『婚約破棄はおいくら?』 ──婚約破棄はまず、精算からお願いしてもいいですか?

夢窓(ゆめまど)

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結婚は、ビジネス?

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エンディング

──王宮のバルコニー。
夜空に星々が瞬き、遠く祝宴の余韻が聞こえている。

キャスリンは扇子を閉じて胸に抱き、静かに言葉を紡いだ。

キャスリン
「結婚は、ビジネス。
だから契約書に縛られて、安心していた。
でも……愛はビジネスじゃない。

毎日を積み重ねること──
見えないけれど、何よりも重いもの。

そういう結婚こそが……幸せなのね」



アベルが隣で彼女の手を取り、サファイアが無邪気にその上に小さな手を重ねる。

アベル
「ならば、これから三人で学んでいこう。
契約ではなく、愛として」

サファイア
「うん! わたし、ずっと“おかあさま”と“おとうさま”がだいすき!」



キャスリンは涙ぐみながら二人を抱き寄せる。
その横顔は、かつての冷静な公爵令嬢ではなく──
“家族を愛する母”の柔らかなものだった。



夜風が三人の頬を撫で、王宮の空に新しい未来を告げる鐘が鳴り響いた。

──その夜。

サファイアはベッドでぐっすり眠りながら、小さな寝言をもらした。

サファイア(寝言)
「……ケーキ……いっぱい……おかあさま……」



キャスリンは思わず吹き出してしまう。
アベルが肩をすくめて微笑むと、キャスリンは扇子で口元を隠しながら言った。

キャスリン
「……ほんと、手のかかる娘と殿下ね。
私がいなければ、二人ともすぐ破産してしまうわ」

アベル(苦笑)
「……それでも、君に破産させられるなら本望だ」

キャスリンは真っ赤になり、枕で彼を軽く叩いた。



──夜風がカーテンを揺らし、家族の笑い声が小さく響いた。
契約を超えて、愛を知った家族の物語は、ここから始まっていく。


その後の家族

──季節は巡り、春。
王都の庭に咲くチューリップが、陽射しに揺れていた。

キャスリンは花壇にしゃがみ込み、土に手を入れている。
ドレスの裾を少し汚しながら、丁寧に苗を植える姿は、どこにでもいる母親のようだ。

キャスリン
「……お花はね、水より言葉よ。
“今日もきれいね”って言うと、ちゃんと咲くの」

後ろからのぞき込む小さな影。

サファイア
「ほんとに? じゃあ、“今日もきれいね、お花さん!”」

ぱっと笑うその顔は、すっかり王家の小さなプリンセスだった。



ベンチには、書類を抱えたアベル。
すっかり“家庭を持つ男”の顔になったが、時折キャスリンとサファイアの方を見ては、微笑んでしまう。

アベル
「……王宮の会計より、この二人の方がずっと難しいな」

執務長が小声で頷いた。

執務長
「ですが殿下、民の評判は上々です。“家族を持つ王”は、民に希望を与えると」

アベル
「希望、か。あの日、彼女に教わった“愛は毎日の積み重ね”が、ようやくわかった気がする」



その日の午後、家族三人でお茶会。
焼きたてのスコーンに苺ジャム、ミルクティーの香り。

サファイア
「ねぇ、おとうさま。おかあさまとけっこんしたら、いっしょに寝ていいの?」

キャスリンが盛大にむせる。

キャスリン
「ちょ、ちょっとサファイア! なにを──!」

アベル(笑いながら)
「もちろんだとも。家族だからね」

キャスリン(真っ赤になって)
「……もう、ほんとにあなたたち親子は!」



そんな笑い声が王宮に満ちていく。
以前は“契約”で結ばれた関係だった二人が、
いまは“愛”でひとつの家族になっていた。



──王都では、新しい噂が広まっている。

「王家には、いつも笑い声が聞こえる」
「あの冷たい公爵令嬢が、いまは一番優しい王妃様だって」



そして夜。
サファイアは小さな寝息を立てながら、両親の間で眠っている。
キャスリンはそっとアベルの肩にもたれ、ささやく。

キャスリン
「……ねぇ、契約書、もう要らないわね」

アベル
「うん。サインは済んでる。心に、ね」

カーテンの隙間から月光が差し込み、三人の手を照らした。

──それが、彼らの“本当の契約”だった。



ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!
本作は「婚約破棄ざまぁ×会計処理×愛の再構築」をテーマに書き進めました。

最初は数字と契約でしか語れなかったキャスリンが、
最後には“愛の重さ”を知り、家族を抱きしめるまで──
その変化を楽しんでいただけたなら嬉しいです。



次回作のお知らせ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
キャスリンたちの物語は、これでひと区切りです。

そして――新しい物語が始まっています。

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恋と癒しの“猫カフェざまぁ”、本日より公開です。

どちらの作品も、
少し不器用で、でもまっすぐに“幸せ”を掴もうとする人たちの物語です。
ぜひ読みに来てくださいね。


ブクマ・♡・コメントなどで応援してくださった皆さまに、
心からの感謝をこめて。




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