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妹は、真実を知る
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(シレーヌの最期のざまぁ)
結婚式の祝福のざわめきの中で、シレーヌの悲鳴が響いた。
「な、なんで……!? どうしてアドレ様が公爵家を継ぐの!?
だって、私が……私の婚約者が……っ!」
その場にいた誰かが、淡々と口にした。
「……誰か、この娘に教えてやれ」
静寂のあと、執事が一歩前に出て、冷ややかに告げた。
「シレーヌ様。あなたには、そもそも公爵家の相続権はございません。
公爵位は母君の血筋によって継承されるもの。
したがって――正統な娘は、メイベル様おひとりです」
シレーヌの顔が引きつる。
「そ、そんな……! じゃあ、私は……」
別の声が重ねられた。
「加えて。あなたの婚約者、伯爵家の三男坊は――いずれ本家から追い出されるでしょうな。
その時は……ただの平民」
「っ!!?」
会場の空気がざわめきから嘲笑に変わる。
「つまり……シレーヌ様は“平民に嫁ぐ”ということです」
「え、ええええええぇぇぇぇっ!?」
シレーヌは叫び、真っ赤になって足を踏み鳴らす。
「そ、そんなの、いやぁぁぁ! ぐ、ぐぬぬ……っ!」
だが誰も助ける者はおらず、ただ冷たい視線だけが突き刺さっていた。
結婚式が済んでから、
公爵家の執事が、義母と義妹シレーヌの部屋を訪れた。
その後ろには、侍女長も控えている。
「お話がございます。
――メイベル様とアドレ様がご結婚なさいましたので、侍女長と相談のうえ、奥様方には“屋敷の引っ越し”と“部屋の明け渡し”をお願い申し上げます」
⸻
義母は、ぱちりと目を瞬いた。
「あら、なんのことかしら? わたくしに引っ越しなど――」
その言葉を遮るように、扉の奥から現公爵の父が姿を現した。
重々しい声が廊下に響く。
「……おまえたちは、新しい家に移ることになった。
つまりは“引退”だ」
「な、なにをおっしゃいますの!」
⸻
父は顔色ひとつ変えずに続ける。
「公爵家は、メイベルの夫――アドレ殿が継ぐ。
もはやおまえたちに居場所はない。
……出て行く準備をしろ」
義母の顔が真っ青になり、シレーヌは「そんなはずはない!」と叫んだ。
だが執事と侍女長は無言で深く一礼し、すでに決定は覆らないことを告げていた。
新しい体制を整えるにあたり、まず矢面に立たされたのは――公爵家で好き勝手してきた者たちだった。
「これまでの侍女たち、そして料理長も含め……メイベル様をないがしろにし、いじめまで働いたと報告を受けています」
執事が冷ややかに告げる。
当人たちは青ざめて跪いたが、決定は覆らなかった。
「……本日をもって解雇。即刻、屋敷を立ち退け」
次々と出ていく使用人たちの背を、誰も引き留めはしなかった。
⸻
一方で、義母と義妹には別の沙汰が下された。
現公爵が重々しく告げる。
「おまえたちには新しい家を用意した。爵位は――男爵を授かった。」
「な、男爵……!?」
義母が目を剥き、シレーヌは唇を噛みしめた。
栄華を夢見て公爵家に取り入ってきたはずが、待っていたのは格下げの現実。
「準備が整い次第、引っ越しだ。……覚悟しておけ」
⸻
こうして、公爵家は膿を出し切るように体制を刷新し――
メイベルとアドレを中心に、新しい幕を開けようとしていた。
義母と共に“男爵家への引っ越し”を言い渡されたその場で、シレーヌは真っ赤な顔で叫んだ。
「ま、待ってください! わたくしこそ、公爵家にふさわしいのですわ!
あのメイベル姉さまよりも、美しく、華やかで――!」
声を張り上げるが、その場の空気は冷ややかだった。
⸻
執事が冷静に口を挟む。
「ですが、シレーヌ様。あなたには相続権がございません」
「そ、そんな……!」
「加えて、あなたが選んだ婚約者は伯爵家の三男。
彼には家を継ぐ資格はなく、いずれは平民に落ちることとなりましょう」
「な、なにを……!」
⸻
義母が青ざめ、シレーヌは口を開けたまま言葉を失った。
現公爵は低く言い放つ。
「……その程度の理解もなく“公爵夫人”を夢見たか。
おまえたちに、この家に残る資格はない」
⸻
シレーヌは泣きわめいた。
「わたしがっ! わたしが公爵家にふさわしいのにーーっ!」
だが誰も振り返らない。
重い扉が閉じられたとき――その声は、虚しく屋敷の廊下に消えていった。
シレーヌが泣きわめく声を遮るように、現公爵が冷たく告げた。
「……おまえには、お情けで男爵位を与えられた。
男爵家を継ぐことなら、できるだろう」
「な……っ!」
義母が愕然とし、シレーヌは言葉を失う。
⸻
フリードリヒが淡々と続ける。
「なんにせよ、公爵家は――メイベルが継ぐ。
それはすでに決まっていることだ」
きっぱりとした声に、場の空気が凍りついた。
義母もシレーヌも、もはや逆らう言葉を持たない。
⸻
こうして、公爵家の跡継ぎをめぐる争いは幕を閉じ――
“正統な後継”であるメイベルと、彼女を支えるアドレの時代が、静かに始まろうとしていた。
シレーヌと義母に、男爵家への引っ越しが命じられた。
しかし彼女らは最後の足掻きを試みた。
過分な衣装や宝石を箱に詰め、侍女たちに持たせようとしたのだ。
⸻
だが――廊下で待ち構えていた侍女長と執事の前に止められる。
「持ち物検査をいたします」
「な、何の権利があって!」と義母が叫ぶが、すでに公爵印の命令書が下っていた。
⸻
開けられた箱からは、公爵家の宝飾品や金銀食器が次々と現れる。
さらには、侍女が衣の下に隠した宝石まで見つかり、青ざめた。
「……公爵家の財産を持ち出そうとした罪、重いぞ」
フリードリヒの声は低く響いた。
⸻
義母は崩れ落ち、シレーヌは蒼白のまま口を開けて震えるだけ。
侍女の一部はその場で捕らえられ、牢へ送られていった。
⸻
こうして――シレーヌの夢は完全に粉砕された。
彼女に残されたのは、わずかな衣装だけ。
“公爵夫人になる未来”は跡形もなく消え去ったのである。
その頃、メイベルは台所で夕食の仕込みをしていた。
今日のメニューは、温かい野菜スープに、焼きたてのパン、そしてアドレが気に入り始めた唐揚げ。
(……でも、考えてみれば――)
包丁を動かしながら、ふっと呟く。
「お勉強もしなかったんだから、男爵位だって過分よね。
公爵家の基準は“使えるかどうか”。
何もできない人は、爵位を持ってても意味がないのよ」
⸻
窓際のテーブルで帳簿を広げていたアドレが、ちらりと顔を上げる。
「……おまえ、時々えぐいことをさらりと言うな」
「え? そうかしら?」
メイベルは首を傾げながら、唐揚げの鍋に集中する。
その自然体な姿に、アドレは小さくため息をつき――だが口元は、わずかに笑っていた。
窓辺で帳簿を閉じ、ふとメイベルを見やる。
唐揚げを揚げながら「男爵位でも過分よね」とさらりと口にする、その姿は――やはり特別だった。
(……彼女は、とことん公爵家の人間だ)
その血筋の誇りも、家を背負う覚悟も、自然に身についている。
⸻
自分の領地も、災害に苦しんだあの場所も――
今では公爵家の援助と彼女の手腕で、完全に復興を遂げている。
(“使えるかどうか”。
あの家の基準が、俺にも沁みついてきた……)
鉄面皮のまま、水をひと口。
だが胸の奥には、確かに熱いものが広がっていた。
結局、男爵位を授けられた父は、
けれどそれは“中継ぎのご褒美”にすぎない。
爵位だけは与えるが、公爵家の財産を持ち出そうとした件で、家族を守る気はさらさらないらしい。
「……公爵家に泥を塗ったおまえたちを置いておくかどうかは、男爵の裁量だ。
だが――まあ、追い出されることになるだろうな」
フリードリヒが冷ややかにそう告げる。
⸻
義母もシレーヌも顔を青ざめさせる。
父もまた、公爵家にこれ以上迷惑をかけぬよう、妻と連れ子のつながりを断つ道を選んだのだ。
つまり――公爵家に取り入って栄華を夢見た義妹たちは、完全に切り捨てられた。
⸻
(……やっぱり、“使えるかどうか”。
その基準を満たせない人間は、生き残れないのよね)
夕食の唐揚げを皿に盛りながら、メイベルは小さく笑った。
数日後。
公爵家の執事がひそやかに報告を持ち帰ってきた。
「――父上は、義母上とシレーヌ様を修道院へ送られました」
「修道院……?」
メイベルは思わず問い返す。
⸻
「はい。しかも“厳しい戒律”で知られる修道院です。
父上は、これ以上置いておけば公爵家に迷惑をかける、と判断されたようで」
フリードリヒが腕を組み、短く頷く。
「……父上なりに、公爵家の恩義を忘れてはいなかった、ということだな」
⸻
義母とシレーヌは、贅沢を夢見て公爵家に取り入ったはずが――
待っていたのは、華やかさとは真逆の、厳しい修道院での質素な日々。
そして彼女たちは、二度と公爵家に戻ることはなかった。
結婚式の祝福のざわめきの中で、シレーヌの悲鳴が響いた。
「な、なんで……!? どうしてアドレ様が公爵家を継ぐの!?
だって、私が……私の婚約者が……っ!」
その場にいた誰かが、淡々と口にした。
「……誰か、この娘に教えてやれ」
静寂のあと、執事が一歩前に出て、冷ややかに告げた。
「シレーヌ様。あなたには、そもそも公爵家の相続権はございません。
公爵位は母君の血筋によって継承されるもの。
したがって――正統な娘は、メイベル様おひとりです」
シレーヌの顔が引きつる。
「そ、そんな……! じゃあ、私は……」
別の声が重ねられた。
「加えて。あなたの婚約者、伯爵家の三男坊は――いずれ本家から追い出されるでしょうな。
その時は……ただの平民」
「っ!!?」
会場の空気がざわめきから嘲笑に変わる。
「つまり……シレーヌ様は“平民に嫁ぐ”ということです」
「え、ええええええぇぇぇぇっ!?」
シレーヌは叫び、真っ赤になって足を踏み鳴らす。
「そ、そんなの、いやぁぁぁ! ぐ、ぐぬぬ……っ!」
だが誰も助ける者はおらず、ただ冷たい視線だけが突き刺さっていた。
結婚式が済んでから、
公爵家の執事が、義母と義妹シレーヌの部屋を訪れた。
その後ろには、侍女長も控えている。
「お話がございます。
――メイベル様とアドレ様がご結婚なさいましたので、侍女長と相談のうえ、奥様方には“屋敷の引っ越し”と“部屋の明け渡し”をお願い申し上げます」
⸻
義母は、ぱちりと目を瞬いた。
「あら、なんのことかしら? わたくしに引っ越しなど――」
その言葉を遮るように、扉の奥から現公爵の父が姿を現した。
重々しい声が廊下に響く。
「……おまえたちは、新しい家に移ることになった。
つまりは“引退”だ」
「な、なにをおっしゃいますの!」
⸻
父は顔色ひとつ変えずに続ける。
「公爵家は、メイベルの夫――アドレ殿が継ぐ。
もはやおまえたちに居場所はない。
……出て行く準備をしろ」
義母の顔が真っ青になり、シレーヌは「そんなはずはない!」と叫んだ。
だが執事と侍女長は無言で深く一礼し、すでに決定は覆らないことを告げていた。
新しい体制を整えるにあたり、まず矢面に立たされたのは――公爵家で好き勝手してきた者たちだった。
「これまでの侍女たち、そして料理長も含め……メイベル様をないがしろにし、いじめまで働いたと報告を受けています」
執事が冷ややかに告げる。
当人たちは青ざめて跪いたが、決定は覆らなかった。
「……本日をもって解雇。即刻、屋敷を立ち退け」
次々と出ていく使用人たちの背を、誰も引き留めはしなかった。
⸻
一方で、義母と義妹には別の沙汰が下された。
現公爵が重々しく告げる。
「おまえたちには新しい家を用意した。爵位は――男爵を授かった。」
「な、男爵……!?」
義母が目を剥き、シレーヌは唇を噛みしめた。
栄華を夢見て公爵家に取り入ってきたはずが、待っていたのは格下げの現実。
「準備が整い次第、引っ越しだ。……覚悟しておけ」
⸻
こうして、公爵家は膿を出し切るように体制を刷新し――
メイベルとアドレを中心に、新しい幕を開けようとしていた。
義母と共に“男爵家への引っ越し”を言い渡されたその場で、シレーヌは真っ赤な顔で叫んだ。
「ま、待ってください! わたくしこそ、公爵家にふさわしいのですわ!
あのメイベル姉さまよりも、美しく、華やかで――!」
声を張り上げるが、その場の空気は冷ややかだった。
⸻
執事が冷静に口を挟む。
「ですが、シレーヌ様。あなたには相続権がございません」
「そ、そんな……!」
「加えて、あなたが選んだ婚約者は伯爵家の三男。
彼には家を継ぐ資格はなく、いずれは平民に落ちることとなりましょう」
「な、なにを……!」
⸻
義母が青ざめ、シレーヌは口を開けたまま言葉を失った。
現公爵は低く言い放つ。
「……その程度の理解もなく“公爵夫人”を夢見たか。
おまえたちに、この家に残る資格はない」
⸻
シレーヌは泣きわめいた。
「わたしがっ! わたしが公爵家にふさわしいのにーーっ!」
だが誰も振り返らない。
重い扉が閉じられたとき――その声は、虚しく屋敷の廊下に消えていった。
シレーヌが泣きわめく声を遮るように、現公爵が冷たく告げた。
「……おまえには、お情けで男爵位を与えられた。
男爵家を継ぐことなら、できるだろう」
「な……っ!」
義母が愕然とし、シレーヌは言葉を失う。
⸻
フリードリヒが淡々と続ける。
「なんにせよ、公爵家は――メイベルが継ぐ。
それはすでに決まっていることだ」
きっぱりとした声に、場の空気が凍りついた。
義母もシレーヌも、もはや逆らう言葉を持たない。
⸻
こうして、公爵家の跡継ぎをめぐる争いは幕を閉じ――
“正統な後継”であるメイベルと、彼女を支えるアドレの時代が、静かに始まろうとしていた。
シレーヌと義母に、男爵家への引っ越しが命じられた。
しかし彼女らは最後の足掻きを試みた。
過分な衣装や宝石を箱に詰め、侍女たちに持たせようとしたのだ。
⸻
だが――廊下で待ち構えていた侍女長と執事の前に止められる。
「持ち物検査をいたします」
「な、何の権利があって!」と義母が叫ぶが、すでに公爵印の命令書が下っていた。
⸻
開けられた箱からは、公爵家の宝飾品や金銀食器が次々と現れる。
さらには、侍女が衣の下に隠した宝石まで見つかり、青ざめた。
「……公爵家の財産を持ち出そうとした罪、重いぞ」
フリードリヒの声は低く響いた。
⸻
義母は崩れ落ち、シレーヌは蒼白のまま口を開けて震えるだけ。
侍女の一部はその場で捕らえられ、牢へ送られていった。
⸻
こうして――シレーヌの夢は完全に粉砕された。
彼女に残されたのは、わずかな衣装だけ。
“公爵夫人になる未来”は跡形もなく消え去ったのである。
その頃、メイベルは台所で夕食の仕込みをしていた。
今日のメニューは、温かい野菜スープに、焼きたてのパン、そしてアドレが気に入り始めた唐揚げ。
(……でも、考えてみれば――)
包丁を動かしながら、ふっと呟く。
「お勉強もしなかったんだから、男爵位だって過分よね。
公爵家の基準は“使えるかどうか”。
何もできない人は、爵位を持ってても意味がないのよ」
⸻
窓際のテーブルで帳簿を広げていたアドレが、ちらりと顔を上げる。
「……おまえ、時々えぐいことをさらりと言うな」
「え? そうかしら?」
メイベルは首を傾げながら、唐揚げの鍋に集中する。
その自然体な姿に、アドレは小さくため息をつき――だが口元は、わずかに笑っていた。
窓辺で帳簿を閉じ、ふとメイベルを見やる。
唐揚げを揚げながら「男爵位でも過分よね」とさらりと口にする、その姿は――やはり特別だった。
(……彼女は、とことん公爵家の人間だ)
その血筋の誇りも、家を背負う覚悟も、自然に身についている。
⸻
自分の領地も、災害に苦しんだあの場所も――
今では公爵家の援助と彼女の手腕で、完全に復興を遂げている。
(“使えるかどうか”。
あの家の基準が、俺にも沁みついてきた……)
鉄面皮のまま、水をひと口。
だが胸の奥には、確かに熱いものが広がっていた。
結局、男爵位を授けられた父は、
けれどそれは“中継ぎのご褒美”にすぎない。
爵位だけは与えるが、公爵家の財産を持ち出そうとした件で、家族を守る気はさらさらないらしい。
「……公爵家に泥を塗ったおまえたちを置いておくかどうかは、男爵の裁量だ。
だが――まあ、追い出されることになるだろうな」
フリードリヒが冷ややかにそう告げる。
⸻
義母もシレーヌも顔を青ざめさせる。
父もまた、公爵家にこれ以上迷惑をかけぬよう、妻と連れ子のつながりを断つ道を選んだのだ。
つまり――公爵家に取り入って栄華を夢見た義妹たちは、完全に切り捨てられた。
⸻
(……やっぱり、“使えるかどうか”。
その基準を満たせない人間は、生き残れないのよね)
夕食の唐揚げを皿に盛りながら、メイベルは小さく笑った。
数日後。
公爵家の執事がひそやかに報告を持ち帰ってきた。
「――父上は、義母上とシレーヌ様を修道院へ送られました」
「修道院……?」
メイベルは思わず問い返す。
⸻
「はい。しかも“厳しい戒律”で知られる修道院です。
父上は、これ以上置いておけば公爵家に迷惑をかける、と判断されたようで」
フリードリヒが腕を組み、短く頷く。
「……父上なりに、公爵家の恩義を忘れてはいなかった、ということだな」
⸻
義母とシレーヌは、贅沢を夢見て公爵家に取り入ったはずが――
待っていたのは、華やかさとは真逆の、厳しい修道院での質素な日々。
そして彼女たちは、二度と公爵家に戻ることはなかった。
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