王太子に婚約破棄されたけど、私は皇女。幸せになるのは私です。

夢窓(ゆめまど)

文字の大きさ
14 / 20
妖精姫は皇帝国の王女です。

「帝国結婚式準備、そして政務ペアは最強だった」

しおりを挟む
帝国・中央政務庁。

「――この補正予算案、提出は秋では遅すぎます。農業部門の支援は、今すぐ再配分を」

「リリィ、それは君の部署じゃ……」

「言ったでしょ? 今は“政務パートナー”なの。お互いの責任領域、把握しておかないと」

書類を重ねるリリベッタ。
それを淡々とチェックするハリス。

帝国では、ふたりの並びをこう呼ぶようになっていた。

「銀の右腕と、紫の智恵」
――帝国政務最強ペア



「さて、式の準備も進んでいますよ」

ギデオンが顔を出すと、リリベッタがぱっと顔を上げる。

「お花は、私の好きな白薔薇と、母が好きだったラベンダーを中心に。あと、お兄様の許可があれば――」

「ハリス、どうする?」

「うん、それでいい。君の笑顔が一番、式に似合うからな」

「……は、恥ずかしい!」

書類をぶんと掲げてごまかすリリベッタの姿に、室内が和やかな空気に包まれた。



そこに、ギデオンが控えめに報告する。

「最近の報告です。今のところ、政務は順調です。ハリス様が浮気しないおかげで、私も本業に専念できます」

「……おい、どういう意味だ」

「安心です。かつての王太子殿下と違って、ハリス様は記録のページが“政務と愛情一途”の二項目だけで埋まっています。
レポートはつまらないですが、平和です」

「それ、褒めてる……のか?」

「最大級の賛辞です」

ギデオンはそう言って、静かに出ていった。



式の準備、政務の整備、民との対話――
ふたりの歩みは、まっすぐで、確実だった。

もう誰も、彼女を“政略の駒”とは呼ばない。

彼女は今、自らの手で帝国の未来を形づくっていた。

その隣に、ハリスがいる限り。



「結婚式の段取りと、心の準備は別問題です」

帝国宮廷・東のサロン。
いつものように、紅茶と軽い談笑――と思っていたその時。

皇妃ロレーヌが、さらっと言った。

「……それでね、最近考えているのよ。ギデオンの結婚式、どうしようかしらって」

場が、静まる。

リリベッタがティーカップを止め、マルガリータが小さく「へっ……?」と口を開け、
ギデオンは――凍った。

「陛下、それは……まだ、正式な日程もご報告しておらず……」

「ええ、知ってるわ。でも、あなたが言わないなら私が決めるだけよ」

ニッコリ。

「リリベッタの結婚式は盛大になるじゃない? でも王女と合同ってわけにもいかないし、ね?」

「そ、それは……畏れ多いと申しますか……」

「だから考えたの。“前座”じゃないけれど、**前日に済ませちゃえばいいんじゃない?**って」

「――っっ!」

ギデオン、無言でカップを持ち直す。手が少し震えている。

「だってその方が、リリベッタの結婚式が終わった後、一週間の政務休暇でしょ?」

「……確かに、連休期間ではありますが……」

「ね? 一緒に新婚旅行も行けるし。公的予定も合わせられて、ギデオンも何かと楽だと思うのよ。式場も空いてるし」

「い、いえ、楽かどうかというより、心の準備というものが……」

「ギデオン」

ロレーヌが少し身を乗り出して、柔らかく微笑む。

「あなた、恋愛は計画的なのに、結婚となると“急に自分事”になるのね?
でも、もうずいぶん長く一緒にいるじゃない。……マルガリータ嬢を、待たせたくないでしょう?」

その一言に、マルガリータが顔を真っ赤にし、
ギデオンは――動けなくなった。


◆ その後の控室

「……ギデオンどうするの?」リリベッタ

「……混乱しています。式が“政務最適化スケジュール”に組み込まれるとは……」

「ギデオン、本当に政務優先で結婚までされそうになってるわよ?」リリベッタ

「……これはムチですか?」ギデオン

「飴でしょ。愛の飴よ」リリベッタ



◆ その夜、マルガリータからの手紙

ギデオンへ
わたしは、あなたがどんな風に結婚を考えてくれても、嬉しいよ。
でも……もし“前日”になるなら、その日、私は誰よりも先に
“あなたの奥さん”になれてしまうんだなあ、って思ったら……
ちょっとだけ、嬉しいって思っちゃった。

ギデオン、読み終えたあとしばらく動かない。
そのまま、筆を取り、スケジュール帳を開いて一言だけ書いた。

「前日結婚式案、検討開始(本人了承済)」
「旅行先候補:静養地3つ、書庫付き宿1つ、海辺0件(検討の余地あり)」
  

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄は劇場にて――見世物にされた侯爵令嬢は、舞台ごと奪い返す』

鷹 綾
恋愛
王立劇場で開かれた慈善晩餐会。 その華やかな壇上で、侯爵令嬢サビーネ・ドルレアンは、第二王子セドリックから突然の婚約破棄を告げられる。 隣に立つのは、涙ぐむ男爵令嬢オディール。 大勢の貴族たちが見守る中、サビーネは“冷酷な悪女”として断罪され、黙って恥を引き受ける役を押しつけられる――はずだった。 けれど、サビーネは泣かなかった。 黙って舞台を降りることもなかった。 その夜を境に、侯爵令嬢は見世物にされた婚約破棄の意味を、静かに、そして容赦なく塗り替えていく。 王家の体面、王子の未熟さ、“可哀想な令嬢”の化けの皮。 一つずつ暴かれていく真実の先で、サビーネが取り戻すのは、失われた名誉だけではない。 これは、婚約破棄された令嬢が、誰かの筋書きから降りて、自分の人生を取り戻す物語。 見世物にされた舞台の上で、最後に微笑むのは――黙って泣く役を拒んだ侯爵令嬢。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

何もしていない聖女と言われたので、婚約破棄を受け入れます

鍛高譚
恋愛
聖女と呼ばれながらも、目立った奇跡を見せたことのない公爵令嬢ホーリィー・メイデン。 ある日突然、王太子から「何もしていない聖女」と断じられ、さらに身に覚えのない嫌がらせを理由に婚約破棄され、王都を去るよう命じられてしまう。 婚約に未練はなく、静かに追放を受け入れたホーリィー。 けれど、面識すらない相手を本当に傷つけたのかという疑問だけが胸に残る。 そして彼女が王都を離れたあと、王城では少しずつ不穏な出来事が起こり始める。 これは、見えない場所で王都を支えていた聖女が、再び“夜の王城”へ戻るまでの物語。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄をお望みでしたので。――本物の公爵令嬢は、奪った全員を生き地獄へ落とす

鷹 綾
恋愛
卒業舞踏会の夜。 公爵令嬢エルシェナ・ヴァルモンは、王太子エドガーから大勢の前で婚約破棄を言い渡された。 隣にいたのは、儚げな涙で男たちの同情を集める義妹セラフィナ。 「お姉様に虐げられてきました」と訴える彼女を庇い、王太子はエルシェナを悪女として断罪する。 けれど彼らは知らなかった。 王家の華やかな暮らしも、王太子の立場も、社交界での信用も、その多くがヴァルモン公爵家――そしてエルシェナの存在によって支えられていたことを。 静かに婚約破棄を受け入れたその日から、エルシェナはすべてを止める。 王宮に流れていた便宜も、信用も、優先も。 さらに継母イザベルの不正、義妹セラフィナの虚飾、王太子の浅はかさを、一つずつ白日のもとへ晒していく。 奪ったつもりでいた義妹も、捨てたつもりでいた王太子も、家を食い潰していた継母も―― やがて名誉も立場も未来も失い、二度と這い上がれない生き地獄へ落ちていく。 これは、すべてを奪われかけた本物の公爵令嬢が、 自分を踏みにじった者たちへ救済なき断罪を下す物語。

婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。 「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」 隣には涙を流す義妹ルミレア。 彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。 だが――王太子は知らなかった。 ヴァレリオン公爵家が 王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証―― 王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。 婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。 「では契約を終了いたします」 その瞬間、王国の歯車は止まり始める。 港は停止。 銀行は資金不足。 商人は取引停止。 そしてついに―― 王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。 「私は悪くない!」 「騙されたんだ!」 見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。 王太子、義妹、義父母。 すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。 「契約は終わりました」

【完結】私を捨てた国のその後を見守ってみた。

satomi
恋愛
侯爵令嬢のレナは公然の場でというか、卒業パーティーで王太子殿下イズライールに婚約破棄をされた挙句、王太子殿下は男爵令嬢のラーラと婚約を宣言。 殿下は陛下や王妃様がいないときを狙ったんでしょうね。 レナの父はアルロジラ王国の宰相です。実家にはレナの兄が4名いますがみんなそろいもそろって優秀。 長男は領地経営、次男は貿易商、3男は情報屋、4男は…オカマバー経営。 レナは殿下に愛想をつかして、アルロジラ王国の行く末を見守ろうと決意するのです。 次男監修により、国交の断絶しているエミューダ帝国にて。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

処理中です...