未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

文字の大きさ
178 / 215
地球へ

第178話 夢の話しをしよう

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 マイがリムの教え子達と対戦し、王狼機を呼んだ頃、マインが目を覚ました。
 マインが動くのは、いつ以来だろうか。
 紫龍ポジションだと思われたマインも、存外邪武ポジションだった。
 これではこのお話しがアニメ化した時、マインの声優さんに申し訳ない。
 一応物語の中核を成す重要キャラなのに、長期間出番がないのだから。
 いや、回想シーンの体で、色々監督さんがぶち込んでくれるかもしれない。
 そんなマインは、何故かマイを恐れている。
 液体漬けになっている間、マインに何があったのだろうか。


 液体漬けの間、マインは夢を見ていた。
 宇宙空間を六角形の編隊を組んで飛ぶ、六機の戦闘機があった。

「みんなで出撃なんて、久しぶりね。」
 六角形の右前方を飛ぶケイが、そう声をかける。
「調子乗らないでよ、ケイ。相手は強敵なんだから。」
 六角形の左前方を飛ぶユアは、はしゃぐケイを注意する。
「いやあ、私はあなたの方が心配なんだけど。」
 とケイは言い返す。
「ちょっと、それどう言う意味?」
 ユアもキツく聞き返す。

「はいはい、ふたりともはしゃがないで。」
 六角形の先頭を飛ぶリムが、ふたりをたしなめる。
「はしゃいでないわよ。」
 ユアは反論する。
「ユアがなんか絡んできただけよ。」
 とケイがはぐらかす。
「何ですってぇ。」
 とユアも言い返す。
「はあ、チームワーク大丈夫かな。」
 リムはちょっと不安になる。

「ははは、前列の三人、仲がいいね。」
 六角形の右後方を飛ぶマイが、前列の三人を見てひと言。
「あれ、仲がいいって言うのかな。」
 六角形の左後方を飛ぶマインも、マイに対してひと言。
「それにしても。」
 マインは六角形の後方の機体に注意を向ける。
「何よ。私が居ればあなた達は安泰でしょ。」
 六角形の後方を飛ぶのは、何故かメドーだった。
「何であなたがここに居るのよ。」
「ちょっとマイン、メドーラも立派な仲間でしょ。」
 マインを注意するマイの言葉に、幼女だったメドーも、23歳くらいのメドーラに姿を変える。
「任せてください、マイお姉さま。」

 戦闘は激戦を極めた。
 ユアとケイは、早々に落とされた。
 近くの小惑星に不時着したリムは、味方側の攻撃で、小惑星ごと爆散。
 リムの安否は不明。
 マイとメドーラは行方不明。
 この戦場に残るチームメンバーは、マインだけだった。

 そんなマインも、ピンチに陥いる。
 マインのピンチを救ったのは、何処からともなく現れたマイだった。
「マイン、撤退しましょう!」
 マイは撤退を提言。
「その方がよさそうね。」
 マインも撤退に同意する。

 宇宙ステーションに戻って来れたのは、マイとマインだけだった。
 メドーラは帰って来なかった。

「私達だけでも、帰ってこれてよかったわ。」
 戦闘機を降りたマイとマイン。
 マイはそう言って、マインに右手を伸ばす。
「そうね。」
 と言いながら、マインは違和感を感じる。
 マイは、自分達の無事より、帰らぬ仲間を嘆くタイプ。
 そんなマイは、マインに右手を伸ばしながら、左手でゴツいヘルメットを脱ぐ。

 そこに現れたのは、マイではなく、見知らぬおっさん!
 三十代半ばにも、下手すれば四十代半ばにも見えるこのおっさん!

「どうしたの、マイン?」
 このおっさんは、普通にマインに話しかけてくる。
「マイ。」
 マインは思わず後ずさる。
「え、なに?」
 マイと呼ばれて、おっさんは一歩前進。
 マインの全身の毛が逆立つ。

 マイの立派だった胸は引っ込み、その分お腹が出っ張っている。
 そして、マイの股間には、女性には無い膨らみが!!

「いやーー、来ないでぇ!」
 マインは目を閉じて叫ぶ。
「どうしたの、マイン!」
 マイから変化したおっさんは、両手でマインの両肩を掴む!
「ひ、いやあ!」
 ピッツオーン!
 マインはソウルブレイドを光線銃に展開し、おっさんの顔面を撃つ。
 おっさんが後ろに倒れると、場面が変わる。


 マインはどこまでも続く廊下を歩いている。
 この先に何があるのか、何が目的なのか。
 マインには分からない。
「待ってぇ。」
 その声にマインは振り返る。
 追いかけて来たのは、マイだった。
 マインは、さっきおっさんだったマイの事を、覚えていない。
「先に行くなんて、ずるいよ。」
「ご、ごめんね、マイ。」
 そしてふたりは、手を繋いで歩き出す。
 マインの左手と、マイの右手。

 そのまま無言で歩き続けるふたり。
 マインは違和感を感じる。
 マイは、どちらかと言うと内向的なタイプだ。
 しかし好奇心旺盛なタイプでもあり、こんな時はいつも、マインを質問攻めにするものだった。
 それなのに、今回はそれが、一切無い。

「マイ?」
 マインは不安になる。
「なあに、マイン。」
「!」
 答えるマイの声は、いつものマイの声ではなかった!
 そして手を握るマイの手も、違うモノに変化するのを感じる!
 マインは恐る恐るマイを見る。
 マイはなんと、さっき見たおっさん!
「いやああ!」
 ブオン!
 マインはソウルブレイドで剣を展開させると、このおっさんを斬り裂いた!
 倒れるおっさん。
 場面は暗い何処かに切り替わる。


「何なのよ!ほんとに、何なのよ!」
 マインはマイと手を繋いだ左手を、何度も何度も右腕に擦り付ける。
 しかしおっさんと繋いだ手の感覚は、拭い去れない。
「何なのよ、何なのよ!」
 いつしかマインは、泣いていた。

 本当は分かってるんでしょ。
「分からないわよ!」
 何処からともなく聞こえた声に、マインは反発する。

 本当に分からないの?
「分かる訳ないでしょ!」

 ふーん、マイに違和感感じた事、無かったとは言わせないよ?
「違和感?それは、」
 その謎の声の言葉に、マインの左手を右腕に擦り付ける動きが止まる。

 マイに違和感。
 それはマイがマインの部屋にお泊りした時、マインはひしひしと感じた。
 マイは本当は、男なのではないのかと。
 しかし、その日を境に、マイから男を感じる事は少なくなっていった。

 実際、召喚者のアバター体は、その召喚者の魂が、23歳当時の姿をしているという。
 マインの場合、23歳の自分と、あまり変わりは無かった。
 左目の上の方にあった左額の火傷の痕が無くなってる事。
 ほとんど視力を失ってた左目が、ばっちり見える事。
 髪の毛で左目を隠してたが、そんな必要は無くなってた事。
 ショートカットだった髪の毛が、腰くらいまであるロングになってる事。
 そこが違うくらいだった。

 マインが普通に成長していれば、このアバター体の姿になってたのかもしれない。
 もしかしたらマイも、同じなのかもしれない。
 ならばマイは、性転換でもしたのだろうか?

「ねえ、マイってお、男なの?」
 マインは謎の声に聞いてみる。

 さあ?
 それは自分で確かめてみて。
 謎の声は、答えをはぐらかす。

 その頃マインは、どこか意識が遠のくのを感じる。
 夢の空間を維持する精神力が、欠けていくように。
 それは、マインの目覚めが近い事を意味している。
 つか、起きる気があれば、今なら起きれる。
「あ、あなたは誰なの?」
 夢の空間が崩壊しだす中、マインは一番気になった質問をする。

 私は、

 マインの夢の空間は完全に崩壊した。
 お目覚め状態になったマインは、目を閉じたまま、今の夢の記憶を遡る。
 すぐ思い返さないと、完全に忘れてしまうからだ。
 しかし夢の思い返しは、頭痛という拒絶反応に阻まれる。
 これ以上眠っていられなくなったマインは、ようやく眼を開けた。


 ここは、マイ以外は来られない場所。
 まさかマイ以外が迷い込むなんて、思いもしなかった。
 マインの居なくなった謎空間で、謎の声がつぶやいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...