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王の最後ーー
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王の寝所
王妃とヨシュアに付き添われ、私は王の寝所に入った。
ベッドに横たわる王の顔は痩せこけ、皮膚は青白く、息も細い。
体にはまだ薬の匂いが染みついていた。
私がそっと手をかざすと、光が王の体を包んだ。
「……やはり……」
聖なる力が毒を押し返すが、その奥底に澱のように溜まった闇は消えない。
「……多量過ぎる。長くは……持ちません」
⸻
最後の対話
弱々しい目がかすかに開き、王はヨシュアを見た。
「……ヨシュア……」
「父上!」
ヨシュアが膝をつき、手を握る。
王はかすれた声で続けた。
「……守れなかった……正妃も……お前も……。
すまなかった……」
ヨシュアは涙を浮かべ、首を振る。
「いいえ……今、こうして父上と話せるだけで……もう十分です」
⸻
王の願い
王の視線が私に向けられた。
「聖女よ……息子を……頼む……。この国を……守れるのは……あの子だ」
私は深くうなずいた。
「はい。必ず」
王は微かに笑みを浮かべ、最後にヨシュアへ囁いた。
「……母を……頼んだぞ……」
王から王妃へ
王の視線が、かすかに王妃へ向いた。
「……すまぬ……長く……苦しめたな」
王妃は一瞬、瞳を揺らしたが、静かに首を振った。
「……いいえ。私は……信じていました。
たとえあなたが傀儡にされても……心だけは失っていないと」
王は震える手を伸ばし、王妃の手を探した。
「……守って……やれなかった……すまない……」
王妃はその手を包み込み、涙をこらえた声で答えた。
「謝らないでください。今こうして……あなたの“声”が聞けただけで、私は報われました」
⸻
王の最期の願い
王は穏やかな笑みを浮かべ、二人の手を重ね合わせた。
「……二人で……国を……導いて……」
そして――王の息は静かに途絶えた。
⸻
残された者たち
王妃はしばらくその手を握り続け、やがてそっと瞼を閉じさせた。
「……安らかに。あなたの遺したものは、必ず守ります」
その姿は、悲しみを超えて気高く――
ヨシュアが次代を担う“王”であることを示す、まさに正妃の風格だった。
国王の葬儀
亡くなった国王の葬儀は、誰に知られることもなく、ひっそりと行われた。
大広間を使うこともなく、限られた者たちだけが集う簡素な式。
そこには、かつての威厳も華やかさもなかった。
私は祭壇に置かれた棺に歩み寄り、両手を組んで静かに祈りを捧げた。
「……安らかに」
その言葉は声にならず、ただ胸の奥に落ちていった。
私に続いて、ヨシュアと王妃が並び、同じように膝を折る。
王妃は唇を強く結び、声を押し殺すようにして祈りを続けた。
そして、ヨシュア。
小さな肩を震わせることもなく、まっすぐに棺を見つめ、ただひたすらに祈り続けていた。
その姿には少年らしさよりも、王家の血を継ぐ者としての決意が滲んでいるように見えた。
静かで、短い葬儀だった。
けれど、そこに流れる沈黙は重く、これからの嵐を予感させるものでもあった。
(まだ、やるべきことがある。ここで立ち止まっている時間はない――)
私は深く息を吸い込み、祈りを終えた。
ヨシュアはその場にじっと留まり、祈りを捧げ続ける。
その姿が、胸に焼き付いて離れなかった。
王妃の願い
その声は静かで、けれど切実さをはらんでいた。
「王がこのような形で世を去ったことを、民は知らないでしょう。
ですがせめて……神に仕える聖女の祈りによって、安らぎの道へ導いて差し上げたいのです」
「……私でよければ」
胸の奥が熱くなる。
定年を迎えて“役目を終えた”と思っていた私に、まだ果たすべき務めを託してくれる人がいる。
王妃は深く頭を垂れた。
「お願いします、ジェシカ様」
⸻
聖女の儀式
私は棺の前に進み、静かに膝をついた。
両手を胸に当て、祈りの言葉を紡ぐ。
「天に還りし御霊よ、安らかに……」
光が私の掌から零れ、棺を淡く包み込んでいく。
厳かな光は礼拝堂全体を照らし、わずかに漂う香の匂いとともに、静かな温もりを広げた。
ヨシュアはその光を見つめ、何かを決意するように強く目を閉じた。
王妃の目にも涙が光り、頬を伝って落ちていく。
儀式が終わったとき、礼拝堂は完全な静寂に包まれていた。
「……ありがとう、ジェシカ様」
王妃の震える声が耳に届いた。
⸻
(聖女としての役目は終わったはずだった。でも――)
私は自分の手を見下ろした。
まだ、この力を必要としてくれる人がいる。
ヨシュアの誓い
礼拝堂の空気が落ち着いた頃、ヨシュアはゆっくりと立ち上がった。
まだ小柄な体。けれど、その背筋は凛と伸びていて、子供というより若き戦士のように見えた。
「母上……ジェシカ」
静かな声が、祈りの余韻を破る。
「僕は、守られるだけの子供じゃいられない」
その言葉に、王妃も私も息をのむ。
「この国のことも、母上のことも、ジェシカのことも……僕は全部、自分で守れるようになりたい。
たとえ誰に狙われても、逃げない」
その瞳には、年齢を超えた強さが宿っていた。
小さな手が剣の柄を強く握り締め、まるで未来へ挑むように。
⸻
母の想いと聖女の想い
王妃はしばらく黙って息子を見つめ、それからゆっくりと微笑んだ。
「……そうね。あなたは私の誇りです。どうか、その覚悟を忘れないで」
私は彼の横に立ち、肩に手を置いた。
「でも、忘れないで。強くなろうとしても、人は一人じゃ戦えないわ。
だから私たちがいる。仲間が、必ずあなたを支える」
ヨシュアは小さく笑い、こくりと頷いた。
⸻
新たな一歩
国王の葬儀は静かに幕を閉じた。
だが、それは終わりではなく――新しい始まりだった。
ヨシュアは誓った。
自分の運命から逃げず、前に進むことを。
そして私は決めた。
彼が立ち上がれるように、最後まで支え続けることを。
胸の奥に静かな熱が灯り、私たちはそれぞれの決意を抱いたまま、礼拝堂を後にした。
王妃とヨシュアに付き添われ、私は王の寝所に入った。
ベッドに横たわる王の顔は痩せこけ、皮膚は青白く、息も細い。
体にはまだ薬の匂いが染みついていた。
私がそっと手をかざすと、光が王の体を包んだ。
「……やはり……」
聖なる力が毒を押し返すが、その奥底に澱のように溜まった闇は消えない。
「……多量過ぎる。長くは……持ちません」
⸻
最後の対話
弱々しい目がかすかに開き、王はヨシュアを見た。
「……ヨシュア……」
「父上!」
ヨシュアが膝をつき、手を握る。
王はかすれた声で続けた。
「……守れなかった……正妃も……お前も……。
すまなかった……」
ヨシュアは涙を浮かべ、首を振る。
「いいえ……今、こうして父上と話せるだけで……もう十分です」
⸻
王の願い
王の視線が私に向けられた。
「聖女よ……息子を……頼む……。この国を……守れるのは……あの子だ」
私は深くうなずいた。
「はい。必ず」
王は微かに笑みを浮かべ、最後にヨシュアへ囁いた。
「……母を……頼んだぞ……」
王から王妃へ
王の視線が、かすかに王妃へ向いた。
「……すまぬ……長く……苦しめたな」
王妃は一瞬、瞳を揺らしたが、静かに首を振った。
「……いいえ。私は……信じていました。
たとえあなたが傀儡にされても……心だけは失っていないと」
王は震える手を伸ばし、王妃の手を探した。
「……守って……やれなかった……すまない……」
王妃はその手を包み込み、涙をこらえた声で答えた。
「謝らないでください。今こうして……あなたの“声”が聞けただけで、私は報われました」
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王の最期の願い
王は穏やかな笑みを浮かべ、二人の手を重ね合わせた。
「……二人で……国を……導いて……」
そして――王の息は静かに途絶えた。
⸻
残された者たち
王妃はしばらくその手を握り続け、やがてそっと瞼を閉じさせた。
「……安らかに。あなたの遺したものは、必ず守ります」
その姿は、悲しみを超えて気高く――
ヨシュアが次代を担う“王”であることを示す、まさに正妃の風格だった。
国王の葬儀
亡くなった国王の葬儀は、誰に知られることもなく、ひっそりと行われた。
大広間を使うこともなく、限られた者たちだけが集う簡素な式。
そこには、かつての威厳も華やかさもなかった。
私は祭壇に置かれた棺に歩み寄り、両手を組んで静かに祈りを捧げた。
「……安らかに」
その言葉は声にならず、ただ胸の奥に落ちていった。
私に続いて、ヨシュアと王妃が並び、同じように膝を折る。
王妃は唇を強く結び、声を押し殺すようにして祈りを続けた。
そして、ヨシュア。
小さな肩を震わせることもなく、まっすぐに棺を見つめ、ただひたすらに祈り続けていた。
その姿には少年らしさよりも、王家の血を継ぐ者としての決意が滲んでいるように見えた。
静かで、短い葬儀だった。
けれど、そこに流れる沈黙は重く、これからの嵐を予感させるものでもあった。
(まだ、やるべきことがある。ここで立ち止まっている時間はない――)
私は深く息を吸い込み、祈りを終えた。
ヨシュアはその場にじっと留まり、祈りを捧げ続ける。
その姿が、胸に焼き付いて離れなかった。
王妃の願い
その声は静かで、けれど切実さをはらんでいた。
「王がこのような形で世を去ったことを、民は知らないでしょう。
ですがせめて……神に仕える聖女の祈りによって、安らぎの道へ導いて差し上げたいのです」
「……私でよければ」
胸の奥が熱くなる。
定年を迎えて“役目を終えた”と思っていた私に、まだ果たすべき務めを託してくれる人がいる。
王妃は深く頭を垂れた。
「お願いします、ジェシカ様」
⸻
聖女の儀式
私は棺の前に進み、静かに膝をついた。
両手を胸に当て、祈りの言葉を紡ぐ。
「天に還りし御霊よ、安らかに……」
光が私の掌から零れ、棺を淡く包み込んでいく。
厳かな光は礼拝堂全体を照らし、わずかに漂う香の匂いとともに、静かな温もりを広げた。
ヨシュアはその光を見つめ、何かを決意するように強く目を閉じた。
王妃の目にも涙が光り、頬を伝って落ちていく。
儀式が終わったとき、礼拝堂は完全な静寂に包まれていた。
「……ありがとう、ジェシカ様」
王妃の震える声が耳に届いた。
⸻
(聖女としての役目は終わったはずだった。でも――)
私は自分の手を見下ろした。
まだ、この力を必要としてくれる人がいる。
ヨシュアの誓い
礼拝堂の空気が落ち着いた頃、ヨシュアはゆっくりと立ち上がった。
まだ小柄な体。けれど、その背筋は凛と伸びていて、子供というより若き戦士のように見えた。
「母上……ジェシカ」
静かな声が、祈りの余韻を破る。
「僕は、守られるだけの子供じゃいられない」
その言葉に、王妃も私も息をのむ。
「この国のことも、母上のことも、ジェシカのことも……僕は全部、自分で守れるようになりたい。
たとえ誰に狙われても、逃げない」
その瞳には、年齢を超えた強さが宿っていた。
小さな手が剣の柄を強く握り締め、まるで未来へ挑むように。
⸻
母の想いと聖女の想い
王妃はしばらく黙って息子を見つめ、それからゆっくりと微笑んだ。
「……そうね。あなたは私の誇りです。どうか、その覚悟を忘れないで」
私は彼の横に立ち、肩に手を置いた。
「でも、忘れないで。強くなろうとしても、人は一人じゃ戦えないわ。
だから私たちがいる。仲間が、必ずあなたを支える」
ヨシュアは小さく笑い、こくりと頷いた。
⸻
新たな一歩
国王の葬儀は静かに幕を閉じた。
だが、それは終わりではなく――新しい始まりだった。
ヨシュアは誓った。
自分の運命から逃げず、前に進むことを。
そして私は決めた。
彼が立ち上がれるように、最後まで支え続けることを。
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更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
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