『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)

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寄せ集めのパーティーメンバー

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街へ

新しい服に身を包んで外へ出ると、街の空気まで違って感じた。
白い法衣に包まれていたときは「聖女様」と頭を下げられてばかりだったけれど――
今はただの“冒険者志望”の一人にすぎない。

通りの人混みに紛れて歩くのは、不思議な自由さがあった。

ヨシュアが横で笑う。

「お姉さん、すごく馴染んでるよ」

「そ、そう?」
少し胸が弾む。
でも同時に、初めての挑戦に足がすくむ気持ちもあった。



冒険者ギルドの建物

石畳を進んでいくと、大きな建物が見えてきた。
扉の上には大きな紋章――剣と盾が交差した意匠。

中からは酒場のようなざわめきと笑い声、時折どんと机を叩く音が響いている。

「ここが……冒険者ギルド」
思わず息をのむ。

ヨシュアが無邪気に前へ進んだ。

「行こう! 僕たちの冒険、ここから始まるんだ!」

私は小さく笑い、うなずいた。



扉を開けて

ギルドの扉を押し開けた瞬間、むわっとした熱気と視線が一斉にこちらに向いた。
鎧を着込んだ戦士、ローブ姿の魔術師、やけに陽気な盗賊風の人たち……。
まるで別世界だ。

そして誰かがひそひそと囁いた。

「……女か? それも子ども連れ?」

「むっ……!」
思わず顔をしかめる。

けれどヨシュアがすっと前に出て、にこっと笑った。

「お姉さんはすごいんだよ。すぐに見せてあげる!」

私は思わず噴き出しそうになりながら、背筋を伸ばした。

――さて、“冒険者ジェシカ”の出番ね。

冒険者登録

カウンターに近づくと、角の眼鏡をかけた事務員のお姉さんが顔を上げた。

「はい、登録の方ですね? お名前と年齢をどうぞ」

「ジェシカ。二十五歳です」
そう答えた瞬間――周りの冒険者たちが「お?」とざわついた。

(あ……“定年”って年齢だと思われてるな、これ……!)

お姉さんはにこやかに書き留める。

「はい、聖女様……いえ、冒険者ジェシカさんですね」

「そ、そうそう。ただの冒険者で」



ヨシュアの番

「次は君ね」
「ヨシュア。十五歳です」

すると、またもやざわめきが。

「おい、ガキじゃねぇか」
「弟連れてきてどうすんだ」

私は思わず机を叩いた。
「ガキじゃない! ちゃんと戦えるんだから!」

ヨシュアが慌てて私の袖を引っ張る。
「お姉さん、声大きい……!」



登録試験

事務員のお姉さんが咳払いをして言った。

「では、お二人には簡単な実技をしていただきます。
魔力の測定と、武器の扱いを確認させてください」

「出た、試験……!」
私は内心で頭を抱えた。

白衣時代は戦うどころか説教ばかりだったのに、今度は私自身が試される。
(……いや、やるしかないでしょ!)

ヨシュアはわくわくした様子で拳を握っていた。

「お姉さん、僕が先にやるね!」



ざわめくギルド

私たちの番を待つ間、ギルド内は好奇と嘲笑の入り混じった視線でいっぱいだった。

「女の聖女とガキのコンビかよ」
「すぐ逃げ帰るに決まってる」

私は深呼吸して胸を張る。
「……見てなさい。冒険者ジェシカの実力、証明してやるから」

ヨシュアの試技

最初に出されたのは、魔力測定用の水晶玉だった。
ヨシュアが手をかざすと――

ぱあぁぁっと、青白い光が水晶の奥から溢れ出した。

「……!」
事務員のお姉さんが目を見開く。

「こ、これは……! 平均をはるかに超える魔力量です!」

ギルドのざわめきが一変する。
「なんだあのガキ……」「魔術師系の逸材か?」

ヨシュアは少し得意げに笑った。

「ね? お姉さん、僕やれるでしょ」

私は思わず拍手した。
「すごい! よくやったわね!」



ジェシカの番

次は私。
同じように水晶玉に手を当てる。

……が、何も起こらない。

「えっ……?」
周りからくすくす笑いが漏れる。

(ちょっと待って! これは誤解よ! 私の魔力は“聖属性”だから、普通の水晶には反応しにくいの!)

慌てて説明しようとした瞬間――
水晶が遅れてぼわっと光を放ち、事務員のお姉さんが後ろによろめいた。

「な、なんですかこの聖属性の純度……! 桁外れです!」

一転してギルドがどよめきに包まれる。

「聖女か!?」「いや、もう聖女じゃないらしいぞ」「定年聖女?」

「誰が定年よ!」
思わず怒鳴ってしまい、さらに笑い声が起きた。



武器の試技

次は木剣での基本動作。
ヨシュアは軽快に振り下ろし、フォームも綺麗。

私は……振った瞬間にバランスを崩して、木剣を床に落とした。

ガシャンッ!

ギルド中が爆笑。

「やっぱり定年だろ!」
「いやでも魔力すごいんだぜ!」

顔が真っ赤になりながら、私は拾い上げて胸を張った。
「……見てなさい、魔法戦なら負けないんだから!」



登録完了

事務員のお姉さんが苦笑しながら札を差し出した。

「はい、お二人とも冒険者登録完了です。
……コンビで活動なさるのですね?」

「もちろん!」
ヨシュアと声が重なった。

私は札を掲げながら思った。
――これで、本当に“第二の人生”が始まったんだわ。


依頼掲示板の前で

ギルド登録を済ませた私とヨシュアは、早速掲示板の前に立った。
ずらりと貼られた紙には、依頼がびっしり。

「えーっと……狼退治、護衛任務、薬草採取……」
私が唸っていると、ヨシュアが横で真剣な顔をしていた。

「最初は軽い依頼からやるのが普通だよ」

「ふむ……」
と考えていたとき、後ろからがははっと大きな笑い声が響いた。



ならず者の戦士・グラント

「おいおい、新顔が依頼に迷ってるってか? なら俺様が手伝ってやろうじゃねぇか!」

振り返ると、筋骨隆々の大男。
背中に大剣を背負い、髭面でいかにも“ならず者”。

周囲の冒険者が小声で囁く。
「……あいつ、グラントじゃねぇか」「腕は立つが問題児だぞ」

私は眉をひそめた。
「あなた、ちょっと柄が悪くない?」

「へっ、言われ慣れてるぜ。だが腕っぷしなら保証してやる。で、どうだ? 一緒に組まねぇか?」

……妙に気さくで、憎めない笑顔をしていた。



落ちこぼれ魔術師・エリオ

その横から、もじもじと声がした。
「……あ、あの……僕も……」

現れたのは、やせっぽちで服も少し汚れた若い魔術師。
ローブの裾はほつれていて、髪もぼさぼさ。

「君は?」
「エ、エリオです……魔術師だけど……あまり上手くなくて……」

周囲から失笑が漏れる。
「おいおい、あの落ちこぼれ魔術師か」
「魔法撃てば自分に跳ね返す奴だろ」

私はその声にむっとした。
「ちょっと! 笑うんじゃないわよ!」

エリオは真っ赤になってうつむく。
その姿が妙に放っておけなかった。



仲間に?

ヨシュアがこっそり耳打ちしてきた。

「お姉さん、この二人……クセはあるけど、悪い人じゃなさそうだよ」

私は腕を組んで考え込む。
ならず者の戦士と、落ちこぼれ魔術師――。
でも、不思議と胸がわくわくした。

「……よし。じゃあ、一度一緒にやってみましょうか。
うまくいけば……仲間に、ね」

グラントが豪快に笑い、エリオは顔を赤らめてこくりとうなずいた。

こうして、私たちの冒険は“本当のパーティ”へと歩き出した。



◾️パーティー結成

「期限切れ聖女」
「落ちこぼれ魔術師」
「ならず者戦士」
「訳あり美少年」

見事に余り物の寄せ集め。
でも、なぜか胸が高鳴っていた。

「じゃあ、私たちでパーティーを組みましょう!」

その瞬間、ギルド中がざわついた。
「おい、あのメンツで?」「……即壊滅だな」

(見てなさい。期限切れなんかじゃないって、証明してやるんだから!)

「じゃあ決まりね。私たち、パーティーを組みましょう」
元聖女ジェシカ、落ちこぼれ魔術師、ならず者戦士、そして訳あり美少年。

まるで余り物の寄せ集めみたいだけど――
ここから始まるのは、期限切れ聖女の“第二の冒険”だ。

宴会

冒険者ギルドの片隅。粗末な丸テーブルに、私たちは集まった。
酒場と一体型のギルドは、今日も大騒ぎ。
「まずは乾杯だ!」
ならず者戦士が豪快に木のジョッキを掲げた。
「俺たちの門出に!」

「か、乾杯……!」
魔術師は小声で合わせ、ジョッキを持つ手がぷるぷる震えている。

「ねぇねぇ、自己紹介しよ!」
美少年がきらきらした目で提案した。
「こういうの、仲良くなるのに大事なんだって聞いたよ」

(……子供にリードされてる時点で、大丈夫かなこのパーティー)

「じゃあ、私から。ジェシカ。元聖女、定年で期限切れ。得意なのは回復魔法です。えっと……料理と会計もできます!」
「家事万能かよ!」と、戦士が噴き出した。

次は魔術師。
「……俺はエリオ。魔術師。得意属性は火……のはずなんだけど……よく暴発する。えっと……頑張ります」
言った途端、ローブの焦げ跡に視線が集まった。
「お、おお……説得力あるな」戦士が肩を揺らして笑う。

「次は俺だな。グラントだ。戦士。ならず者だが、剣の腕は本物だぜ。酒とケンカは大得意だ!」
「自慢になってないよ!」とジェシカが即ツッコミ。

最後に美少年。
「ぼくはヨシュア剣士! みんなを守るよ!」
「守るって、お前まだ子供じゃ──」
「だって、お父さんとお母さんでしょ?」

「「はああああ!?!?」」
ジェシカとエリオが同時に叫んだ。

その場は大爆笑。
戦士は腹を抱えて転げ、美少年はにっこり。
宴会の夜は、こうして嵐のように幕を開けた。

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