貧乳世界の魔王が作った巨乳ハーレムに入ってしまった幼馴染を連れ戻すために、俺は異世界へ旅立つ!

栗栖蛍

文字の大きさ
46 / 171
5章 ちょっと変わった酒場での、彼との出会い。

46 今夜、彼女と過ごす相手は

しおりを挟む
 ヒルドの負傷に駆け付けた治癒師ちゆしは、何とリトだった。

 ストレートロングの黒髪に隠れた貧乳も、小動物系の丸い目や眼鏡も記憶のままだ。
 そして、何といっても魔王親衛隊女子の制服だというハイレグが、もうこれ以上にないくらい俺の目を和ませた。

「ねぇ、ユースケ」

 メルの声に振り向いて、俺はギョッと目を見開いた。

「ユースケはやっぱりああいう服が好きなの?」

 メルの両手が足の付け根にあてがわれ、『コマネチ』ポーズを作っている。

 (だから! 可愛い女の子がそんなポーズをしちゃあいけない!!)

 俺は「ダメダメ」と小声で叫んで、両手でバツのポーズを示した。
 メルは良く分かっていないような顔で頷きながら、手を横に下ろす。俺はホッと息を吐いて、改めてリトに顔を向けた。

 今日は治癒師として来てくれたせいか、左腕に赤十字の腕章をしていた――いや、違うぞ。赤と白が反転した、何故かスイス国旗だ。

「魔法使いが『飛んで』来るとこって、初めて見たよ」

 この中じゃ一番一般人の部類だろうマスターのアイルが、目を丸くしている。

「はぁい、リト」
「あっ、チェリーさん! お久しぶりです」
「おととい会ってるけどね」

 そういえば、魔王の巨乳ハーレムメンバーに、とチェリーをこの世界に引き込んだのがリトだったはずだ。
 彼女はチェリーの横に居た俺に目を留めて、じっと覗き込んできた。前に会ったことを覚えていてくれたのだろうか。
 俺がぺこりと頭を下げると、リトはハッと目を広げて「あああっ!」と声を上げた。

「貴方は! 次元の間じげんのはざまで魔王様と一緒だった……ブースケ?」
「ブ? いや、そうじゃなくて」

 何とも嫌な感じに間違われている。

「ユースケよ、リト」

 メルが人差し指を立てて訂正すると、リトは「あ、そうでしたね」とあっさり納得した。

「ユースケさんでしたね。確か、魔王様の愛人の」
「ええっ、そうだったの?」
「断じてそうじゃありませんから!」

 初めて会った時もそうだったけれど、完璧にリトに誤解されている。
 チェリーまでも「だったら私でもいいんじゃない?」と俺をからかってきた。

「はっは。何だお前、そうだったのか。けど、俺は男に興味ないからな?」

 ゼストがキメ顔で言ってくるのを、ヒルドが冷たい視線で見つめている。
 わけの分からない冗談で、こじらせないで欲しい。

「先生とか、絶対ないですから! って言うか、リトさんに治してもらうために呼んだんじゃないんですか?」
「おぉ、そうだったな。リト、さっきユースケとそいつがジーマと戦って、怪我してんだ。診てもらってもいいか?」
「任せてください、ゼスト!」

 ピースサインでリトさんは敬礼の真似をしながら俺の所に歩み寄って来る。

「貴方の方が元気そうだから、先にやっちゃいますね。異世界から来た人がジーマと戦うなんて、ムチャなことしない方がいいですよ!」

 リトにたしなめられると、素直に「ごめんなさい」と謝れてしまう。
 「へぇ。アンタ異世界から来たの」と、アイルとヒルドが声を合わせるが、それほど驚いた様子は見せなかった。

「あ、言ったらマズかったですか?」
「この二人になら構わんだろ」

 ゼストは倒れていた椅子を起こして「座ってろ」と促した。平然としているように見えたヒルドだが、額にびっしょりと汗がにじんでいる。

「じっとしていて下さいね」

 リトは横に立って、俺の背中と胸を掌で挟んだ。
 うっすらと甘い匂いがする。彼女の手の温かさがジワリと伝わってきて、俺はドキドキする心臓の鼓動を必死に隠そうとしたが、この状況でそれは無謀というものだ。

「何してるんですか?」
「色んな流れを読み取っているんですよ。何となくですけどね」

 治癒師という割には、だいぶ抽象的だ。
 リトは胸に当てていた手を今度は俺の額に当てて、何やら小さく言葉を唱えた。

 魔法だろうと思って、俺は緊張を走らせる。
 目上に眩しさを感じてまぶたを閉じると、患部に熱を感じた。少し熱いと思える程で、反射的に彼女の手を逃れようと身体を引いたが、もう一方の彼女の手で強く引き戻された。

「駄目ですよ、すぐ終わりますから」

 彼女の息が耳に届いて、俺はぎゅうと全身に力を込める。
 数回大きく深呼吸したところで、額の熱は冷め、彼女の手が俺を離れた。

「もう大丈夫です」

 あまり実感はなかったが、メルが「ほんとだ、綺麗になってる」と俺の手に飛びついてきた。

「ありがとうございます」
「うん。それより――問題は貴方ですね」

 みんながリトの視線を追って、一斉にヒルドに向いた。

 椅子の背にぐったりと身体を預けて、荒い呼吸を繰り返すヒルド。
 顔もどこか青ざめて見える。
 ゼストは彼の横にリト用の椅子を並べた。

 リトはそっとヒルドの胸に触れて、「あぁ、こりゃ駄目ですね」と言い放つ。

「えっ……僕、死んじゃうの?」
「そんなことさせません。けど、放っておいたらそうなってしまうかもしれませんよ?」
「助けて……可愛い人」
「勿論です。でも、ちょっと時間が掛かりますね。このままここでやらせてもらっていいですか?」

 リトが振り返ると、アイルは「あぁ」と快くオーケーサインを手で示した。

「私の家はここじゃないし、勝手に使ってもらって構わないけど。二人きりで泊るの?」
「はい。朝までには治して見せます!」

 気合を込めて、リトはガッツポーズをして見せる。

 この状況で不謹慎だと分かってはいるが、ハイレグのリトと一夜を過ごすなんて、何て羨ましいんだろうと思ってしまう。
 もやもやと嫉妬が込み上げてくるが、ヒルドが力なく「お願いします」と謙虚に呟いているのを見たら、感情をあらわにするわけにもいかなかった。

「早く良くなるといいな」

 これは俺の本性だ。俺もここに残りたいとか言わないんだから――。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...