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妖精姫は皇帝国の王女です。
皇太子妃候補控室(別名:政略と笑顔の戦場)
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広々とした応接室。
豪奢なソファと花が活けられたテーブル。
だが、空気は完全に戦場だった。
女の子たちの微笑みは──すべて、毒入りである。
「まぁ、あなたのドレス、今年の型なの? ふふ、珍しいわね」
「ご実家、男爵家ですのよね。あら、でも帝国との商取引はなさそうで?」
「婚約者候補は以前、なにしてらしたのかしら」
──さりげない牽制。
刺すような視線と、うっすら漂う女のマウント。
ふわりと笑う者。
ふっと目をそらす者。
明らかに“気合入れすぎた香水”で目がしみる者。
そんな中。
◇部屋の隅、静かなる観察者:マギー嬢
「……あー、やってるやってる」
マギーは窓辺の椅子に静かに座りながら、開いた薬草学の本をぱらぱらとめくっていた。
(この季節、湿度でトリカブトの根が変質しやすいのよね……)
指先はうっすらと草の色が残る黄緑。
先ほどまで、宿舎で「ラベンダーとカモミールの調合試作」をしていたためである。
(……というか、あの子たち、アロマでも炊いて落ち着けばいいのに)
視線の先では、侯爵令嬢ふたりがドレスの裾を踏み合いながら小声で火花を散らしていた。
(あんな顔で笑うくらいなら、薬草煎じてたほうが百倍ましだわ)
──実はマギー、
「皇妃の肝入りで送り込まれた“観察枠”」である。
帝国の新薬草管理局の設立メンバー候補であり、婚姻に積極的ではなかったが、
「婚約と政務、両立すればいいじゃない? by 皇妃ロレーヌ」の一言でここにいる。
マギー:(皇太子殿下がどんな方か知りませんが……私の乾燥棚を壊したりしたら、許さないわよ)
そっと、本に挟んでいたラベンダーのしおりを整える。
──その頃、別室ではギデオンが溜息をついていた。
ギデオン:「この候補者リスト……このままでは香水と虚栄と毒舌の集団戦。皇太子殿下、耐えられるだろうか……」
◇控室の前、帝国宮廷の中庭の片隅にて
控室へ向かっていた皇太子ヨーゼフは、途中で足を止めた。
白いアーチの下、ラベンダーが風に揺れている。
その前で、ひとりの少女がしゃがみ込み、指先で花を優しく撫でていた。
少女:「気鬱には……うーん、アロマならラベンダーと……」
彼女はひとりごとのように呟いている。
少女:「……オレンジスパイスも少し入れて、甘く深く。これをアロマストーンに垂らすと……」
ヨーゼフ:「……それって、心を落ち着けたい時のブレンドですか?」
声をかけた瞬間、彼女は振り向いた。
灰がかった淡い髪。落ち着いた瞳。
マギーは彼を一瞥し、ふんわりと微笑んだ。
マギー:「ええ、気鬱用の定番よ。でもスパイス系の香りが苦手な人には向かないの」
ヨーゼフ:「それは……例えば、今日、控室で“何か起きそう”な時とか?」
マギー:「あら、察しがいいのね。あなたも候補者?」
ヨーゼフ:「いえ……えーと、その……人を見る役というか」
マギー:「ああ、付き添いとか推薦側ね。ご苦労さま。あそこ、もう空気ピリピリよ。ラベンダーの香りでも焚いてあげたいわ」
ヨーゼフは苦笑した。
まさか自分の妃候補たちの控室が「ピリピリ」と表現されているとは。
マギー:「あなた、ラベンダーは好き?」
ヨーゼフ:「……実は、よくわからない。貴族の宴席には香が多すぎて、いつも混ざってしまって」
マギー:「それ、あるあるね。じゃあ、いま嗅いでみる?」
そう言ってマギーは、小さな瓶を取り出し、数滴を手の甲に垂らした。
すっと風が吹き、甘くて落ち着いた香りが漂う。
ヨーゼフ:「……これは、いい香りだ」
マギー:「でしょ? お薬じゃないけど、香りには力があるのよ。だから、今日もきっとなんとかなるわ」
ヨーゼフは、ほんの少しだけ表情を緩めた。
この短い会話だけで、控室よりもずっと心が落ち着くのを感じていた。
ヨーゼフ:「ありがとう。……名前を、聞いてもいいですか?」
マギー:「マギー。薬草学と調合の研究をしてるの。あなたは?」
ヨーゼフ:「……ヨーゼフ。あっちは、にぎやかすぎてね。こっちのほうが、性に合ってるのかもしれない」
マギー:「あら、じゃあ今度はオレンジスパイス多めで調合してみるわ。……皇太子殿下、もしもお疲れなら」
ヨーゼフ:「……! バレてた?」
マギー:「んー? 気づいてないふりよ。香りが乱れるから」
ヨーゼフは、思わず吹き出した。
◇ 宮廷の回廊にて ─ 令嬢候補たちを見送ったあと
控室での選抜面談がひと段落し、リリベッタとロレーヌはテラスから退出する令嬢たちを見送っていた。
ロレーヌ:「あら? あの子、まだいたのね」
リリベッタ:「……あの令嬢、マギーとかおっしゃっていたかと。控室ではあまり前に出てこなかった方ですね」
ロレーヌ:「ふぅん。ほら見て、あの立ち居振る舞い。あの娘だけ、嫌な香水の匂いがしないのよ」
リリベッタもふっと目を細める。
リリベッタ:「確かに……。周囲と少し違う香り。薄く、でも自然に香ってきました。ラベンダーと……オレンジスパイス? 薬草系の調合ですね」
ロレーヌ:「やっぱり薬剤師の家系?」
リリベッタ:「それが……貴族名簿を見る限り、男爵家の娘です。母系が薬師の家筋のようですね。でも、ご本人はれっきとしたご令嬢です」
ロレーヌ:「いーじゃない! 地に足がついてて、健康的で、頭よさそうで、香りもちゃんと自分で整えてる!」
リリベッタ:「ふふ……お義母さま、お気に召しましたか?」
ロレーヌ:「だって~、皇太子妃の香りが“ちょっと多すぎる桃の香り”とか、勘弁してほしいのよ」
リリベッタ:「……誰のことか、心当たりが多すぎて困ります」
ロレーヌは小さく手を叩くと、笑顔をキラキラさせながら言った。
ロレーヌ:「よし、あの娘。候補Aにランクアップ。ギデオンに精査させましょう。どんな生活してるか、朝食はなにか、寝癖は出やすいか、全部ね!」
リリベッタ:「そこまでは必要でしょうか……」
ロレーヌ:「もちろんよ!皇室入りする娘の寝癖まで、ちゃんと見ておかないと!」
リリベッタ:「……ギデオンが倒れないか心配になってきました」
ロレーヌ:「あら、ギデオンには結婚の前に結婚させてあげたんだから、働いてもらわないと!」
【ギデオン、まさかの“観察対象に観察されている”回】
~君は何者?薬草令嬢の鋭すぎるまなざし~
ギデオンは、皇太子妃候補の一人となった「マギー・フィルゼン男爵令嬢」の身辺調査を開始していた。
当然ながら、穏やかに、目立たぬように。
──はずだった。
ギデオン(内心)
(普段は図書室と薬草温室を往復。使用人とも最小限の会話、夜はアロマと薬酒の調合記録。癖も少なく、生活は規則的……ただ、やけに気配に敏い)
その日、書庫での“偶然の遭遇”がきっかけだった。
⸻
◇ 書庫・古代植物薬典の棚前
マギーは椅子に座って本を読みながら、ふと横目を動かした。
マギー:「……観察、されてます?」
ギデオン:「……失礼?」
マギーは本から顔を上げ、じっと彼を見つめた。
そのまなざしは、まるでルーペで心の内を覗き込むような鋭さ。
マギー:「あなた、人の歩数、呼吸のリズム、利き手、視線の流れ──全部見てる人ですよね。
あと、香水つけてないのに、なぜかラベンダーの匂いがする。香り袋、仕込んでます?」
ギデオン:「……おや、鋭いですね」
マギー:「でも、さっきから**右足に重心が偏ってるのに、腰が傾かない。**普段剣を持ってない人の立ち方じゃない」
ギデオン(内心)
(……え、俺、観察されてる?)
マギー:「それに、今この場で最も視線を向けたページは『沈静作用の強い香草酒の処方』。……お疲れですか?」
ギデオン:「……観察される側は不慣れでして」
マギー:「私は日々、植物と向き合ってますから。人も、わりと似たようなものなんです。あなた、どこかで戦ってる人の目をしてる」
ギデオン:「……なるほど。見抜く力、侮れませんね」
マギー:「あの、失礼な質問していいですか?」
ギデオン:「どうぞ」
マギー:「あなたって……ギデオン様ですよね?」
ギデオン(固まる)
マギー:「たぶん、もっと変装して来ないと、意味ないと思いますよ?
あなたが書庫で読んだ本、誰がいつ返したか、全部記録してるので。
香水の購入記録も。調香師、共通ですし」
ギデオン:「……俺が“観察対象”じゃないと、なぜ思っていたんだろうな……」
◇ 薔薇の館にて/ロレーヌとリリベッタ
ロレーヌ:「で、ギデオンが“観察されてた”って顔して戻ってきたの?」
リリベッタ:「お義母さま、笑いすぎです。気の毒ですってば」
ロレーヌ:「ふふふ、いいじゃない!
対等に張り合える女の子、貴重よ? あの子、気に入ったわ!」
豪奢なソファと花が活けられたテーブル。
だが、空気は完全に戦場だった。
女の子たちの微笑みは──すべて、毒入りである。
「まぁ、あなたのドレス、今年の型なの? ふふ、珍しいわね」
「ご実家、男爵家ですのよね。あら、でも帝国との商取引はなさそうで?」
「婚約者候補は以前、なにしてらしたのかしら」
──さりげない牽制。
刺すような視線と、うっすら漂う女のマウント。
ふわりと笑う者。
ふっと目をそらす者。
明らかに“気合入れすぎた香水”で目がしみる者。
そんな中。
◇部屋の隅、静かなる観察者:マギー嬢
「……あー、やってるやってる」
マギーは窓辺の椅子に静かに座りながら、開いた薬草学の本をぱらぱらとめくっていた。
(この季節、湿度でトリカブトの根が変質しやすいのよね……)
指先はうっすらと草の色が残る黄緑。
先ほどまで、宿舎で「ラベンダーとカモミールの調合試作」をしていたためである。
(……というか、あの子たち、アロマでも炊いて落ち着けばいいのに)
視線の先では、侯爵令嬢ふたりがドレスの裾を踏み合いながら小声で火花を散らしていた。
(あんな顔で笑うくらいなら、薬草煎じてたほうが百倍ましだわ)
──実はマギー、
「皇妃の肝入りで送り込まれた“観察枠”」である。
帝国の新薬草管理局の設立メンバー候補であり、婚姻に積極的ではなかったが、
「婚約と政務、両立すればいいじゃない? by 皇妃ロレーヌ」の一言でここにいる。
マギー:(皇太子殿下がどんな方か知りませんが……私の乾燥棚を壊したりしたら、許さないわよ)
そっと、本に挟んでいたラベンダーのしおりを整える。
──その頃、別室ではギデオンが溜息をついていた。
ギデオン:「この候補者リスト……このままでは香水と虚栄と毒舌の集団戦。皇太子殿下、耐えられるだろうか……」
◇控室の前、帝国宮廷の中庭の片隅にて
控室へ向かっていた皇太子ヨーゼフは、途中で足を止めた。
白いアーチの下、ラベンダーが風に揺れている。
その前で、ひとりの少女がしゃがみ込み、指先で花を優しく撫でていた。
少女:「気鬱には……うーん、アロマならラベンダーと……」
彼女はひとりごとのように呟いている。
少女:「……オレンジスパイスも少し入れて、甘く深く。これをアロマストーンに垂らすと……」
ヨーゼフ:「……それって、心を落ち着けたい時のブレンドですか?」
声をかけた瞬間、彼女は振り向いた。
灰がかった淡い髪。落ち着いた瞳。
マギーは彼を一瞥し、ふんわりと微笑んだ。
マギー:「ええ、気鬱用の定番よ。でもスパイス系の香りが苦手な人には向かないの」
ヨーゼフ:「それは……例えば、今日、控室で“何か起きそう”な時とか?」
マギー:「あら、察しがいいのね。あなたも候補者?」
ヨーゼフ:「いえ……えーと、その……人を見る役というか」
マギー:「ああ、付き添いとか推薦側ね。ご苦労さま。あそこ、もう空気ピリピリよ。ラベンダーの香りでも焚いてあげたいわ」
ヨーゼフは苦笑した。
まさか自分の妃候補たちの控室が「ピリピリ」と表現されているとは。
マギー:「あなた、ラベンダーは好き?」
ヨーゼフ:「……実は、よくわからない。貴族の宴席には香が多すぎて、いつも混ざってしまって」
マギー:「それ、あるあるね。じゃあ、いま嗅いでみる?」
そう言ってマギーは、小さな瓶を取り出し、数滴を手の甲に垂らした。
すっと風が吹き、甘くて落ち着いた香りが漂う。
ヨーゼフ:「……これは、いい香りだ」
マギー:「でしょ? お薬じゃないけど、香りには力があるのよ。だから、今日もきっとなんとかなるわ」
ヨーゼフは、ほんの少しだけ表情を緩めた。
この短い会話だけで、控室よりもずっと心が落ち着くのを感じていた。
ヨーゼフ:「ありがとう。……名前を、聞いてもいいですか?」
マギー:「マギー。薬草学と調合の研究をしてるの。あなたは?」
ヨーゼフ:「……ヨーゼフ。あっちは、にぎやかすぎてね。こっちのほうが、性に合ってるのかもしれない」
マギー:「あら、じゃあ今度はオレンジスパイス多めで調合してみるわ。……皇太子殿下、もしもお疲れなら」
ヨーゼフ:「……! バレてた?」
マギー:「んー? 気づいてないふりよ。香りが乱れるから」
ヨーゼフは、思わず吹き出した。
◇ 宮廷の回廊にて ─ 令嬢候補たちを見送ったあと
控室での選抜面談がひと段落し、リリベッタとロレーヌはテラスから退出する令嬢たちを見送っていた。
ロレーヌ:「あら? あの子、まだいたのね」
リリベッタ:「……あの令嬢、マギーとかおっしゃっていたかと。控室ではあまり前に出てこなかった方ですね」
ロレーヌ:「ふぅん。ほら見て、あの立ち居振る舞い。あの娘だけ、嫌な香水の匂いがしないのよ」
リリベッタもふっと目を細める。
リリベッタ:「確かに……。周囲と少し違う香り。薄く、でも自然に香ってきました。ラベンダーと……オレンジスパイス? 薬草系の調合ですね」
ロレーヌ:「やっぱり薬剤師の家系?」
リリベッタ:「それが……貴族名簿を見る限り、男爵家の娘です。母系が薬師の家筋のようですね。でも、ご本人はれっきとしたご令嬢です」
ロレーヌ:「いーじゃない! 地に足がついてて、健康的で、頭よさそうで、香りもちゃんと自分で整えてる!」
リリベッタ:「ふふ……お義母さま、お気に召しましたか?」
ロレーヌ:「だって~、皇太子妃の香りが“ちょっと多すぎる桃の香り”とか、勘弁してほしいのよ」
リリベッタ:「……誰のことか、心当たりが多すぎて困ります」
ロレーヌは小さく手を叩くと、笑顔をキラキラさせながら言った。
ロレーヌ:「よし、あの娘。候補Aにランクアップ。ギデオンに精査させましょう。どんな生活してるか、朝食はなにか、寝癖は出やすいか、全部ね!」
リリベッタ:「そこまでは必要でしょうか……」
ロレーヌ:「もちろんよ!皇室入りする娘の寝癖まで、ちゃんと見ておかないと!」
リリベッタ:「……ギデオンが倒れないか心配になってきました」
ロレーヌ:「あら、ギデオンには結婚の前に結婚させてあげたんだから、働いてもらわないと!」
【ギデオン、まさかの“観察対象に観察されている”回】
~君は何者?薬草令嬢の鋭すぎるまなざし~
ギデオンは、皇太子妃候補の一人となった「マギー・フィルゼン男爵令嬢」の身辺調査を開始していた。
当然ながら、穏やかに、目立たぬように。
──はずだった。
ギデオン(内心)
(普段は図書室と薬草温室を往復。使用人とも最小限の会話、夜はアロマと薬酒の調合記録。癖も少なく、生活は規則的……ただ、やけに気配に敏い)
その日、書庫での“偶然の遭遇”がきっかけだった。
⸻
◇ 書庫・古代植物薬典の棚前
マギーは椅子に座って本を読みながら、ふと横目を動かした。
マギー:「……観察、されてます?」
ギデオン:「……失礼?」
マギーは本から顔を上げ、じっと彼を見つめた。
そのまなざしは、まるでルーペで心の内を覗き込むような鋭さ。
マギー:「あなた、人の歩数、呼吸のリズム、利き手、視線の流れ──全部見てる人ですよね。
あと、香水つけてないのに、なぜかラベンダーの匂いがする。香り袋、仕込んでます?」
ギデオン:「……おや、鋭いですね」
マギー:「でも、さっきから**右足に重心が偏ってるのに、腰が傾かない。**普段剣を持ってない人の立ち方じゃない」
ギデオン(内心)
(……え、俺、観察されてる?)
マギー:「それに、今この場で最も視線を向けたページは『沈静作用の強い香草酒の処方』。……お疲れですか?」
ギデオン:「……観察される側は不慣れでして」
マギー:「私は日々、植物と向き合ってますから。人も、わりと似たようなものなんです。あなた、どこかで戦ってる人の目をしてる」
ギデオン:「……なるほど。見抜く力、侮れませんね」
マギー:「あの、失礼な質問していいですか?」
ギデオン:「どうぞ」
マギー:「あなたって……ギデオン様ですよね?」
ギデオン(固まる)
マギー:「たぶん、もっと変装して来ないと、意味ないと思いますよ?
あなたが書庫で読んだ本、誰がいつ返したか、全部記録してるので。
香水の購入記録も。調香師、共通ですし」
ギデオン:「……俺が“観察対象”じゃないと、なぜ思っていたんだろうな……」
◇ 薔薇の館にて/ロレーヌとリリベッタ
ロレーヌ:「で、ギデオンが“観察されてた”って顔して戻ってきたの?」
リリベッタ:「お義母さま、笑いすぎです。気の毒ですってば」
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