城好きのアンナ〜すべての城を制覇します〜

chui

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第19話 語る真実

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 ノノさんの言葉は、領主の胸を刺した。
 「私は領主として、民を守る責任を果たしていない」
 そう言うと、苦悩に満ちた表情を見せないよう顔を下げた。
 領主が、農民の子供にこの様な発言をするなんて思いもしなかったけど、ノノさんは特に驚いた表情をしてはいなかった。静かにに顔を上げるよう促した。
 顔を上げた領主の顔には苦悩だけではなく、怒りもはいっていた。
 「お二人は逃散(ちょうさん)という言葉を知っていますか」
 私は知らなかったけど、ノノさんは知っていた。逃散とは、重税に耐えかねた村人全員が、農地を投げ出し領地から逃げることだそうだ。
 今回のダスティン達の企みが成功裏に終わっていたら、村人の失踪は誘拐事件ではなく、逃散として処理されていたという。
 この逃散は10年に一度は起こっていて、1~3家族が逃げる欠落(かけおち)に至っては毎年起こっている。
 今回ダスティン達を捕まえたことで、大規模誘拐という犯罪が明るみに出て、これまでの逃散や欠落も、これに当てはまる可能性が出てきた。
 「私はこれまで、自分の未熟から領民が離れてしまったと思っていたけど、その中に誘拐が含まれていたなんて考えもしなかった」
 全部誘拐だった可能性だってあるよね。私はそう思ったけれど、口にしたのは別の言葉だった。
 「領主様、誘拐には教団が絡んでいます」
 私が唐突に放った言葉を、領主とロビンは理解できなかったみたい。お互いに顔を見合わせている。
 「急な発言で申しわけありません」
 「それは本当なの…ですか」
 領主が声を絞り出した。私は頷いて話しを続けた。
 「私共の村にいる、ウォルフガング・ハフナー神父が話してくれました。今回の事件、教団からの指示で老人と子供を教会に集めて置くようにとの指示があったそうです」
 「詳しく聞かせてほしい」
 領主は身を乗り出して詳細を求めてきたので、私はウォルフから聞いた話を伝えた。

 ・ムスカドとのいざこざを装って襲撃されるので、領主に助けを求めること。
 ・事が起こった時には教会に人を集めて、親と子を引き離しておくこと。
 ・上記準備が終わり次第ダスティンという者がリーベリの騎士として教会に入るので、その時までに神父は不在とすること。
 ・ダスティンは村人をムスカドへ輸送するので、その障害になるものは排除しておくこと。
 
 説明を終えたあと、しばらくは無言の時間が流れた。
 「神父はよく話してくれたね」
 沈黙を破ったのはロビンだった。彼にしてはめずらしく憤っているように見える。
 「あなたは助祭なのに教団を責めるのかい」
 「私はちゃんとしたいのです。誘拐なんてする教団に従属なんてできません」
 「だったらなんで教団を抜けないんだい?」
 私は教団のシンボルを出した。
 「これは、お守りです。私のような変な子供は、悪魔の子として処断される可能性があるので、神父が助祭として入信させてくれたのです」
 「保身の為に神に仕えているのかい!」
 「そんなに気に入らないのなら、村に帰ります」
 ノノさんだ。私の気持ちを代弁してくれたその声は大きいものだった。ロビンの鋭い視線がノノさんにむけられる。
 ノノさんにその目つきは頂けない。私とやり合うかい?
 「やめろロビン」
 制されたロビンの反応は素早かった。短く返事をし直立した。
 領主は部下の非礼を詫びた後で付け加えた。
 「ロビンの家は信仰が厚いのです。なので、いま彼の中で色々と処理できていないんだ。許してほしい」
 ロビンは坊っちゃんぽいからね。幼い頃からアルテナ教に染まり過ぎていているんだろう。
 そうなるとロビンは、領主、教団、王、このうち誰の命令を優先するんだろう?なんて意地の悪い疑問が湧いた。
 「貴重なお話をありがとう。その情報を元に調査をさせることにしよう」
 そう述べた後で夕食に招待された。
 ノノさんを見ると、目を輝かせている。だよね。私も楽しみ。それに、お腹が空くと機嫌が悪くなっちゃうからね。食べ物は大切だ。
 「ご招待ありがたくお受けいたします」
 領主はロビンにも付き合えと命令し、食事の用意を命じるため、自身で広間に降りて行った。
 「先程の粗相を許してほしい」
 ロビンが頭を下げた。
 「信じている大切なものを批判されたら、ああなります。真実とは言え宗教批判を唐突に始めたアンナちゃんが悪いんです」
 これは、喧嘩両成敗的なものかな。ノノさん、以後気をつけます。
 「ロビン様、配慮に欠ける話し方をしてしまい申しわけありませんでした。これからも仲良くしてくれますか?」
 私が握手を求めると、ロビンは微笑んだ。
 「本当にアンナさんは子供なのかい?」
 そう言って手を結んだ。そこにノノさんも手を乗せてきた。
 「私もよろしくお願いしますね」
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