『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)

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崩れゆく側妃

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闇が霧散し、兵も民も歓声を上げる中――
ただ一人、側妃だけが膝をつき、爪を立てるように地面を掻いていた。

「……認めない……私は……王妃になる女……
あの女に負けるものか……!」

彼女の目は血走り、髪は乱れ、しかしなお宝玉を握り締めていた。



禁術の暴走

「ならば……すべてを……!」
側妃が宝玉に魔力を注ぐと、砕けたはずの魔法陣が再び赤黒く輝きだした。
しかしそれは明らかに制御を失っていた。

「やめろ! それ以上は――!」
ヨシュアが駆け寄ろうとした瞬間、
側妃の身体から黒炎が噴き出した。

「ぐ、あああああッ!」



自滅

叫びは断末魔に変わり、
側妃の姿は炎と闇に呑まれていった。

最後に残ったのは――
「……玉座……私の……もの……」
という掠れた声だけ。

そのまま光が弾け、側妃は跡形もなく消え去った。



戦場の静寂

全員が黙り込み、ただその消滅を見つめていた。

ヨシュアは剣を下ろし、かすかに震える声で呟いた。
「……哀れだな。最後まで、母上の影を見ようとしなかった」

王妃は目を伏せ、短く祈りを捧げた。
「……せめて魂だけは、安らかであれ」


戦場のあと

戦場にはまだ煙が立ち込め、負傷者たちの呻きが響いていた。
しかし――大きな歓声がそれを上回る。
「勝ったぞ! 正妃派が勝った!」
「ヨシュア様万歳!」

私たちはそれぞれ治療や整理に奔走しながら、戦の終わりを実感していた。



イルスの処遇

翌日。
捕らえられたイルスは、震える少年のままヨシュアの前に連れてこられた。
「……ぼ、僕は……」

泣き崩れるイルスを見て、兵たちの間から声が漏れる。
「側妃の子だ。処刑すべきだ」
「だが、王家の血だ。どうする……?」

ヨシュアは静かに目を閉じ、剣を鞘に収めた。
「イルスを処刑はしない」
兵たちがどよめく。

「彼は“王の旗”として利用されただけだ。罪は重いが……まだ子どもだ。
辺境伯――叔父上。イルスを預かってください。辺境の館で厳しく監視し、二度と王都に戻れぬように」

叔父がうなずく。
「承知した。鎖に繋ぎ、学ばせよう。だが命は守ろう」

イルスは涙を流し、呟いた。
「……ありがとう……」



側妃派の残党

側妃に従っていた貴族たちは一斉に捕らえられ、城の大広間に引き立てられた。
王妃が厳しい声で告げる。
「国を乱し、民を苦しめた罪は重い。だが、命を奪えばまた憎しみが生まれる。
財を没収し、領地を縮小し、罪を償わせる。これ以上の甘えは許しません」

貴族たちは顔を伏せ、声もなく頷くしかなかった。



民の声

一方、民衆の間では「ヨシュア様が救ってくれた」という声が広がり、自然と彼の名を讃える歌が作られ始めていた。
私はそれを聞きながら、少し照れくさそうな彼に笑いかけた。
「もう“旗”じゃなくて、“王の器”ね」

ヨシュアは苦笑しつつも、真剣な眼差しで答えた。
「まだまだだよ。けど……もう逃げはしない」
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