未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第101話 行こう!ふたりを助けに。

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、突如現れた巨大戦艦を前に、巨大な人型機体の立体映像投影という、無茶な手にでてしまう。
 生死の狭間から帰還したマイは、ユアとメドーラの苦戦を知る。
 その苦戦の元になったのは、なんと、マイが戯れに作ったふたりの等身大の立体映像だった。
 責任を感じたマイは、自分がまだ本調子ではない事を知りながら、ふたりの苦戦する、北部戦線を目指すのだった。


 元気にメディカルルームを飛び出したマイ。
「はあはあ。」
 扉が閉まった瞬間、マイは呼吸を乱す。
 マイはまだ、本調子ではなかった。
 アイに心配させたくない思いと、メドーラとユアに対する責任感とで、そんな身体を動かしていた。

「ちょっと、不自然だったかな。」
 マイはそうつぶやきながら、戦闘機のある格納庫に向かう。
 そう、パートナーのサポートAIであるアイも、専用のカプセルへ向かう。
 つまり、メディカルルームを出るのは、ふたりとも一緒。
 別々に出るのも、必然性はない。
 マイは、アイに心配させたくなかったのだ。

 そんなマイは、気づかない。
 なんでアイが、一緒に出ようとしなかったのかを。

 マイが格納庫に着くと、機体の修理を終えたジョーが、一服してた。
「おお、マイ。意識が戻ったか。」
 ジョーはマイの帰還を、普通に喜ぶ。
 だが今のマイに、ジョーの相手をする余裕はない。
「ジョー、機体の整備は終わってる?」
「そんなの、とっくよ。」
 ジョーはニヤリと、右手の親指を立てる。
「そう、ありがと。」
 マイは一言礼を言うと、戦闘機に乗り込もうとする。

「ちょ、待てよ。」
 ジョーはあゆみ出したマイの右腕をつかむ。
「え?」
 マイはバランスを崩し、ジョーの身体に寄りかかる。
 ジョーはマイの右肘をつかんだまま、マイの左肩に手を置く。
「おまえ、まだ休んでないと駄目じゃんか。」
「そう、ね。」
 マイはジョーの優しい言葉に、どこか安心する。
 左肩に置かれたジョーの手に、マイは自分の右手を置いて、首もそちらへと傾ける。
「今のおまえを、出撃なんてさせられないぞ。」
「そんな。」
 マイはその言葉を口にして、今の自分の体勢にハッとする。

 なんでジョーにしなだれてんの?
「ちょ、離れてよ。」
 マイはジョーから離れようとするが、ジョーはマイの右肘をつかんだまま、離さない。
「離してよ。メドーラとユアが、大変なんだから。」
 マイは右肘をつかんだジョーの右手をはがそうと、もがく。
 左手で、ジョーの右手の指を一本ずつはがそうとするが、びくともしない。
「メドーラとユアが、どうかしたのか?」
「僕の助けを、待ってるんだよ。」
「何?」

 ジョーの右手をふりほどこうと、悪戦苦闘するマイを尻目に、ジョーの左脚の横に、円柱状の整備ロボットが現れる。
 膝より少し高い位置の整備ロボットの頭に、ジョーは左手をそえる。
「なるほど、大体分かった。」
 ジョーは整備ロボットから、現状の情報を読み取った。

「分かったなら、離しなさいよ。」
 マイはまだ、ジョーの手をふりほどこうと、四苦八苦中。
「マイ!」
 ジョーはマイの右肘を離すと、そのままマイを抱きしめる。
「何するのよ、離れてよ!」
 マイはジョーの身体を突き飛ばそうとするが、ジョーの身体は、びくともしない。
 ジョーの腕の中で、もがくマイ。
「俺をふりほどけないほど、弱ってんだな。」
 ジョーはマイの耳元でつぶやく。
「だから、なんなのよ。メドーラとユアが待ってるの。悪ふざけはやめて。」
 なおも、マイはもがき続ける。
「今のおまえが行っても、助けにならないんだよ!」
 ジョーのその言葉が、マイの心を挫く。

「じゃあ、僕は、どうすればいいのよ。」
 抵抗をやめたマイの瞳から涙がこぼれる。
「マイ、十分、いや、五分だ。高速睡眠をとってこい。」
 ジョーはマイから離れると、マイに告げる。
「五分あれば、六時間分の睡眠がとれる。今より、マシになる。」
「でも、メドーラとユアが。」
「バカ野郎!」
 マイの反論に、ジョーは思わず怒鳴る。
「おまえは、あのふたりを信じられないのか?
 五分や十分、あのふたりなら、持ちこたえてくれる!」
「うん。」
 マイはうつむいたまま、力なく答える。
「分かったなら、休んでこい。」

 ジョーが指を鳴らすと、格納庫の空間に扉が現れる。
 マイの部屋の扉だった。
 ジョーは、この区画内の空間を、自由に作り変える権限を持っていた。
 マイはその扉をくぐると、きっかり五分後、戻ってきた。

「よく休めたようだな。」
 ジョーが指を鳴らすと、格納庫の空間から、マイの部屋の扉が消える。
 ジョーの言葉に、マイはうなずく。
「そっか。」
 ジョーはいきなり、マイを抱きしめる。
 マイは反射的に、ジョーを突き飛ばす。
 ジョーは三歩ほど、後ろにさがる。
「本調子とは言えないが、ちょっとはマシになったな。」
 マイはニヤリとうなずく。

「出撃の前に、二、三、言っとく事がある。」
「手短にお願い。」
 マイの出撃に、文句も無くなったジョーは、マイに伝えなくてはならない事があった。
 これはサポートAIのアイの役目とも思えるが、今のアイに課すのは、少し酷だった。

「今のおまえの魂は、脱出用システムに耐えられない。」
「死ななければ、いいだけでしょ。」
 ジョーの言葉に、マイは即答する。
 今は一刻も早く、メドーラとユアを助けに行きたい。
 マイはジョーの次の言葉を待つ。
「あと、あの人型機体の投影は、禁止な。」
「え?」
 ジョーのその言葉に、マイのポーカーフェイスが崩れる。
「あれ使っちゃ駄目なの?」
 人型機体の投影は、巨大戦艦をも撃ち破る、強力な武器だ。
 その反動で、マイも生死の狭間を彷徨ったのだが。

「おまえは、アイを壊すつもりか?」
「え?」
 ジョーの言葉は、意外だった。
 マイの事ではなく、アイの事を言っている。
「アイの演算能力を、はるかに超えてるんだよ。」
 ジョーは身体を大の字にする。
 マイが巨大戦艦を落とした時の、マイが投影した人型機体のポーズだ。
「あの時は、動きが少なかったから良かったものの、もっと動いてたら、アイは壊れてたからな。」
 ジョーは大の字にした身体を左右にねじったり、その場で足踏みしてみせる。
「そっか、アイも危なかったんだ。」
 マイはその可能性に、初めて気づいた。
 そして、アイが無事な事に、ホッとする。
 だけど、人型機体の投影は使えない。
 マイは気落ちする。

「三分だ。」
「え?」
 気落ちするマイを見て、ジョーは指を三本立てる。
「投影する人型機体の大きさを、メドーラ達の人型機体と同じにすれば、三分なら耐えられる。」
 ジョーの言葉に、マイの表情も明るくなる。
「ただし、一度使ったら、二十五時間のインターバルが必用だ。」
 その言葉に、マイの表情も沈む。
「しょうがないだろ。」
 そんなマイを見て、ジョーも弁明する。
「機体の問題なら、俺が整備すれば、ゼロに出来る。
 だけどこれは、サポートAIの問題なんだ。
 俺にも、どうにも出来ん。」
 その言葉を聞いて、マイは思った。

「これは、僕の問題だよ。」

 そう、これは機体の問題でもなく、アイの問題でもない。
 全ては、マイ自身の問題だったのだ。
 マイのふっきれた様な顔を見て、ジョーも満足気にうなずく。
「よし、今のおまえなら、大丈夫だな。行ってこい。」
「はい!」

 マイは戦闘機に乗り込むと、宇宙ステーションを後にした。
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