未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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地球へ

第203話 お着替えステッキ再び

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 この時代に召喚されたマイのクローンであるベータ。
 彼は先に創られたアルファとの戦闘を強いられる。
 睡眠を続け、夢の世界の住人であるベータは、自らの身体を人質にとられてしまう。
 集団無意識に潜れるベータは、そこを通じてアルファと話し合う。
 アルファは、ベータの現状に同情する。
 そして、召喚者達との戦闘が、物足りなかった事も事実。
 アルファは、自分と互角な相手と戦ってみたくなっていた。
 対してベータは、アルファみたいな戦闘経験もなく、戦闘に興味も無かった。
 しかし身体を人質にとられてる事もあり、ベータはアルファの説得に応じる。
 ド派手に決めるぜ!
 とはりきってみたものの、アルファはクローン軍団を擁するが、ベータは基本ひとりである。
 そんなベータは、召喚者達が遺していった大量のアバター体を使った。
 アバター体には召喚者の残留思念が残っていた。
 ベータは集団無意識を通じ、召喚者の残留思念に介入して、アバター体に命令を下す。
 この残留思念のおかげで、ベータの命令も最低限で済み、大量のアバター体を動かす事が出来た。
 ここに、アルファ対ベータの、一大決戦が始まる。


 列車から降りてくる、マイとアイ。
 マイの顔つきは、列車の中にいた時とは、別人になっていた。
「ふ。」
 そんなマイを見て、ミサは目を閉じてニヤける。
「吹っ切れたようね、マイ。」
 マインは明るく話しかける。
「ええ、心配かけて、ごめんね。」
 マイはそう言って、とびっきりの笑顔を見せる。
「してないわよ、心配なんて。」
 そんなマイを見て、マインはくすりと笑う。

 マイは、アルファと会うのが怖かった。
 地球を支配する、自分のクローン。
 それは最早、自分とは別人であり、自分以上の存在である。
 そんなアルファを相手に、何が出来るのか?
 しかしアイの話しから、アルファもベータも、根元的には同じ、自分のクローンである事を知る。
 この時代の人類達の、言いなりにはなりたくないだけだったのだ。
 そんなアルファに、マイは会ってみたくなった。

「それより、急ぎましょう。」
 マイの復調を喜ぶふたりを、アイがせかす。
 マイもマインも、アイの発言の意図が分からず、困惑の表情を浮かべる。
「ジョーが待っている。
 急ぐぞ、エスの53区画へ。」
 そんなふたりに、ミサはアイの発言を補足する。

「あー、そう言えば。」
 マインは思い出す。
 数話前、そんな事があった事を。
「えー、でも、今さらどーでもよくない?」
 マイはジョーとの会見を拒む。
 数話前の事だが、ここまで書き上げるのに、数日かかっている。
 作者的にも、どーでもよくなってきた。

「あら、あなたが言い出したんじゃない。
 なんで僕のアバター体は、女性型なんだ、って。」
 マインはマイの発言を持ち出す。
「あの時はそうだったけど、もうどーでもよくない?そんな事。」
「私は知りたいのよ!」
 その理由がどうでもよくなってきたマイに対して、マインは思わず叫ぶ。
 いきなり叫ぶマインに、他の三人は驚く。
 そんな三人の視線に気づき、マインは恥ずかしくなる。
「だ、だって、知りたいじゃない、ほんとの事。」
 マインは消え入る様な声で、反復する。

「そうだね、じゃあ急ご。」
 マイはいい表情で、マインに右手を差し伸べる。
「な、何よその言い方。バカにしてない?」
 マインは照れながら、マイの右手を拒む。
「あはは、してないって。ほら、急ご。」
 と言ってマイは駅のホームを走りだす。
「ま、待ちなさい、マイー。」
 マインもマイの後を追って、走りだす。

「吹っ切れたようだな。」
 そんなマイを見て、ミサは言う。
「強がってるだけ、かもしれないわ。」
 とアイが返す。
「強がりか?あれ。」
「多分、ね。」
 アイに言われ、ミサはもう一度マイを見る。
 確かに強がりにも見えるが、素の様にも見える。

 アイとミサも、駅舎の入り口へと歩き出す。
「マイもアルファに会ってみたいと思ってるのも事実。
 でも、アルファを恐れてるのも、事実よ。」
 アイは話しを続ける。
「そっか。相手は地球を支配してるんだよな。
 自分のクローンとは言え、そりゃ怖いよな。」

 駅舎の入り口には、転移装置があった。
「遅いよー、ふたりとも。」
 マイは後から来るアイとミサに、手を振る。
 そのマイの横で、マインは背を向けてふくれている。
「悪いなー、おまえ達。」
 ミサも手を振って応える。

「さて、行き先はエスの53区画か。」
 ミサは転移装置の行き先をセットする。
 マイ達四人は、エスの53区画へと転送される。

「ここがエスの53区画。」
 そこには、21世紀末の街並みが広がっていた。
 西暦2300年から召喚されたマインには、どこかノスタルジーを感じる。
 西暦2020年頃から召喚されたマイには、発達した大都会の片隅に見えた。
 その街並みは、マイの時代と大きく変わらない。
 ここから数年もしたら、子守用ロボットが登場するとは思えなかった。
 そう、個人で所持するのはどうかと思われる道具や、犯罪以外の使い道が分からない道具を、四次元空間に収納するロボット。
 本当に2112年には、そんなロボットが作られるようになるのだろうか。
 まあ、それを言ったら、21世紀の自動車にはタイヤが無く、チューブ状の道路の中を走ってると、思われてたもんだ。

「さて、おまえらのその格好は、ここでは目立つから、早く着替えろや。」
 ミサは唐突に言い出した。
 マイもマインも、戦闘機用のボディスーツを着用している。
 どうやって脱ぐのか、そもそも脱げるのか分からないボディスーツを。
 そしてサポートAIのふたりは、グラマラスなボディを簡易ドレスで包む。
 これも目立つ格好だが、どの時代でも、普通に居てもおかしくはない格好とも言える。

 マイとマインは、マジカルポシェットからお着替えステッキを取り出す。
 ふたりは顔を赤くして、そのまま固まる。
「マイン、なんで使わないの?」
「そう言うマイこそ。」
「早くしなさい。」
 なぜか固まるふたりを、アイが急かす。
 アイはその理由を、知っているのだが。

 意を決して、ふたりはお着替えステッキを使う。
「ピピルンピピルン、プリリンルン。
 パパレンパパレン、ドレミンルン!
 アダルトタッチで、この街のお姉さんになれー。」
「メタモルオーロラウエーブ。
 ビートアップモジュレーション!」
 マイはステッキを振り回し、マインはステッキを振りかざす。

 マイはその場で右脚を軸に回転し始め、ボディスーツが原子分解される。
 そして原子分解されたボディスーツが、装いも新たに再結晶される。
 マインのボディスーツは白っぽいモヤに姿を変える。
 ボディのモヤがポンと弾け、新たな服装が露わになる。
 そしてマインは踊る様に動く。
 それに合わせて右手、左手、両脚の順にモヤは弾け、マインは新たな服装にお着替えする。
 最後に髪飾りが現れ、マインは弾ける様な笑顔をみせる。
「装いも新たに、マイン見参!」
 マインはポーズを決める。

「ちょ、ちょっと、何よそれ。」
 マイは懸命に笑いをこらえる。
「そ、そう言うマイだって、どうなのよ!」
 マインは顔を赤くして、思わず叫ぶ。

 お着替えステッキは、ただ振るだけで効果を発揮する。
 だけど一番最初に使ったやり方で固定される。
「もう、ミサのせいだからね。」
 マインは今度はミサを責める。
「悪い悪い、おまえがそんな使い方をするとは、思わなかったからな。」
 ミサも笑いをこらえている。
 アイは目をそらして、笑いをこらえながら震えている。
 初めてお着替えステッキを渡された時、マインは目を輝かせて、上記のお着替えシーンを使った。
 まさか、これ以降もこのやり方で固定されるとも知らずに。

「さ、そんな事より、急ぎましょう。
 ジョーが待ちくたびれているわ。」
 笑いをこらえきったアイは、他の三人にそう告げる。
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