3 / 10
第3話 ゲートの外へ
しおりを挟む
魔王が勇者に討たれてから、十年が過ぎた。
レウスも十歳になっていた。
五年前にレウスはドレイクに野獣の家畜化を提案したが、その計画はすぐに頓挫した。
獣を手元で育てるより、育った獣を狩る方が、数段楽だった。
だから村の周りの、獣の棲息分布の把握に努めた。
村人の食糧となる獣を狩る肉食の獣は、徹底的に駆除された。
それで充分だった。
レウスの母のユリアは、村人達との交流を最低限に留めた。
しかし息子のレウスは違った。
五年前のドレイクとの一件から、レウスはよくドレイクとからむようになり、村の他の子供達ともからむようになった。
レウスが村のガキ大将になるのに、そんなに時間はかからなかった。
ユリアはレウスに棒術、槍術、剣術、体術をたたき込んだ。
レウスは修得したそれらで、村の子供達と戯れた。
ユリアはレウスに、読み書き計算も教えたが、魔術を教えられない事を悩んでいた。
ユリアは少ししか魔法を使えなかった。
この村にも、魔法に長けた者はいない。
「え、ゲートの外に行く?」
レウスの言葉に、ドレイクは思わず声をあげる。
声がでかいと、レウスは注意する。
ここは魔界。
ゲートの向こうは人間界。
魔王がいた頃は閉じてたゲートも、今では開かれている。
魔王が討伐された後、魔族狩りをはじめとする、人間側の侵略行為がゲートを解放させた。
そんな侵略行為も過去の物となり、いつしか普通に交流する様になっていった。
とは言え、人間側には魔族に対する差別意識があった。
今ではこの村でも、人間との交流が出来た。
だけどこの村から人間界に行く者は、ひとりもいなかった。
別に禁じられてはいない。
ただ、誰も行こうとはしなかった。
「お、俺は遠慮しとくぜ。」
ドレイクは行きたくなかった。
彼の肌の色は赤みがかっていた。
ひと目で魔族とバレるので、行きたくなかった。
対してレウスは、肌の色から魔族とは分からなかった。
と言うより魔王が倒された後の魔族狩りを境に、この村の人たちは魔族である事を隠している。
ドレイクはなんとなく人間とは違う事を理解していたが、その頃まだ物心ついていないレウスには、自分も魔族だと言う認識はあまりなかった。
魔族も人間も、見た目はほぼ同じ。
ならばなぜ、差別する必要があるのだろうか。とレウスは思う。
「分かったよ、俺ひとりで行ってくるよ。」
あまり気乗りしないドレイクを誘うのを、諦めるレウス。
「おい、危険だぜ。」
ひとりで行こうとするレウスを、止めるドレイク。
だけどレウスの好奇心が勝る。
「大丈夫だって、俺の見た目はほとんど人間だし。」
レウスも、他の村人達とは違い、自分が人間に近い見た目だと気づいていた。
レウスは誰にも言うなよと念を押して、ゲートに飛び込んだ。
ゲートの向こうの人間界。
そこはレウスの村より栄えていた。
道は平らに整えられ、場所によっては石畳で舗装されている。
立ち並ぶ家々もレンガ造りで、木材の家は見当たらない。
「おまえ、よそ者だな。」
レウスが物珍しく辺りを物色していたら、突然声をかけられた。
レウスが振り向くと、街の子供が三人いた。
「そうだけど、何か?」
レウスはぶっきらぼうに聞き返す。
「冒険者ごっこするのに、魔族役がいなかったんだ。
おまえが魔族な。」
と言って街の子供達が棒きれを持って襲いかかる。
街の子供達は、レウスの相手ではなかった。
「おまえなあ、魔族が勝ってどうするんだよ。」
うつ伏せに倒れた子供が、文句言ってくる。
レウスはその子供の背中に、腰を落としている。
「いや、おまえらが弱すぎるだろ。」
レウスは呆れてしまうが、緩んだ表情をひきしめる。
「で、魔族にやられた冒険者って、どうなるのかな?」
「ひ、」
レウスは目の前に立つふたりに問いかける。
レウスの迫力に、ふたりは逃げだした。
「あ、おい、待てよ!」
レウスに押さえつけられてる子供は、ふたりを呼び止めるが、無駄だった。
レウスも十歳になっていた。
五年前にレウスはドレイクに野獣の家畜化を提案したが、その計画はすぐに頓挫した。
獣を手元で育てるより、育った獣を狩る方が、数段楽だった。
だから村の周りの、獣の棲息分布の把握に努めた。
村人の食糧となる獣を狩る肉食の獣は、徹底的に駆除された。
それで充分だった。
レウスの母のユリアは、村人達との交流を最低限に留めた。
しかし息子のレウスは違った。
五年前のドレイクとの一件から、レウスはよくドレイクとからむようになり、村の他の子供達ともからむようになった。
レウスが村のガキ大将になるのに、そんなに時間はかからなかった。
ユリアはレウスに棒術、槍術、剣術、体術をたたき込んだ。
レウスは修得したそれらで、村の子供達と戯れた。
ユリアはレウスに、読み書き計算も教えたが、魔術を教えられない事を悩んでいた。
ユリアは少ししか魔法を使えなかった。
この村にも、魔法に長けた者はいない。
「え、ゲートの外に行く?」
レウスの言葉に、ドレイクは思わず声をあげる。
声がでかいと、レウスは注意する。
ここは魔界。
ゲートの向こうは人間界。
魔王がいた頃は閉じてたゲートも、今では開かれている。
魔王が討伐された後、魔族狩りをはじめとする、人間側の侵略行為がゲートを解放させた。
そんな侵略行為も過去の物となり、いつしか普通に交流する様になっていった。
とは言え、人間側には魔族に対する差別意識があった。
今ではこの村でも、人間との交流が出来た。
だけどこの村から人間界に行く者は、ひとりもいなかった。
別に禁じられてはいない。
ただ、誰も行こうとはしなかった。
「お、俺は遠慮しとくぜ。」
ドレイクは行きたくなかった。
彼の肌の色は赤みがかっていた。
ひと目で魔族とバレるので、行きたくなかった。
対してレウスは、肌の色から魔族とは分からなかった。
と言うより魔王が倒された後の魔族狩りを境に、この村の人たちは魔族である事を隠している。
ドレイクはなんとなく人間とは違う事を理解していたが、その頃まだ物心ついていないレウスには、自分も魔族だと言う認識はあまりなかった。
魔族も人間も、見た目はほぼ同じ。
ならばなぜ、差別する必要があるのだろうか。とレウスは思う。
「分かったよ、俺ひとりで行ってくるよ。」
あまり気乗りしないドレイクを誘うのを、諦めるレウス。
「おい、危険だぜ。」
ひとりで行こうとするレウスを、止めるドレイク。
だけどレウスの好奇心が勝る。
「大丈夫だって、俺の見た目はほとんど人間だし。」
レウスも、他の村人達とは違い、自分が人間に近い見た目だと気づいていた。
レウスは誰にも言うなよと念を押して、ゲートに飛び込んだ。
ゲートの向こうの人間界。
そこはレウスの村より栄えていた。
道は平らに整えられ、場所によっては石畳で舗装されている。
立ち並ぶ家々もレンガ造りで、木材の家は見当たらない。
「おまえ、よそ者だな。」
レウスが物珍しく辺りを物色していたら、突然声をかけられた。
レウスが振り向くと、街の子供が三人いた。
「そうだけど、何か?」
レウスはぶっきらぼうに聞き返す。
「冒険者ごっこするのに、魔族役がいなかったんだ。
おまえが魔族な。」
と言って街の子供達が棒きれを持って襲いかかる。
街の子供達は、レウスの相手ではなかった。
「おまえなあ、魔族が勝ってどうするんだよ。」
うつ伏せに倒れた子供が、文句言ってくる。
レウスはその子供の背中に、腰を落としている。
「いや、おまえらが弱すぎるだろ。」
レウスは呆れてしまうが、緩んだ表情をひきしめる。
「で、魔族にやられた冒険者って、どうなるのかな?」
「ひ、」
レウスは目の前に立つふたりに問いかける。
レウスの迫力に、ふたりは逃げだした。
「あ、おい、待てよ!」
レウスに押さえつけられてる子供は、ふたりを呼び止めるが、無駄だった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる