくるのだ。
「そうだとしても僕は感じるんです! あなたが運命だって! 気付いてもらえないことがどれだけつらいことかあなたにわかりますか!?」
オメガにしては珍しく、その子は食い下がった。
それに対して幼馴染はしばらく考えていたけれど、「一理ある」と納得してしまう。
「じゃあ一度デートしてください!」
随分と強気な子だなと思っていると、幼馴染はいいよと軽く返した。
連絡先を交換して、オメガはとても嬉しそうに微笑む。
幼馴染も満更ではなさそうだった。
「そういうことになった」
幼馴染は僕を振り返ってそう告げた。
二人がデートの日、もちろん僕はひとりで過ごした。
あまりに久しぶりで、ひとりのとき、どうやって時間を潰していたのか悩んでしまうほど手持ち無沙汰だった。
幼馴染とは家が隣同士で、庭を挟んだ向かいが幼馴染の部屋だ。
部屋の電気がついたのは、真夜中になってからだった。
「昨日のデートどうだったの?」
僕が聞くと、幼馴染はにんまりと笑う。
「寂しかったのか?」
「ばっか! 寂しいんじゃなくて、暇だったの!」
「なんだよ、かわいくないなぁ。素直に寂しいって言えばいいのに」
「もう、僕のことはいいから、デートどうだったか教えてよ!」
「悪くなかったよ。次の約束するくらいには」
「次……」
「やっぱり寂しかったんだろー」
「違うって! 今度はいつ? 僕も予定入れるようにしないと」
「来週の土曜」
「ふーん、へぇ、二週連続なんだ」
にやにやし返してやると、幼馴染はちょっと頬を赤らめて拗ねたようにそっぽを向いた。
思った以上の反応に、僕の胸はちくりと痛んだ。
その子が運命じゃないことは幼馴染も間違いなく気づいている。
ちょっと言い返されたから気になっただけで、きっとすぐに元に戻るはず。
僕は不安になりながらも待つことにした。
彼の隣は僕だけのもの。
揺るがないことだと信じていた。
だけど、その子はその場所に入ってきた。
講義の合間にも会いに来ては話しかけて、幼馴染の気を引きたくて仕方ないのだと全身で表している。
そんな姿を見て幼馴染も目を細めて嬉しそうにしている。
すごいなと僕は思ってしまった。
僕が怖くてできなかったことをその子はやってのけている。
きっと運命なんて関係なく努力は心に届くのだ。
「昼はあいつと食べることになったから」
来てしまったと思った。
ひと月も続くと、あの子は幼馴染の恋人だと認識されている。そのぐらい二人は頻繁に一緒にいる。僕はただの幼馴染で友人、今や邪魔者扱いだ。
「じゃあ僕はこの講義で終わりだから先帰るね」
「おう」
二人でいるところを見たくなかった。
僕の知らない笑顔を浮かべる幼馴染を見たくなかった。
その夜、幼馴染から
『付き合うことになった』
とメッセージが届いた。
『おめでとう!よかったね!』
僕は絵文字をたくさんつけて、自分の気持ちが漏れないように必死に隠した。
だって困るよね
いまさら僕が運命だと名乗り出たとしても。
そう言って、僕と幼馴染の行く手を阻んだのは、愛らしい容姿をしたオメガだった。
「俺、運命ってわからないんだよね」
オメガを面倒そうに見下ろしながら、幼馴染が言い放った。
生まれてきてからこのかた、ずっと幼馴染の隣にいる僕はこの光景を幾度となく見てきた。
――幼馴染は運命のフェロモンを感じない。
同大学にいるオメガには周知の事実で、わからないなら同じことだと皆こうして突撃してくるのだ。
「そうだとしても僕は感じるんです! あなたが運命だって! 気付いてもらえないことがどれだけつらいことかあなたにわかりますか!?」
オメガにしては珍しく、その子は食い下がった。
それに対して幼馴染はしばらく考えていたけれど、「一理ある」と納得してしまう。
「じゃあ一度デートしてください!」
随分と強気な子だなと思っていると、幼馴染はいいよと軽く返した。
連絡先を交換して、オメガはとても嬉しそうに微笑む。
幼馴染も満更ではなさそうだった。
「そういうことになった」
幼馴染は僕を振り返ってそう告げた。
二人がデートの日、もちろん僕はひとりで過ごした。
あまりに久しぶりで、ひとりのとき、どうやって時間を潰していたのか悩んでしまうほど手持ち無沙汰だった。
幼馴染とは家が隣同士で、庭を挟んだ向かいが幼馴染の部屋だ。
部屋の電気がついたのは、真夜中になってからだった。
「昨日のデートどうだったの?」
僕が聞くと、幼馴染はにんまりと笑う。
「寂しかったのか?」
「ばっか! 寂しいんじゃなくて、暇だったの!」
「なんだよ、かわいくないなぁ。素直に寂しいって言えばいいのに」
「もう、僕のことはいいから、デートどうだったか教えてよ!」
「悪くなかったよ。次の約束するくらいには」
「次……」
「やっぱり寂しかったんだろー」
「違うって! 今度はいつ? 僕も予定入れるようにしないと」
「来週の土曜」
「ふーん、へぇ、二週連続なんだ」
にやにやし返してやると、幼馴染はちょっと頬を赤らめて拗ねたようにそっぽを向いた。
思った以上の反応に、僕の胸はちくりと痛んだ。
その子が運命じゃないことは幼馴染も間違いなく気づいている。
ちょっと言い返されたから気になっただけで、きっとすぐに元に戻るはず。
僕は不安になりながらも待つことにした。
彼の隣は僕だけのもの。
揺るがないことだと信じていた。
だけど、その子はその場所に入ってきた。
講義の合間にも会いに来ては話しかけて、幼馴染の気を引きたくて仕方ないのだと全身で表している。
そんな姿を見て幼馴染も目を細めて嬉しそうにしている。
すごいなと僕は思ってしまった。
僕が怖くてできなかったことをその子はやってのけている。
きっと運命なんて関係なく努力は心に届くのだ。
「昼はあいつと食べることになったから」
来てしまったと思った。
ひと月も続くと、あの子は幼馴染の恋人だと認識されている。そのぐらい二人は頻繁に一緒にいる。僕はただの幼馴染で友人、今や邪魔者扱いだ。
「じゃあ僕はこの講義で終わりだから先帰るね」
「おう」
二人でいるところを見たくなかった。
僕の知らない笑顔を浮かべる幼馴染を見たくなかった。
その夜、幼馴染から
『付き合うことになった』
とメッセージが届いた。
『おめでとう!よかったね!』
僕は絵文字をたくさんつけて、自分の気持ちが漏れないように必死に隠した。
だって困るよね
いまさら僕が運命だと名乗り出たとしても。
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