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定年が来たから、神殿出ます。
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聖女の定年は、二十五歳。
明日、私は二十五歳になる。
つまり、定年だ。
このまま教会に残れば、事務係や礼拝の補助くらいは任される。
けれど、それは“聖女”ではない。
神に仕える巫女から、ただの使用人へ。
選ぶのは私だ。
残るのか、それとも去るのか。
そして……去った先に、私を待つものはあるのだろうか。
「定年を迎えた聖女には、これだけの金額が支給されます」
神官が差し出した封筒を受け取り、私は中をのぞきこんだ。
(……わお。前世の感覚でいえば、新卒四年目で辞めたときの退職金くらい?)
「普通なら、そのまま神殿に残られる方が多いです。休日には買い物や、カフェに行くこともできますし……」
「お見合いなども、ご紹介できますよ。ジェシカ様ほどの方なら」
にこやかに告げられた“安定ルート”。
だけど私の心の声は違った。
(……いやいや。やっと外に出られるチャンスじゃない。転生者としての知識もある。今こそ、この世界で本気で生きてみるときだ)
「ありがとうございます。でも、私――外に出てみます」
その場の空気が、一瞬止まった。
皆が目を丸くする。
「……えっ」
私の言葉に、神官たちは一瞬固まった。
「……えっ? 聖女様が、神殿をお出になるんですか?」
その視線に、私は笑ってみせた。
(だって、もう“期限切れ”なんでしょう? なら、私の人生は私のものよ)
ーーーーーーー
神殿を出ると決めた私は、まずは、街へ向かった。
目的は――冒険者らしい服を買うこと。
でも……冒険者の服って、そもそもどんなの?
神殿での白い法衣しか知らない私には、正直見当がつかなかった。
◾️服屋にて
街角の仕立て屋に足を踏み入れると、色とりどりの布と服が所狭しと並んでいた。
軽そうな革鎧、派手なマント、無骨なズボン……見ているだけで目が回る。
「うーん……どれが“冒険者っぽい”んだろう」
私は腕を組んで唸っていた。
そのとき、隣から澄んだ声がした。
「お姉さん、この服かわいいよ」
振り返ると、まだ年端もいかない少年が服を抱えて立っていた。
ブロンドの髪に大きな瞳――その子はヨシュアだった。
彼が指差したのは、ベージュ地に赤の縁取りが入った上着。
⸻
ヨシュアのセンス
「……むぅー。悔しいけど、私よりセンスある……!」
私が手に取っていた地味な黒っぽい上着と比べると、雲泥の差だった。
ヨシュアはさらに棚からズボンと靴、マントを取り出してきた。
「これと合わせたら、もっと似合うと思う」
「えっ……」
鏡に当ててみると、確かに冒険者らしい軽快さが出ていた。
神殿の白衣姿しか知らない自分が、少し変わった気がして胸が高鳴る。
「なんなのこの子……。完全に私より上手じゃない」
ヨシュアはにこっと笑いながら、きらきらした目でこちらを見ていた。
試着
「じゃあ……着てみて決めるわ」
私はヨシュアから受け取った服を抱えて、更衣室に入った。
神殿の白い法衣を脱ぎ、新しい布を身にまとう。
ベージュの上着は思ったより軽く、動きやすい。
ズボンもぴたりと収まり、裾から覗くブーツは歩きやすそう。
マントを肩にかけると……。
――鏡に映った自分が、見慣れない誰かみたいだった。
⸻
初めての姿
更衣室のカーテンを少し開ける。
「ど、どう?」
外で待っていたヨシュアがぱっと顔を輝かせた。
「すごい! 冒険者のお姉さんって感じ!」
私は思わず頬を赤らめてしまった。
今まで聖女として白衣ばかりだったから、こんな風に褒められるのは妙にくすぐったい。
「……うん。たしかに、こっちの方がいいわね」
手にしていた黒っぽい上着を見下ろす。
もう比較にならない。
ヨシュアは得意げに胸を張った。
「でしょ! 僕、見る目あるんだよ」
「はいはい……でも、ほんとありがとう」
私は小さく笑い返した。
ヨシュアの番
「さて……私ばっかり決められても不公平よね」
私は腕を組んで、ヨシュアを見下ろした。
「え? 僕?」
少年は目を丸くする。
「当然でしょ。あなたも冒険者になるんだから。服は大事よ」
店員がすかさず横から布束を持ってきた。
「お坊ちゃんには、こちらのチュニックとマントなどいかがでしょう」
ヨシュアは慌てて手を振った。
「ぼ、僕なんて、どれでも……!」
「ダメ。ちゃんと選ぶ!」
私はさっきの仕返しとばかりに、ずらりと並んだ服を吟味した。
⸻
選んだ服
結局、私が選んだのは落ち着いた紺のチュニックに、焦げ茶のズボン。
そこに短めのマントを合わせて――。
「よし、着てきなさい」
「えぇぇ……」
しぶしぶ更衣室に入ったヨシュア。
少しして出てきた姿に、私は思わず声を上げた。
「……おぉー! 似合ってる!」
紺色が彼の髪と瞳を引き立てて、まるで小さな王子様みたいだ。
ヨシュアは耳まで赤くして、視線を逸らした。
「べ、別に……普通でしょ」
⸻
二人で
鏡に並んで立つと、私もヨシュアも、確かに“冒険者っぽい”雰囲気になっていた。
思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ、なんだかペアみたいね」
ヨシュアは一瞬固まってから、真っ赤になって小声で返した。
「……そう見えるなら……いいけど」
私は軽く肩を叩いた。
「よし、これで決まり! 今日から私たち、冒険者コンビよ!」
明日、私は二十五歳になる。
つまり、定年だ。
このまま教会に残れば、事務係や礼拝の補助くらいは任される。
けれど、それは“聖女”ではない。
神に仕える巫女から、ただの使用人へ。
選ぶのは私だ。
残るのか、それとも去るのか。
そして……去った先に、私を待つものはあるのだろうか。
「定年を迎えた聖女には、これだけの金額が支給されます」
神官が差し出した封筒を受け取り、私は中をのぞきこんだ。
(……わお。前世の感覚でいえば、新卒四年目で辞めたときの退職金くらい?)
「普通なら、そのまま神殿に残られる方が多いです。休日には買い物や、カフェに行くこともできますし……」
「お見合いなども、ご紹介できますよ。ジェシカ様ほどの方なら」
にこやかに告げられた“安定ルート”。
だけど私の心の声は違った。
(……いやいや。やっと外に出られるチャンスじゃない。転生者としての知識もある。今こそ、この世界で本気で生きてみるときだ)
「ありがとうございます。でも、私――外に出てみます」
その場の空気が、一瞬止まった。
皆が目を丸くする。
「……えっ」
私の言葉に、神官たちは一瞬固まった。
「……えっ? 聖女様が、神殿をお出になるんですか?」
その視線に、私は笑ってみせた。
(だって、もう“期限切れ”なんでしょう? なら、私の人生は私のものよ)
ーーーーーーー
神殿を出ると決めた私は、まずは、街へ向かった。
目的は――冒険者らしい服を買うこと。
でも……冒険者の服って、そもそもどんなの?
神殿での白い法衣しか知らない私には、正直見当がつかなかった。
◾️服屋にて
街角の仕立て屋に足を踏み入れると、色とりどりの布と服が所狭しと並んでいた。
軽そうな革鎧、派手なマント、無骨なズボン……見ているだけで目が回る。
「うーん……どれが“冒険者っぽい”んだろう」
私は腕を組んで唸っていた。
そのとき、隣から澄んだ声がした。
「お姉さん、この服かわいいよ」
振り返ると、まだ年端もいかない少年が服を抱えて立っていた。
ブロンドの髪に大きな瞳――その子はヨシュアだった。
彼が指差したのは、ベージュ地に赤の縁取りが入った上着。
⸻
ヨシュアのセンス
「……むぅー。悔しいけど、私よりセンスある……!」
私が手に取っていた地味な黒っぽい上着と比べると、雲泥の差だった。
ヨシュアはさらに棚からズボンと靴、マントを取り出してきた。
「これと合わせたら、もっと似合うと思う」
「えっ……」
鏡に当ててみると、確かに冒険者らしい軽快さが出ていた。
神殿の白衣姿しか知らない自分が、少し変わった気がして胸が高鳴る。
「なんなのこの子……。完全に私より上手じゃない」
ヨシュアはにこっと笑いながら、きらきらした目でこちらを見ていた。
試着
「じゃあ……着てみて決めるわ」
私はヨシュアから受け取った服を抱えて、更衣室に入った。
神殿の白い法衣を脱ぎ、新しい布を身にまとう。
ベージュの上着は思ったより軽く、動きやすい。
ズボンもぴたりと収まり、裾から覗くブーツは歩きやすそう。
マントを肩にかけると……。
――鏡に映った自分が、見慣れない誰かみたいだった。
⸻
初めての姿
更衣室のカーテンを少し開ける。
「ど、どう?」
外で待っていたヨシュアがぱっと顔を輝かせた。
「すごい! 冒険者のお姉さんって感じ!」
私は思わず頬を赤らめてしまった。
今まで聖女として白衣ばかりだったから、こんな風に褒められるのは妙にくすぐったい。
「……うん。たしかに、こっちの方がいいわね」
手にしていた黒っぽい上着を見下ろす。
もう比較にならない。
ヨシュアは得意げに胸を張った。
「でしょ! 僕、見る目あるんだよ」
「はいはい……でも、ほんとありがとう」
私は小さく笑い返した。
ヨシュアの番
「さて……私ばっかり決められても不公平よね」
私は腕を組んで、ヨシュアを見下ろした。
「え? 僕?」
少年は目を丸くする。
「当然でしょ。あなたも冒険者になるんだから。服は大事よ」
店員がすかさず横から布束を持ってきた。
「お坊ちゃんには、こちらのチュニックとマントなどいかがでしょう」
ヨシュアは慌てて手を振った。
「ぼ、僕なんて、どれでも……!」
「ダメ。ちゃんと選ぶ!」
私はさっきの仕返しとばかりに、ずらりと並んだ服を吟味した。
⸻
選んだ服
結局、私が選んだのは落ち着いた紺のチュニックに、焦げ茶のズボン。
そこに短めのマントを合わせて――。
「よし、着てきなさい」
「えぇぇ……」
しぶしぶ更衣室に入ったヨシュア。
少しして出てきた姿に、私は思わず声を上げた。
「……おぉー! 似合ってる!」
紺色が彼の髪と瞳を引き立てて、まるで小さな王子様みたいだ。
ヨシュアは耳まで赤くして、視線を逸らした。
「べ、別に……普通でしょ」
⸻
二人で
鏡に並んで立つと、私もヨシュアも、確かに“冒険者っぽい”雰囲気になっていた。
思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ、なんだかペアみたいね」
ヨシュアは一瞬固まってから、真っ赤になって小声で返した。
「……そう見えるなら……いいけど」
私は軽く肩を叩いた。
「よし、これで決まり! 今日から私たち、冒険者コンビよ!」
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