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Episode4 京子
158 知る由もなかった
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九州行きの提案を伝えて、一番喜んだのは他でもなく修司本人だった。
「本当ですか? 俺行きますよ。何なら見学なんかすっ飛ばして、明日からでも構いません」
「そんなに焦らなくていいよ。新人が九州で訓練だなんて初めての事だし、一回行ってこよう? 私も同行するから」
「京子さんと二人でって事ですか?」
修司の視線が、チラと京子の背後に向く。意見を求めるような眼差しに、綾斗は「仕事だからね」と真顔で答えた。
「私とじゃ不安なの?」
「いえ、京子さんと二人でって初めてだなと思って」
照れる修司に、京子は「仕事だからね」と綾斗の言葉を繰り返した。
彼に同行するのは佳祐の本音が知りたいという理由からだが、敢えて口にはしなかった。京子の中にある佳祐への警戒心の事も伝えてはいない。下手に不安を煽れば美弦にも飛び火しそうだと思ったからだ。
やよいの通夜の時、久志は佳祐を犯人じゃないかと疑っていた。逆に佳祐も久志に対して怪しむ素振りを見せていた。
未だに真相は掴めないが、あの時は急な報せに二人が取り乱しただけだと思いたい。
だから、どうしても佳祐本人と話がしたかった。
四月から出発を二ヶ月以上伸ばされて、修司は焦っている。久志はまだ受け入れられる状態ではないと言っていた。
佳祐の提案をマサが了承したとなれば、あと少しだけ不安要素を減らすことが出来ればすぐにでも修司を送り出してあげたいと思う。
☆
「くれぐれも気を付けて下さいね」
「他の支部に行くだけだよ。出張なんていつものことでしょ? 今回は観光みたいなものだし、二泊なんてあっという間なんだから」
福岡へは羽田から飛行機を使う。
急な佳祐の提案だったが、飛行機のチケットも難なくとれて二日後の金曜には出発となった。宿泊には支部のゲストルームを使う予定だ。
空港のロビーまで見送りに来た二人に、京子と修司は「行ってきます」と声を揃える。
「一応仕事なんですから、二人とも浮かれないように」
「浮かれてないよ。一応、私はボディーガードみたいな役目だと思ってる」
「無茶はしない。いいですね?」
「任せて」
バンと自分の胸を叩く京子に、綾斗は苦い顔を崩さない。
仕事だからと計画を進めてはみたものの、彼の心配は尽きないようだ。
綾斗の隣で黙る美弦もまた不満気に修司を睨みつけていた。
「美弦もそんな顔しないの」
「私はこれが普通なんです。修司には訓練ちゃんと頑張って欲しいし」
「そうだね」と京子は頷いた。
修司も美弦も思いは一緒だ。
「今回の件は時期尚早って訳じゃないし、私はいいタイミングだと思うよ」
この佳祐の提案が、二人やアルガスにとって好機なのか──それは分からないけれど。
「とにかく二人とも無事に帰って来る事。佳祐さんにも宜しく伝えて下さい」
「はぁぃ。じゃあ、ちゃんと仕事してくるね」
修司たちの手前明るく振る舞ってはいるが、蟠る不安は考えているよりも重く、胸の中に渦を巻いている。
けれど京子はそれを振り切るように残る二人へ手を振った。
この旅が最悪の結末を迎える事になるなど、知る由もなかった。
「本当ですか? 俺行きますよ。何なら見学なんかすっ飛ばして、明日からでも構いません」
「そんなに焦らなくていいよ。新人が九州で訓練だなんて初めての事だし、一回行ってこよう? 私も同行するから」
「京子さんと二人でって事ですか?」
修司の視線が、チラと京子の背後に向く。意見を求めるような眼差しに、綾斗は「仕事だからね」と真顔で答えた。
「私とじゃ不安なの?」
「いえ、京子さんと二人でって初めてだなと思って」
照れる修司に、京子は「仕事だからね」と綾斗の言葉を繰り返した。
彼に同行するのは佳祐の本音が知りたいという理由からだが、敢えて口にはしなかった。京子の中にある佳祐への警戒心の事も伝えてはいない。下手に不安を煽れば美弦にも飛び火しそうだと思ったからだ。
やよいの通夜の時、久志は佳祐を犯人じゃないかと疑っていた。逆に佳祐も久志に対して怪しむ素振りを見せていた。
未だに真相は掴めないが、あの時は急な報せに二人が取り乱しただけだと思いたい。
だから、どうしても佳祐本人と話がしたかった。
四月から出発を二ヶ月以上伸ばされて、修司は焦っている。久志はまだ受け入れられる状態ではないと言っていた。
佳祐の提案をマサが了承したとなれば、あと少しだけ不安要素を減らすことが出来ればすぐにでも修司を送り出してあげたいと思う。
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「くれぐれも気を付けて下さいね」
「他の支部に行くだけだよ。出張なんていつものことでしょ? 今回は観光みたいなものだし、二泊なんてあっという間なんだから」
福岡へは羽田から飛行機を使う。
急な佳祐の提案だったが、飛行機のチケットも難なくとれて二日後の金曜には出発となった。宿泊には支部のゲストルームを使う予定だ。
空港のロビーまで見送りに来た二人に、京子と修司は「行ってきます」と声を揃える。
「一応仕事なんですから、二人とも浮かれないように」
「浮かれてないよ。一応、私はボディーガードみたいな役目だと思ってる」
「無茶はしない。いいですね?」
「任せて」
バンと自分の胸を叩く京子に、綾斗は苦い顔を崩さない。
仕事だからと計画を進めてはみたものの、彼の心配は尽きないようだ。
綾斗の隣で黙る美弦もまた不満気に修司を睨みつけていた。
「美弦もそんな顔しないの」
「私はこれが普通なんです。修司には訓練ちゃんと頑張って欲しいし」
「そうだね」と京子は頷いた。
修司も美弦も思いは一緒だ。
「今回の件は時期尚早って訳じゃないし、私はいいタイミングだと思うよ」
この佳祐の提案が、二人やアルガスにとって好機なのか──それは分からないけれど。
「とにかく二人とも無事に帰って来る事。佳祐さんにも宜しく伝えて下さい」
「はぁぃ。じゃあ、ちゃんと仕事してくるね」
修司たちの手前明るく振る舞ってはいるが、蟠る不安は考えているよりも重く、胸の中に渦を巻いている。
けれど京子はそれを振り切るように残る二人へ手を振った。
この旅が最悪の結末を迎える事になるなど、知る由もなかった。
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