6 / 10
第6話 勇者の養女
しおりを挟む
レウスを10年間育てたユリアは、レウスの槍で息絶えた。
敵であるはずの少女、レギアスをかばって。
そう、ユリアには確信があった。
この少女こそ、10年前に生き別れになったレウスの双子の妹、レイアであると。
その事をふたりに伝えられないのは、心残りだった。
「うわああ!」
ユリアの死を感じ、レウスは叫ぶ!
同時に、レウスに秘められた魔力が暴発!
凄まじい衝撃波が、村を駆け抜ける!
近場に居た村人達は吹き飛ばされ、ほとんど意識もなく、皆ぶっ倒れている。
それは兵士達も同じだった。
近くの数軒の家々も、跡形もなく吹っ飛んだ。
そう、レウスの家も。
無事だったのは、レウス自身と、レウスのそばに居たレギアスと言う名の少女、そしてユリアの三人だけだった。
丁度台風の目の中の様に、レウスの周囲1メートルくらいは無事だった。
魔力を暴走させた後、レウスの心は落ち着いていた。
魔力の暴発とともに、レウスの怒りも吹き飛んだ様だった。
「母さんがなぜおまえをかばったのか、俺には分からない。
だけど、母さんの遺志は尊重する。おまえとは、戦わない。」
レウスはユリアに刺さったままの槍を、引っこ抜く。
さっきまでは、あんなに殺したかった相手なのに、不思議と今はそんな気になれなかった。
「おまえ、名前は?」
ユリアをおぶろうとするレウスに、レギアスが問いかける。
「俺は、レウス。母さんの息子だ。
…母さんが魔王軍四天王だったなんて、知らなかったよ。」
「そうか、レウスか。
ならばレウス、ユリアの息子を自称するのはよせ。ユリアの遺志を尊重するのならな。」
「何?」
レギアスの言葉に反感を覚えるレウスだが、レウスの戦意はすでに消失していた。
「ユリアは、おまえが自分と関係がある事を、隠し通そうとしていた。
おまえがユリアの息子なら、おまえも殺されるからな。」
「そう、だったんだ。」
レギアスの言葉でレウスは初めて、ユリアの真意を知った。
自分を息子ではないと言った、その意味を。
「それにおまえは、」
と言ってレギアスは言葉をにごす。ユリアの息子であるはずがないと、続けようとしたのだが。
肌の色からして、レウスがユリアの息子であるはずがないのだ。
だけどレウスには言えなかった。
レウスはユリアを母として尊敬している。
そこに血のつながりはなくても。
「おまえ、名前は?」
今度は、レウスが尋ねる。
「母さんが助けたおまえの名前を、俺は知りたい。」
「そうだな。おまえには知る権利がある。
私はレギアス。勇者アルバスの養女だ。」
「勇者アルバス、だと?」
その名は、レウスにも聞き覚えがあった。
十年前に魔王を討伐した勇者の名前。
アルバスが魔王を討伐しなければ、その後の魔族に対する残党狩りもなかった。
勇者アルバスの名は残された魔族にとって、憎悪の対象だった。
「おまえがアルバスの幼女なら、母さんが、蒼天のユリアがかばってくれた、俺も殺すのか。この村ごと。」
レウスは養女と言う言葉を知らなかった。
なぜここでレギアスが幼女と言ったのか、意味が分からなかった。
娘、子供。それとは違った意味が、幼女と言う単語には有るのだろうか。
「私はそんな野蛮な事、したくない。」
レギアスは哀しい表情を浮かべ、うつむく。
「おまえみたいな人間も、いるのか。」
レギアスの態度は、レウスには意外すぎた。
レウスが友達だと思ってた、街の人間の子供。
彼らだって、魔族を敵と認識していたのだから。
「だから、みんなが気がつく前に、ここを去ってくれないか。
ユリアがかばってたおまえを、死なせたくない。」
レギアスは苦渋の表情で、言葉をしぼりだす。
レウスの魔力の暴走。
これのもたらす結末は、この村の滅亡。
今は意識のない兵士達も、その意識を取り戻したら、この村ごと滅ぼすだろう。
魔族の脅威を、そのまま野放しには出来ない。
自分達とは違う者達を、受け入れるだけの器量は、ひとには無かった。
この事にレウスも、レギアスの態度から察する事が出来た。
とは言えレウスには、この村に対する未練はなかった。
村人達の、ユリアに対する態度。
レウスがこの村見捨てるのには、充分すぎた。
「だけど、ドレイクは助けてくれないかな。」
そんなレウスにも、心残りはあった。
自分を心配してくれたドレイクを、他の村人達と同列にしたくはなかった。
「あいつか。ならばあいつも連れて行け。
皆が気づく前に。」
レギアスにも、ドレイクに対する認識はあった。
ユリアを母と呼ぶレウスを、必死に止めてた魔族の青年。
仲間のために、命をはって行動出来る者は、そう多くはない。
それが人間であっても。
魔族なのにその行動が出来るドレイクに、レギアスは好感の念をいだいていた。
「ああ、そうさせてもらうよ。」
レウスはユリアの遺体を背中におぶり、ドレイクを左腕で小脇にかかえる。
そしてレギアスのそばから、立ち去った。
敵であるはずの少女、レギアスをかばって。
そう、ユリアには確信があった。
この少女こそ、10年前に生き別れになったレウスの双子の妹、レイアであると。
その事をふたりに伝えられないのは、心残りだった。
「うわああ!」
ユリアの死を感じ、レウスは叫ぶ!
同時に、レウスに秘められた魔力が暴発!
凄まじい衝撃波が、村を駆け抜ける!
近場に居た村人達は吹き飛ばされ、ほとんど意識もなく、皆ぶっ倒れている。
それは兵士達も同じだった。
近くの数軒の家々も、跡形もなく吹っ飛んだ。
そう、レウスの家も。
無事だったのは、レウス自身と、レウスのそばに居たレギアスと言う名の少女、そしてユリアの三人だけだった。
丁度台風の目の中の様に、レウスの周囲1メートルくらいは無事だった。
魔力を暴走させた後、レウスの心は落ち着いていた。
魔力の暴発とともに、レウスの怒りも吹き飛んだ様だった。
「母さんがなぜおまえをかばったのか、俺には分からない。
だけど、母さんの遺志は尊重する。おまえとは、戦わない。」
レウスはユリアに刺さったままの槍を、引っこ抜く。
さっきまでは、あんなに殺したかった相手なのに、不思議と今はそんな気になれなかった。
「おまえ、名前は?」
ユリアをおぶろうとするレウスに、レギアスが問いかける。
「俺は、レウス。母さんの息子だ。
…母さんが魔王軍四天王だったなんて、知らなかったよ。」
「そうか、レウスか。
ならばレウス、ユリアの息子を自称するのはよせ。ユリアの遺志を尊重するのならな。」
「何?」
レギアスの言葉に反感を覚えるレウスだが、レウスの戦意はすでに消失していた。
「ユリアは、おまえが自分と関係がある事を、隠し通そうとしていた。
おまえがユリアの息子なら、おまえも殺されるからな。」
「そう、だったんだ。」
レギアスの言葉でレウスは初めて、ユリアの真意を知った。
自分を息子ではないと言った、その意味を。
「それにおまえは、」
と言ってレギアスは言葉をにごす。ユリアの息子であるはずがないと、続けようとしたのだが。
肌の色からして、レウスがユリアの息子であるはずがないのだ。
だけどレウスには言えなかった。
レウスはユリアを母として尊敬している。
そこに血のつながりはなくても。
「おまえ、名前は?」
今度は、レウスが尋ねる。
「母さんが助けたおまえの名前を、俺は知りたい。」
「そうだな。おまえには知る権利がある。
私はレギアス。勇者アルバスの養女だ。」
「勇者アルバス、だと?」
その名は、レウスにも聞き覚えがあった。
十年前に魔王を討伐した勇者の名前。
アルバスが魔王を討伐しなければ、その後の魔族に対する残党狩りもなかった。
勇者アルバスの名は残された魔族にとって、憎悪の対象だった。
「おまえがアルバスの幼女なら、母さんが、蒼天のユリアがかばってくれた、俺も殺すのか。この村ごと。」
レウスは養女と言う言葉を知らなかった。
なぜここでレギアスが幼女と言ったのか、意味が分からなかった。
娘、子供。それとは違った意味が、幼女と言う単語には有るのだろうか。
「私はそんな野蛮な事、したくない。」
レギアスは哀しい表情を浮かべ、うつむく。
「おまえみたいな人間も、いるのか。」
レギアスの態度は、レウスには意外すぎた。
レウスが友達だと思ってた、街の人間の子供。
彼らだって、魔族を敵と認識していたのだから。
「だから、みんなが気がつく前に、ここを去ってくれないか。
ユリアがかばってたおまえを、死なせたくない。」
レギアスは苦渋の表情で、言葉をしぼりだす。
レウスの魔力の暴走。
これのもたらす結末は、この村の滅亡。
今は意識のない兵士達も、その意識を取り戻したら、この村ごと滅ぼすだろう。
魔族の脅威を、そのまま野放しには出来ない。
自分達とは違う者達を、受け入れるだけの器量は、ひとには無かった。
この事にレウスも、レギアスの態度から察する事が出来た。
とは言えレウスには、この村に対する未練はなかった。
村人達の、ユリアに対する態度。
レウスがこの村見捨てるのには、充分すぎた。
「だけど、ドレイクは助けてくれないかな。」
そんなレウスにも、心残りはあった。
自分を心配してくれたドレイクを、他の村人達と同列にしたくはなかった。
「あいつか。ならばあいつも連れて行け。
皆が気づく前に。」
レギアスにも、ドレイクに対する認識はあった。
ユリアを母と呼ぶレウスを、必死に止めてた魔族の青年。
仲間のために、命をはって行動出来る者は、そう多くはない。
それが人間であっても。
魔族なのにその行動が出来るドレイクに、レギアスは好感の念をいだいていた。
「ああ、そうさせてもらうよ。」
レウスはユリアの遺体を背中におぶり、ドレイクを左腕で小脇にかかえる。
そしてレギアスのそばから、立ち去った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる