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夜の枝豆事件
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夕餉に出されたのは、薄いスープと黒パン、それに少しの葉物サラダだけだった。
質素というより、まるで修道院の食事のようだ。
私は思わず胃のあたりを押さえ、空腹にため息をついた。
「……これでは、とても足りませんわね」
そっと席を立ち、夜、誰もいない台所へ。
そして、例のちょいボロ猫ポーチを開ける。
──枝豆と、冷えたビールのような酒。
常連セット。
「さてと。枝豆ゆがくか」
鍋に水を張り、火にかける。ぐらぐらと沸騰する音。
青々とした枝豆を放り込み、塩をぱらり。
そして一口。
「うまっ……これっ!これっ!」
台所の片隅で、ぐびりとビールをあおぐ。
喉を通る感覚に、思わず背筋がぞくりと震えた。ぐびっ、ぐびっ!はぁーー!
──そして、いつもの癖が出る。
酒を飲むと、歌いたくなってしまうのだ。
「♪~あ~あ~! (※妙にこぶしの効いた演歌調)」
思い切り声を張り上げた、その時。
「……何をしている」
「ひゃあっ!?」
振り返れば、台所の戸口にアドレが立っていた。
いつも通り無表情の鉄仮面で、じっとこちらを見ている。
「ア、アドレ様っ!? にゃ、にゃんでっ!?」
「いて悪いか? ……うちの家だが」
「うひょんっ!!」
枝豆の皿をひっくり返しそうになり、慌てて両手で押さえ込む私。
心臓はばくばく、顔は真っ赤。
──うう……死にたい。
よりによって、婚約者にこんな姿を見られるなんて。
私は耳まで真っ赤になって、あわあわと両手を振った。
「ち、違います! これは、その……お腹が空いて、夜食で……」
「……ふむ」
アドレは一歩台所に入ってくると、迷いなく椅子を引き、腰を下ろした。
その手が伸びる。
皿の上の枝豆を一粒つまみ、口に放り込む。
──むしゃ、
「…………」
無表情のまま噛み、豆を食べる。
「……うまいな」
「へっ!? えっ、あっ……ありがとうございます……?」
私は両手にまだゆがいてない豆を抱えたまま、固まってしまった。
てっきり「はしたない」だの「品がない」だの叱られると思っていたのに、
彼は何事もなかったように、さらに枝豆をつまんでいる。
やがて彼は視線を横に流し、瓶を見つけた。
私が台所の隅に置いた、冷えた酒瓶だ。
アドレは無言でそれを手に取り、栓を軽やかに抜いた。
ぷしゅ、と心地よい音が台所に響く。
そして当たり前のようにコップを二つ探し出し、注ぎ分ける。
「……夜食には、酒がいるだろう」
「っ!? え、えぇえぇっ!? お、お飲みになるんですか!?」
「……飲む。お前もだ」
淡々と告げ、すっと差し出されるコップ。
私は目を白黒させたが、結局受け取ってしまう。
口に含む。
──枝豆に、合う。合いすぎる。
「っ……これっ! これですよね! アドレ様!」
思わず力説してしまい、慌てて口を押さえる私。
彼はというと、鉄仮面のままコップを傾け、一息つくとただ一言。
「……明日もまた」
それだけ言って、椅子から立ち上がり、無表情のまま去っていった。
残された私は――。
「……ひゃぁぁぁああああ!!」
顔を真っ赤にして、台所の床を転げ回ったのだった。
質素というより、まるで修道院の食事のようだ。
私は思わず胃のあたりを押さえ、空腹にため息をついた。
「……これでは、とても足りませんわね」
そっと席を立ち、夜、誰もいない台所へ。
そして、例のちょいボロ猫ポーチを開ける。
──枝豆と、冷えたビールのような酒。
常連セット。
「さてと。枝豆ゆがくか」
鍋に水を張り、火にかける。ぐらぐらと沸騰する音。
青々とした枝豆を放り込み、塩をぱらり。
そして一口。
「うまっ……これっ!これっ!」
台所の片隅で、ぐびりとビールをあおぐ。
喉を通る感覚に、思わず背筋がぞくりと震えた。ぐびっ、ぐびっ!はぁーー!
──そして、いつもの癖が出る。
酒を飲むと、歌いたくなってしまうのだ。
「♪~あ~あ~! (※妙にこぶしの効いた演歌調)」
思い切り声を張り上げた、その時。
「……何をしている」
「ひゃあっ!?」
振り返れば、台所の戸口にアドレが立っていた。
いつも通り無表情の鉄仮面で、じっとこちらを見ている。
「ア、アドレ様っ!? にゃ、にゃんでっ!?」
「いて悪いか? ……うちの家だが」
「うひょんっ!!」
枝豆の皿をひっくり返しそうになり、慌てて両手で押さえ込む私。
心臓はばくばく、顔は真っ赤。
──うう……死にたい。
よりによって、婚約者にこんな姿を見られるなんて。
私は耳まで真っ赤になって、あわあわと両手を振った。
「ち、違います! これは、その……お腹が空いて、夜食で……」
「……ふむ」
アドレは一歩台所に入ってくると、迷いなく椅子を引き、腰を下ろした。
その手が伸びる。
皿の上の枝豆を一粒つまみ、口に放り込む。
──むしゃ、
「…………」
無表情のまま噛み、豆を食べる。
「……うまいな」
「へっ!? えっ、あっ……ありがとうございます……?」
私は両手にまだゆがいてない豆を抱えたまま、固まってしまった。
てっきり「はしたない」だの「品がない」だの叱られると思っていたのに、
彼は何事もなかったように、さらに枝豆をつまんでいる。
やがて彼は視線を横に流し、瓶を見つけた。
私が台所の隅に置いた、冷えた酒瓶だ。
アドレは無言でそれを手に取り、栓を軽やかに抜いた。
ぷしゅ、と心地よい音が台所に響く。
そして当たり前のようにコップを二つ探し出し、注ぎ分ける。
「……夜食には、酒がいるだろう」
「っ!? え、えぇえぇっ!? お、お飲みになるんですか!?」
「……飲む。お前もだ」
淡々と告げ、すっと差し出されるコップ。
私は目を白黒させたが、結局受け取ってしまう。
口に含む。
──枝豆に、合う。合いすぎる。
「っ……これっ! これですよね! アドレ様!」
思わず力説してしまい、慌てて口を押さえる私。
彼はというと、鉄仮面のままコップを傾け、一息つくとただ一言。
「……明日もまた」
それだけ言って、椅子から立ち上がり、無表情のまま去っていった。
残された私は――。
「……ひゃぁぁぁああああ!!」
顔を真っ赤にして、台所の床を転げ回ったのだった。
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