義妹に婚約者を譲ったら、貧乏鉄面皮伯爵に溺愛されました。

夢窓(ゆめまど)

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唐揚げは、浮気相手のコードネームでは、ありません。

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ララベルの“唐揚げ”迷走

ララベル(寝室でひとり、ため息)
「……唐揚げ令嬢って、なんなのかしら?」

(思い返す)
殿下は『女遊びじゃない』って言ってた……。
けれど、夜な夜な家を抜け出して……。

「よくない遊び……? それとも、まさか……男の人……?」

(うつむきながら)
「殿下が……両刀……?」

胸を押さえ、涙ぐむララベル。
「……わからない……。私、妻なのに……」



ララベル、動く

ララベル(机に向かい、決意をこめて)
「もう、考えても答えは出ないわ……。なら、調べるしかないのよ」

侍女たちに向かい、声を低くする。
「殿下が夜に通っている場所……必ず突き止めなさい。
そして“唐揚げ令嬢”とやらの正体を……!」

侍女(ざわっ)
「唐揚げ……令嬢……? は、はいっ!」



その夜。

エヴァンズ公爵夫妻がふらりと居酒屋に出向く。

陰からこっそり覗き込むララベル付きの侍女たち。
「……いたっ! あれが“唐揚げ令嬢”……!」

――厨房から、笑顔で唐揚げを揚げて運んでくる、バイトの少年・ハクがお仕事でテーブルを回っている。

侍女たち(小声で大混乱)
「え……女じゃなくて……男……?」
「ええええええええっ!? 唐揚げ令嬢……男性!?」


居酒屋の夜

大将が笑顔で唐揚げを揚げている横で、注文を取りにきたハクくん。
頬に少し油の香りがついて、照れくさそうに笑っている。

メイベル(にっこり)
「ハクくん、いつもかわいいねぇ」

ハク(耳まで真っ赤になりながら)
「か、かわいいとか言わないでくださいよぉ……! 俺、一応、男なんですからっ」

メイベル(ひょいと覗き込み)
「でもほんとにかわいいもの。……あ、そうだ。恋人できたって、聞いたよ?」

ハク(どきっ)
「え、だ、誰からそれ……!? あの、それは……」

 彼は慌てて人差し指を口元にあてる。

ハク(小声で)
「……まだ、内緒なんです。しーっ」

メイベル(目を丸くして、うんうんと頷く)
「そっかぁ、内緒かぁ……! えへへ、応援してるよ」

ハク(恥ずかしそうに微笑んで)
「ありがとうございます。……メイベルさんも、めっちゃ幸せそうですよ」

メイベル(顔が一気に赤くなる)
「え、えええ!? わ、私!?」

アドレ(横から低い声で)
「……あまり馴れ馴れしくするな、ハク」

ハク(あわあわ)
「ひ、ひぃっ! ごめんなさいアドレさん!」


誤解の報告の場

ララベルは顔を伏せ、白い指をぎゅっと組みながら殿下に向かう。
隣にはアドレとメイベル夫妻も控えていた。

ララベル(涙をにじませながら)
「殿下……わたくし……愛人のこと、聞きました……」

アルバート殿下(目をぱちくり)
「……は?」

ララベル(すすり泣きながら)
「相手が……男の方だとは思わず、失礼いたしました……。ですが、子供ができない愛人でも……わたくし、受け入れます……」

アルバート殿下(椅子からずり落ちそうになる)
「なっ……!?」

メイベル(あわあわ)
「え、えっ!? あ、愛人って!? ど、どなたのことですか!?」

ララベル(涙をこぼしながら)
「居酒屋で働いている……ハクという美少年ですわ。侍女が調べました……」

アドレ(低い声で、しかし真顔)
「……ハクか。……あれは、美少年だな」

アルバート殿下(机を叩き立ち上がる)
「ちょ、ちょっと待て!! 俺とハクはそんな関係じゃない!!」

ララベル(震える声で)
「……でも……殿下は毎週のように居酒屋とかに……。唐揚げを口実に、あの方と……」

メイベル(小声で)
「いやいやいやいや! ただ唐揚げ食べに行ってるだけですからぁ!」

アドレ(鉄面皮で)
「殿下、疑われる行動をお控えください。新婚の妻を泣かせるなんて最低です。」

アルバート殿下(真っ赤になって頭を抱える)
「お、俺の名誉が……! 唐揚げが悪いんだ、唐揚げが!」


お弁当で証明

空気が張りつめたまま、ララベルが震える声で繰り返す。

ララベル
「……唐揚げの……寵愛なのですわね……」

アルバート殿下
「ち、違う! 唐揚げはただの食い物だ!!」

(言えば言うほど泥沼)

その瞬間、アドレがすっと立ち上がり、鉄面皮のままポーチを開いた。
取り出したのは、彩り豊かな夜食用のお弁当箱。

アドレ
「証明しましょう!これが“唐揚げ”です。」

(蓋を開ければ、黄金色の唐揚げ、ふわふわ卵焼き、きれいに詰められたサラダやハムのハート)

アドレ
「殿下が夜ごと求めているのは、愛人ではない。……これだ」

ざわつく一同。
アドレはさらに容赦なくララベルの前に弁当を差し出した。

アドレ
「妃殿下。……口を開けてください。」箸で唐揚げをつまんで

ララベル(目を丸くして)
「えっ……わ、わたくしが……?」

アドレ(微動だにせず)
「……“あーん”だ」

ララベル(頬を真っ赤にして)
「あ、あーん……」

ぱくっ。

ララベル(目を潤ませて)
「……お、おいしい……。からっと揚がって……しあわせの味……」

アルバート殿下(机をバン!)
「そうだ、それだ!! 俺が愛してるのはメイベルの唐揚げなんだ!! ハクじゃないっ!!」

会場「………………」

侍女たち(小声)
「……唐揚げに嫉妬して泣いてたなんて……妃殿下、かわいすぎる」
「……殿下は殿下で、唐揚げに負けてるし……」


提案:唐揚げデリバリー制度

アドレ(鉄面皮のまま)
「殿下。新婚家庭を夜な夜な訪れるのは、夫婦仲にひびを入れる。……それはご理解いただけるな?」

アルバート殿下(ばつの悪そうな顔)
「う……だが、唐揚げが……」

アドレ
「ならば簡単だ。――デリバリーを導入する」

一同「……デリバリー?」

アドレ
「殿下がどうしても唐揚げを所望されるなら、我が家の厨房で調理した弁当を、決まった曜日に王宮へ届ける。侍女殿の分も含めてだ」

ララベル(ぱちくりと目を瞬かせて)
「……わ、わたくしの……分も?」

アドレ
「もちろんだ。妃殿下も召し上がればよろしい。夫婦で同じ食事を囲むことが、最も健全だ」

ララベル(胸を押さえて、涙目で微笑む)
「……ありがとうございます……! 唐揚げを、私と一緒に……」

アルバート殿下(小声で)
「……デリバリー……ありなのか……」

侍女たち(小声で)
「奥方様、やっぱりすごい……唐揚げで国の秩序が保たれた……」

唐揚げデリバリー、正式決定

メイベル(満面の笑顔で)
「じゃあ、デリバリー喜んで~! 殿下のお弁当は特盛りにしてあげますね!」

アルバート殿下(身を乗り出して)
「本当か!? 唐揚げ大盛り! ああ、楽しみだ!」

ララベル(少し安心して微笑む)
「……殿下と一緒に唐揚げを食べられるなんて……幸せですわ」

アドレ(鉄面皮で)
「……これでようやく、新婚の食卓が守られる。……奥さん」

メイベル(ぽかんとして)
「えっ? あっ……はいっ!」
(耳まで真っ赤になってもじもじ)

――その様子を廊下の陰から見ていた影たち。

影A
「……アドレさんも、メイベルさんも新婚だったのに殿下入り浸りだったからな。……」

影B
「いや、“喜んで~”じゃないんだよ……軽すぎるんだよ……」

影C
「……でも、デリバリーはありがたい……俺達の分も……いや、なんでもない」

唐揚げデリバリー初回 ― 王宮にて

王宮の庭園に、特設のテーブルが用意された。
メイベルがにこにこしながら大きな包みを抱えて登場する。

メイベル
「お待たせしました~! 唐揚げ弁当、デリバリーでーす!」

アルバート殿下(子供みたいに身を乗り出して)
「待っていたぞ! さあ早く!」

ララベル(お淑やかに微笑んで)
「……まあ、すごくいい匂い……。これが噂の“悪魔の唐揚げ”なのですね」

メイベルが包みを開けると、湯気とともに香ばしい匂いが広がり、侍女たちまでごくりと喉を鳴らす。

アドレ(冷静に)
「奥さん、テーブルに並べてくれ」

メイベル
「はーい! 唐揚げ大盛り、だし巻き卵、ポテトサラダ、漬物、ビール……はい、殿下の分!」

殿下(目を輝かせて)
「おおっ……! この瞬間を待っていた!」

――ガブッ。

殿下(恍惚の表情)
「……やはり……唐揚げこそ……人生の至宝だ……っ!」

ララベル(おそるおそる一口)
「……っ……! な、なんですの、これ……っ!?
 外はカリッと、中はじゅわぁ……! もう一つ……あと一つ……!」

侍女たち(ざわざわ)
「奥方様、唐揚げ……どうしてこんなに……」
「わたしたちの分も……いえ、なんでもありませんっ!」

アドレ(腕を組んで)
「……唐揚げで、王宮まで掌握するとはな。さすが俺の妻だ」

メイベル(照れ笑いで)
「えへへ……ただの居酒屋メニューなんですけどねぇ」





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