『白い結婚のはずでしたが、夫の“愛”が黒い。 限界突破はお手柔らかに!』

夢窓(ゆめまど)

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結婚式どうですか?

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外務大臣夫人たち、押し寄せる


王宮の控え室。
仕事の合間、タイロンが書類を確認していると——

「まぁ!」「ちょうどいいところに!」「侯爵様!」

一斉に声をかけられた。

振り向くと、
外務大臣夫人アレグラを先頭に、
名だたる貴婦人たちがにこやかに、しかし逃げ場なく囲んでいる。

アレグラ夫人
「ねえタイロン様。
あなたとジュディ様、とてもお似合いですわね」

別の奥様
「ええ、本当に。
あれで結婚式がまだだなんて、王宮の七不思議ですわ」

タイロンは一瞬だけ言葉を探し、
だが正直に頭を下げた。

タイロン
「奥様方……ありがとうございます。
実は、今まさに悩んでいたところなのです」

「まぁ!」と声が弾む。

アレグラ夫人
「それなら、なおさらですわ!」

彼女は一歩前に出て、ぱっと手を打った。

アレグラ夫人
「私の知り合いですけど、
とても素敵なウエディングセンターがあるの。
ご存じ?」

周囲の奥様たちが、ざわっとする。

奥様A
「まさか……あそこ?」

奥様B
「森の中の……?」

アレグラ夫人は、にっこり。

アレグラ夫人
「ええ。
森の中のドラマティック・ウエディングセンターですわ」

「まああああ!」
「すごい!」
「予約が全然取れないところじゃない!」

一気に熱量が上がる。

アレグラ夫人
「あそこなら、
——拒む女子はいませんわよ?」

タイロンは、ほんの一瞬だけ思考を止めた。

(……確かに、
ジュディが拒む姿が、まったく想像できない……)

そして、静かに、しかしはっきり言った。

タイロン
「奥様……
いえ、お姉様。
その話、お願いできますでしょうか?」

一瞬の沈黙。

次の瞬間——

アレグラ夫人
「あら!」

目を細め、楽しそうに笑う。

アレグラ夫人
「“お姉様”なんて言われたら……
ええ、頑張らなくてはね。ほほほ……」

周囲の奥様たちが拍手。

「決まりですわね!」
「もう逃げられませんわよ、侯爵様!」
「いえ、これは祝福ですもの!」

タイロンは、腹を括ったように微笑んだ。

(……外堀が、完全に埋まったな)

その頃——
何も知らないジュディは、
自室で静かに書類を整理していた。

まさか、
“拒む女子はいない結婚場所”が予約されようとしている
とも知らずに。



ウエディングセンター下見
――ジュディ、理性崩壊

森の奥へと続く石畳。
木々の間を抜けた先に、その場所はあった。

静かな湖、
風に揺れる白い花、
差し込む光が、まるで祝福そのもののように降り注ぐ。

ジュディ
「……」

言葉が、出なかった。

アレグラ夫人
「いかがかしら?
ここ、“誓いの庭”と呼ばれているのよ」

ジュディは、ゆっくりと周囲を見回す。

(なに、ここ……
きれい……
静かで……
呼吸するだけで、胸がいっぱいになる……)

中央には、小さな祭壇。
白い布と花で飾られ、
その奥には、森と空がひとつに溶ける景色。

アレグラ夫人
「ここで式を挙げる方、
皆さん同じことをおっしゃるの」

ジュディ
「……なんて?」

アレグラ夫人
「“ここで式を考えた人、天才だ”って」

ジュディは、思わず小さく息を吸った。

ジュディ
「……ここ、美しい……」

自分でも驚くほど、素直な声だった。

ジュディ
「……ここで式とか……
考えた人、ほんと……
素敵すぎる……」

隣で黙っていたタイロンが、
その横顔を、じっと見つめている。

(……まずいな)

ジュディの瞳が、完全に“落ちている”。

アレグラ夫人は、満足そうに微笑んだ。

アレグラ夫人
「でしょう?
外務大臣の仕事柄、色々見てきましたけれど……
ここは特別ですわ」

周囲の奥様たちも頷く。

奥様A
「ええ、拒めませんわね」

奥様B
「白いドレスが、森に映えるのよ」

白いドレス。

その言葉が、ジュディの頭に落ちる。

(……白い……ドレス……
私が……?ここで……?)

想像してしまった瞬間、
胸が、きゅっと苦しくなる。

ジュディは、慌てて首を振った。

ジュディ
「ち、違うのよ!
あくまで下見で……白い結婚だし……!」

しかし、
その声はもう弱い。

アレグラ夫人が、やさしく腕を取った。

アレグラ夫人
「ええ、ええ。下見ですわ。
でもね、ジュディ」

ジュディ
「……?」

アレグラ夫人
「“本気じゃない人”は、
こんな顔をしないのよ」

ジュディ、完全に言葉を失う。

視線を逸らそうとして、
無意識に——タイロンを見る。

タイロンは、穏やかに、しかし真剣に言った。

タイロン
「……奥様が、
ここを“美しい”と思ってくださるなら……
私は、それで十分です」

ジュディの理性、完全に崩壊。

言い返せない。
否定できない。
ただ——

ジュディ
「……」

こく、こく。

小さく、何度も頷くしかなかった。

アレグラ夫人(満足げ)
「ふふ……決まりですわね」

森の中で、
“白い結婚”のはずだった二人の未来が、
静かに、しかし確実に色づき始めていた。

ウエディングセンターの“申し込み”
――断れない結婚、本気の結婚確定

森の奥、誓いの庭の奥にある白い館。
そこが、ウエディングセンターの受付だった。

柔らかな光。
壁には、過去にここで式を挙げた夫婦の名が、
金色の文字で刻まれている。

受付係(にこやか)
「それでは——
ドレス、装花、誓いの進行、すべてセンターお任せで、よろしいですね?」

ジュディ
「え……? ちょ、ちょっと待って——」

アレグラ夫人が、すっと一歩前に出る。

アレグラ夫人
「ええ、それで結構ですわ。
ここは“任せた方が美しい”の」

周囲の奥様たちも、当然のように頷く。

奥様A
「口出しすると、逆に後悔しますのよ」

奥様B
「ここは“本当の愛の祝福を受け取る場所”ですもの」

受付係が、羽根のように軽いペンを差し出す。

受付係
「では、ご署名を。
——申し込み後のキャンセルは、できません」

ジュディ
「…………」

タイロン
「……それは?」

受付係
「妖精の祝福が付与されますので」

ジュディ
「……は?」

受付係
「嘘の祝福は“誓いを結ぶ意思”に反応します。
一度結ばれた縁は、拒めません」

静寂。

ジュディの理性が、音を立てて崩れる。

(キャンセル不可……
妖精の祝福……
なにそれ……
怖……いや……美し……)

タイロンは、ジュディを一度だけ見た。

タイロン
「……奥様。
無理なら、今ここで——」

ジュディは、ぎゅっと唇を噛みしめてから言った。

ジュディ
「……いいわ。
私とあなたのためだもの」

その瞬間、
空気が——きらり、と揺れた。

どこからともなく、
鈴のような音が響く。

受付係(微笑)
「祝福、確認いたしました」

もう、逃げ道はない。

ブライスメード、即決定

受付係
「なお——
本式では、ブライスメードが必要になります」

ジュディ
「……ブライス……?」

アレグラ夫人
「花を持って、新婦の隣を歩く役ですわ」

その瞬間。

カレン
「わたし、やる!」

全員が振り向く。

カレンは胸を張って、満面の笑み。

カレン
「じゅでぃの、となり、あるくの!」

受付係
「……適合、完璧です」

ジュディ
「え、え、ちょっと——」

アレグラ夫人
「決まりね。
可愛すぎて反則ですもの」

カレン、誇らしげ。

カレン
「わたし、ぶらいすめーど!」

ジュディ
「……(心臓が持たない)」
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