貧乳世界の魔王が作った巨乳ハーレムに入ってしまった幼馴染を連れ戻すために、俺は異世界へ旅立つ!

栗栖蛍

文字の大きさ
31 / 171
4章 謎多き男たちと平凡な俺の、ふかーい関係。

31 安堵と不安と色仕掛けと。

しおりを挟む
 「ごめんな」と「無事で良かった」を何度も繰り返す。
 メルはそれに「うん」と「ううん」を重ねて、包帯だらけの俺の胸にぎゅっと抱きついてくれた。

 彼女を責めようなんて思っていない。
 ただ、俺がアホなことをして招いた結果で、メルが悲しむことが一番辛かった。

「メル……」
 
 謝罪を込めてもう一度彼女を抱き締めたところで、

「はい! じゃあこの辺で、感動の抱擁ほうようはおしまいよ」

 パンパンパンとチェリーが手を叩いて、その感動のシーンは強制終了となった。

「話し出したら長くなりそうだし、先にご飯にしましょうよ。もう、お互い敵じゃないって決めたんなら、難しいのは後よ。私、おなかペコペコなんだから」

「メシ?」

 大分現実的な話だ。
 けれど確かにお腹は空いている。もう窓の外は暗くなりかけているのに、俺は朝ごはんの途中にカーボに襲われてから、何も口にしてはいなかった。
 グルグルと鳴り出した腹を押さえてメルと顔を見合わせると、彼女は小さく笑顔を見せて俺の腕を離れた。

「メルは夕飯作るの手伝ってくれる?」
「はいっ」
「それなら、俺も手伝うぜ……ウッ」

 タタタッとチェリーに駆け寄るメルを追い掛けて俺も立ち上がるが、脚にかけた体重が全身に響いて、針を突き刺したような痛みが駆け抜けていく。

 「駄目よ、ユースケ」とメルにベッドへ押し戻され、俺は素直に従った。
 こんなやり取りまで懐かしいと思える。
 俺たちがいつも通りで居られるのは、チェリーのお陰だ。ここに彼が居てくれて本当に良かった。

「メルの言う通りよ。それに貴方じゃカーボをさばくことが出来ないでしょう?」
「えっ?」

 またカーボだと?
 またアイツを食べる事になるとは――いや、今日の夕飯が奴だってことを、俺は朝から知ってたはずだ。

「え、じゃないわよ。貴方たちが倒したんじゃない。あんなに大きくて驚いたけど、頑張って運んだのよ?」
「か、担いで?」
「貴方、私のこと超人みたいに言わないでくれる? 貴方と並べて、ちゃんと荷台で運んだわよ」

 今朝倒した巨大カーボは俺の身体より大きかったから現実的に考えればそうだろうが、チェリーならやりかねないとも思えてしまう。
 そうか、俺はアイツと一緒に運ばれてきたのか。

「チェリーさんは、動物さばくの平気なんですか?」
「私、学生の時スーパーの食肉のトコでバイトしてたから。魚はちょっと苦手なんだけど」

 もう、その女装がただの仮面にしか見えなくなってくる。
 リトも凄い人を連れてきたものだ。クラウは奴が男だって気付いているのだろうか?

   ☆
 一時間も経たないうちに、部屋にはいい匂いが漂ってきた。
 一人ベッドで休んでいると、トントンとドアがノックされる。メルかなと少しだけ緊張を走らせたが、投げキッスとともにチェリーが現れた。

「メルじゃなくて残念とか思ったでしょ」
「いえ、ホッとしました」
「まぁ、そうだと思ったから私が来たんだけど。メルからの差し入れよ」

 ちょっと待て。
 メルと二人きりの気まずさを回避できたことには礼を言うが、その手に持っているのはまさか。

 美味しそうな夕飯の匂いに、記憶にまだ新しい臭いが絡みつく。
 慌てて起き上がった俺の横に滑り込んできて、チェリーは手にしたマグカップを俺の口に寄せて来た。
 鼻をつく湯気からの悪臭に、ドロドロとよどんだ黒い液体。

 二度とこの世界で風邪を引かないと誓った俺が、同じ日にまたこれを飲む状況を強いられるなんて。

「俺、風邪はもう治ったと思うんですが」
「風邪? あのコ、これは万能薬だからって言ってたわよ? けど、貴方こんなの飲めるなんて偉いわね。一度飲んだことあるんでしょ?」

 あぁそうか。肝心なところの記憶が抜けていたようだ。
 この世界に居ると、風邪どころか弱っただけで、この薬を飲むというクエストが発生してしまうらしい。

「いえ、飲まされただけです……」
「あんな可愛い子に言われたら、断れないわよね」

 うふふ、と見透かした表情で微笑んで、チェリーは俺の手にそのカップを握らせた。

「じゃあ、今は私の為に飲んで」
「ええっ?」

 これ以上、チェリーの色気アピールはいらないから。
 俺は自分でも驚く程に呆気なくカップに口を付けて、その薬を飲み干したのだ。

「うぅ……」
「すごいわね、貴方」

 チェリーも目を丸くして、俺が差し出した空のカップを受け取った。
 あんなに嫌だったのに、飲んでみてやっぱり不味いと思えるのに、もう二度と飲みたくないという気持ちが薄らいでしまうのが怖い。

 頭を抱えて息を整える俺の背中をさすりながら、チェリーは雰囲気のある溜息を漏らしてその話をした。

「彼女、崖の上で泣いてたの」

 それは、俺が崖下で意識を失っている時の話だった。

「私は緋色の魔女の事は詳しく分からないけど、小さなあの子がボロボロの恰好で泣いてて、声を掛けたら貴方が落っこちたっていうからゼストを呼んだのよ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...