記憶のない彼女と運命の恋

冬花美優

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第1章 帝国編

7話 隠されていた帝国の真実

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エリスとケインの一件から、城内では家臣や重臣とマリンナと姫騎士隊長が今後の2人の処遇について議論していた。

謁見の間ではなく10人程度が座れる部屋で、天井にはシャンデリアが、壁には歴代の皇帝の絵が飾られていた。

家臣が重い口を開いた。

「今回の殿下の件は国家の安全のために機密事項にするべきだ」

すると全員が賛成した。

「次は殿下とエリス嬢についての処遇と今後の対応だ」

続けて姫騎士隊長が言った。

「今回の件は殿下が己の劣情に従って行った失態である、殿下のみだらな行為にエリス嬢は殿下が罪になる事を案じて耐えていた事を考慮すれば同じ女性としてエリス嬢は無実だ、むしろ辱められ精神的と身体的に傷を負ったのだぞ」

「し、しかし殿下のお気持ちがエリス様にご執心なのはエリス様の美貌が原因だろう。ならば殿下だけを責めるのでは腑に落ちない」

「それは間違っておるぞ!男が劣情に走ったときに女は為す術がないであろう!力の差は歴然だ!」

意見は半々に分かれていた。

そして睨みを利かせてマリンナが立ち上がって言った

「おまえたちは、ケインがどのようにしてエリスを辱めたのか見てないから客観的にしか物事が考えられないのよ」

するとマリンナは三日月の形をしたダイヤモンドのネックレスを取り出して皆に見せた

「このネックレスはエリスが身につけているネックレスだが、ケインに辱められた時にも毎晩、このネックレスをつけていた」

「失礼ながら王妃様、それが今なんの関係が?」

「このネックレスにはエリスの記憶を見る事ができるのよ、つまりケインがエリスを辱めていた時の映像が全て残っているのよ」

「部屋を暗くしなさい」

部屋の明かりが消されて、マリンナがネックレスに詠唱するとネックレスが輝いてケインがエリスを無理やり辱めた映像が鮮明に映し出された

「な……なんと……惨すぎるぞ」

家臣や重臣は血の気が引いた青ざめた顔をした

さらに女性従者はあまりの衝撃に失神してしまった

そして姫騎士隊長は言った

「ここまで辱められているのに尚、ケイン殿を気遣って優しく涙を浮かべながら説得しているのに……おのれ……殿下……もはや、見過ごすわけにはいかん!我ら姫騎士隊の名にかけて私が殿下を処罰する!」

鬼のような形相になった姫騎士隊長が涙を浮かべながら言った

「た、隊長!お待ちください!まだマリンナ様から命令はありません!今一度だけ耐えてください!隊長!」

姫騎士隊の1人が唇から血を流して身体を震わせて姫騎士隊長を制止した。彼女もよほどの怒りが満ちて唇を噛み締めて耐えたのだろう。

この場にいた全員、もはやケインを庇うものはいなかった。

殿下の肩を持っていた家臣や重臣は言った。

「我々の発言は失言でした。改めて撤回致します」

ガチャ

失礼します……

「だれだ!」

「おまえは!?」

「あなた、なぜここにきたの!」

現れたのは身体を震わせているエリスだった

「エリス嬢!まだお身体が……おまえたち!エリス様を支えろ!」

姫騎士隊長が姫騎士にエリスの身体を支えさせた

エリスは言った

「みなさん、マリンナ様、私からのお願いです……どうかケイン様には寛大な心で、どうか寛大な処遇を……お願いします……」

マリンナは言った

「エリス!あなたが……あなたがどれだけ惨い仕打ちをされて身体を貶められて心まで傷つけられた、あのバカを庇うの!目を覚ましなさい!」

マリンナも涙を流しながら言った

「おっしゃる通り怖かった」

ガチャ

「今度はだれだ!」

現れたのは、なんとケインだった

「殿下!!」

ケインは涙ぐんで震えるエリスを押し倒し足で踏んで言った

「痛っ、ケイン様、痛いです……」

「おまえが、どうせ私の処罰を厳しくしろと言ったのだろう!この反逆者め!」

するとケインの目の前にマリンナが立ってマリンナの腰に付いていた聖剣を抜刀してケインに向けた

「母上、なんのマネですか……母上まで反逆者の肩を持つのですか!」

「ケインよ、あなたはエリスが本当に父上を殺したと思ってるの?」

「思うもなにもこの女の記憶を見たものが全てでしょう!」

姫騎士隊長が口を開いて言った

「ケイン殿、お父上を殺めたのはエリス様ではありません」

「嘘を抜かすな!」

すると姫騎士隊長は自らの腰に身に付けている古い短剣を抜刀して見せた

「この短剣に見覚えはあるか?」

ケインは驚愕した。

「そ、その短剣はまさか……」

「そうです。皇帝陛下が自害する時の為に身につけていた短剣だ」

マリンナは号泣しながら言った

「やめなさい」

「すみません、マリンナ様……もはや隠す必要はないかと」

昔、皇帝の側近だった老人が言った

「その陛下の短剣は陛下が自害で使うと短剣が血だけ刃に残り、刃は錆びる代わりに陛下が自害された時の記憶が残される仕組みになってるはず……まさか……」

涙ぐむ姫騎士隊長が言った。

「そのまさかだ……ケイン殿も、この短剣の記憶をこの場で皆も心してみるがよい!」


短剣の記憶が鮮明に映し出された。



100年前……先の大戦。



戦いで荒れ果てた大地に2人の男がいた。


この記憶は女帝エリスが記憶を無くして100年後の未来の帝国に飛ばされた直後だった。


エリスと唇を交わして愛を誓った黒髪に赤い瞳の長身の男がいた。

そして刺された皇帝がいる。

「くっ……ルシアよ……ワシは愚かな家臣にそそのかされて赤い水を飲まされたのじゃ」

赤い水とは人の中の小さな劣情を高ぶらせ、本人の理性と意識をも劣情に支配されてしまう魔の水だ。

「やはりそうか……」

皇帝はルシアに涙で謝罪した。

「すまぬ、ルシア……おまえの大切な彼女を……もはやワシはこれで責任をとる……」

取り出したのは短剣だった

「ルシアよ、たのむ、その短剣でワシを人思いに……そして魔界の勝利として、彼女を……エリスを100年後に再び救ってくれ……」

ルシアは短剣を手にして皇帝に突きつけて言った。

「……さらばだ…」


「ルシア……辛い役目をすまぬ。そして……感謝する…どうか……世界に安寧を」



そして短剣の記憶は終わった。

「……あなた……っ…ううぅ……」

「っくっ……陛下……」

「そんな……このような事実だったとは」

そしてケインは目に涙を浮かべていた。

そのケインの顔に優しくエリスの温かい手を差し伸べた。

「ケイン様……私は……あなたは優しくて家族想いの優しい殿方だと信じていましたよ」

ケインはエリスの手を取りエリスに深々と土下座をして言った。

「エリス、すまない……わたしは……愛する人に……私の勝手な思い込みで……私は……うわぁぁぁ!」


その後、ケインの処罰は1年間の女性との接触禁止と1年間の王位権利の停止になった。

エリスは無罪となりエリスの屋敷は男子禁制となり、1年間の休息を与えた。


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