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Commentary
あっくんの嘘
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自宅。それからは定期的に吐いたり蹲っている事の増えた色は、以前よりも元気がなかった。
「ほれ、お茶だ」
湯飲みに入ったそれを手渡すと、ダイニングに着いた彼が、潤んだ目をしながら受け取り口を付ける。
その流れで何か話せないか聞いてみるも、撃沈。
「お前に話すような、話ではない」
しかし少しして、僅かに会話をしてくれた。
「ちょっと、手違いが、あってね……」
「手違いって、契約内容の?」
思いついて聞いてみるも彼は首を横に振る。
「それなら、一体」
思わず掴んだ手首から、ぼんやり女のようなイメージが視え、なぜだかちょっとムッとした。
――貴方には……が居るのに!
――そういうの、俺には、難しくて分からないし……
(契約書の不備は、その人に関係がある?)
それから夕方、柳時さんが、ショートケーキとともに訪ねてきて、仕事を任される。
事務作業の手伝い。
調査に出掛けるらしいので、代わりにやっておいてくれということらしく、二人で片付けた。
資料を見ながら思い出すのはいつも研究対象にされる生活。
使い慣れているから、なんて酷い暴言を言われる事もあった。
「ほら、あの漫画の主人公が見るような非現実的なやつ。ああいうの見れる人もいるんだろうね」
それでも、復讐より先に、色が望んだのは本当に心からの空想。純粋な混じり気の無い夢。心が満たされるような何か。
「事件の話しか出来ないの?」
と誰かが聞いたように、
その通り。それすら存在しない。
比べるにはジャンルが違う気もするが、
ピカソが長い間子どものような絵が描けなかったというような事を思い出した。
ものすごく幼少の頃には微かに夢をみていたそうだが、今では殆どの時間、血と暴力と事件しか浮かべていない。
それ以外を考える時間を企業側も認めていなかった。
「許さない」と、怒りさえ向けていたほどだ。
更に酷いのは、彼らは同じ人間として扱われ、わざわざ、嫌味ったらしく此方側に接触したがっては『どんな気持ちでいるのか』と聞いてくる鬼畜である事。
もし此方側だったら、そんな酷いことは聞けやしないのに。
それこそ証拠が無いのに
めぐみさんの夢を見ている、と決め付け、中に混ぜ込んだ。
他の被害者まで私物化して終わらせようとしていた。
――あっくんは、どうして■■■■■■■■■■
「起きて」
女の声がして、慌てて目を開ける。
橋引が俺を起こしていた。
「おはよう」
辺りを見渡す。船だ。さっきから薄々起きては居た。
「酔いは、大丈夫?」
「あぁ……」
どのくらい寝たのだろう。大分頭がすっきりしている。
ぼんやり起き上がって来る俺に、彼女は気分が悪くないか心配しているようだった。
「船って、ちょっと苦手で、でも寝てたらだいぶ楽になった」
以前。何度か、藍鶴色が海の映像をじっと見ていた事がある。
――――きれいだな、海は
そうだろうか。
枕元に置かれたボトルの水を飲む。
生温い。
「もうすぐ着くから。ちゃんと切符持ってるよね?」
そう言いながら、涼しい顔で窓の向こうを見ている橋引。
「あぁ」
酔わないのだろうか。ちょっとうらやましい……
そう思った辺りで、船が少し揺れる。
「ちゃんと持って、うぉ……」
多少眩暈がした。が先程よりはマシだ。
色は、まだ外に居るのだろうか。探してこようかな、橋引も行くか?
と聞こうとしたときだった。
「私だけ、我慢するのは嫌!!」
通路を挟んで向こう側で、誰かが叫んだのが聞こえた。
「どうして私が我慢しなきゃいけないの。知ってますか、部下から上司でもパワハラになるんですよ!?」
ガンガン希望休とってやる!誰かが喚いている。
ワン、ワンとどこかで犬が鳴いている。
何処かで同じ事を言っていた人を見た事がある。
……そういえば犬って荷物用のスペースに預けられるんじゃなかったっけ。
「どうかした?」
橋引に聞かれて、なんでもない、と答える。
「いや、あいつら探しに行かないとと思って」
「ほれ、お茶だ」
湯飲みに入ったそれを手渡すと、ダイニングに着いた彼が、潤んだ目をしながら受け取り口を付ける。
その流れで何か話せないか聞いてみるも、撃沈。
「お前に話すような、話ではない」
しかし少しして、僅かに会話をしてくれた。
「ちょっと、手違いが、あってね……」
「手違いって、契約内容の?」
思いついて聞いてみるも彼は首を横に振る。
「それなら、一体」
思わず掴んだ手首から、ぼんやり女のようなイメージが視え、なぜだかちょっとムッとした。
――貴方には……が居るのに!
――そういうの、俺には、難しくて分からないし……
(契約書の不備は、その人に関係がある?)
それから夕方、柳時さんが、ショートケーキとともに訪ねてきて、仕事を任される。
事務作業の手伝い。
調査に出掛けるらしいので、代わりにやっておいてくれということらしく、二人で片付けた。
資料を見ながら思い出すのはいつも研究対象にされる生活。
使い慣れているから、なんて酷い暴言を言われる事もあった。
「ほら、あの漫画の主人公が見るような非現実的なやつ。ああいうの見れる人もいるんだろうね」
それでも、復讐より先に、色が望んだのは本当に心からの空想。純粋な混じり気の無い夢。心が満たされるような何か。
「事件の話しか出来ないの?」
と誰かが聞いたように、
その通り。それすら存在しない。
比べるにはジャンルが違う気もするが、
ピカソが長い間子どものような絵が描けなかったというような事を思い出した。
ものすごく幼少の頃には微かに夢をみていたそうだが、今では殆どの時間、血と暴力と事件しか浮かべていない。
それ以外を考える時間を企業側も認めていなかった。
「許さない」と、怒りさえ向けていたほどだ。
更に酷いのは、彼らは同じ人間として扱われ、わざわざ、嫌味ったらしく此方側に接触したがっては『どんな気持ちでいるのか』と聞いてくる鬼畜である事。
もし此方側だったら、そんな酷いことは聞けやしないのに。
それこそ証拠が無いのに
めぐみさんの夢を見ている、と決め付け、中に混ぜ込んだ。
他の被害者まで私物化して終わらせようとしていた。
――あっくんは、どうして■■■■■■■■■■
「起きて」
女の声がして、慌てて目を開ける。
橋引が俺を起こしていた。
「おはよう」
辺りを見渡す。船だ。さっきから薄々起きては居た。
「酔いは、大丈夫?」
「あぁ……」
どのくらい寝たのだろう。大分頭がすっきりしている。
ぼんやり起き上がって来る俺に、彼女は気分が悪くないか心配しているようだった。
「船って、ちょっと苦手で、でも寝てたらだいぶ楽になった」
以前。何度か、藍鶴色が海の映像をじっと見ていた事がある。
――――きれいだな、海は
そうだろうか。
枕元に置かれたボトルの水を飲む。
生温い。
「もうすぐ着くから。ちゃんと切符持ってるよね?」
そう言いながら、涼しい顔で窓の向こうを見ている橋引。
「あぁ」
酔わないのだろうか。ちょっとうらやましい……
そう思った辺りで、船が少し揺れる。
「ちゃんと持って、うぉ……」
多少眩暈がした。が先程よりはマシだ。
色は、まだ外に居るのだろうか。探してこようかな、橋引も行くか?
と聞こうとしたときだった。
「私だけ、我慢するのは嫌!!」
通路を挟んで向こう側で、誰かが叫んだのが聞こえた。
「どうして私が我慢しなきゃいけないの。知ってますか、部下から上司でもパワハラになるんですよ!?」
ガンガン希望休とってやる!誰かが喚いている。
ワン、ワンとどこかで犬が鳴いている。
何処かで同じ事を言っていた人を見た事がある。
……そういえば犬って荷物用のスペースに預けられるんじゃなかったっけ。
「どうかした?」
橋引に聞かれて、なんでもない、と答える。
「いや、あいつら探しに行かないとと思って」
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