『原作者が消えた世界で婚約破棄されましたが、転生者は負ける気しません』

夢窓(ゆめまど)

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第5話:ルート外れの亡命先、そして“白でも黒でもないバラ”

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侯爵家からの書簡は、予想より一枚上手だった。

「追放」
──ただの“王子の元婚約者”を切り捨てるなら、それで十分だったはず。
だが彼らは、“神に選ばれし聖女に盾突いた不敬者”として、家名からの除籍を選んだ。

(なるほどね。ミキの“聖女ルート”を公式にするためには、前任者を完全に消す必要があったってわけ)

手切れ金として渡されたのは、馬車一台ぶんの荷と、
貴族用の名刺から私の名前が雑に削られたもの。

「……徹底してるわね」

さすがに少しだけ、胸が詰まった。

けれど、顔に出すつもりはなかった。

だからその日、私が立ち寄ったのは、
王都郊外の――第二王子の別宅だった。



「おおっと、ようこそ。元・聖女候補で元・王子の婚約者で、元・侯爵令嬢様」

扉を開けたアルフォンスは、サンダルに紅茶缶という出で立ちで出迎えた。
相変わらず緊張感がゼロだ。

「まさか本当に来るとは思わなかったよ。
“親からも追い出されました”って、もうバラチカ外伝編の主人公じゃん」

「失礼ね。私はメインヒロインしかやらない主義なの」

「その意気や良し。部屋、二階の奥空いてるよ。
風呂は夜までに湧くから、晩飯までに片付けとく。
あ、それから猫に餌やる当番、明日からよろしく」

「……猫?」

「いるんだよ。転生前から飼ってた名前つけ損ねた黒猫そっくりなやつが」

言葉の端々に**バラチカ世界に“なかったもの”**が出てくる。
それは、私が記憶しているあのゲームのルートにも、攻略本にも載っていない。

(やっぱり……この世界、少しずつ変わってる)

そして。

その夜。
王都で正式に発表された。

“聖女ミキは唯一無二の神の代弁者”
“彼女に反する者は、異端と見なされる”

まさに、公式ルートの乗っ取りが始まった瞬間だった。

アルフォンスは新聞を丸めて、ポイと火鉢に放る。

「ふーん。ついに来たか、“完全ルートロック”。
このままだと、NPCたちも“彼女が正史”って刷り込まれてくぞ。
マリー嬢、どうする?」

私は紅茶を啜りながら、言ってやった。

「バラチカに“第3王子グレイルルート”って存在してた?
白でも黒でもない、第三の選択肢。
……あなたが、王になる気ないならそこを目指すしかないんじゃない?」

沈黙。

そして、アルフォンスがにやりと笑った。

「マリー嬢。
ボク、本気出すとき、めっちゃ性格悪いよ?」

「構わないわ。私、もう何も守るものないから」
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