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Commentary
ゆうこさんの供述
しおりを挟む「私だけ、我慢するのは嫌!!」
通路を挟んで向こう側で、誰かが叫んだのが聞こえた。
「どうして私が我慢しなきゃいけないの。知ってますか、部下から上司でもパワハラになるんですよ!?」
ガンガン希望休とってやる!誰かが喚いている。
ワン、ワンとどこかで犬が鳴いている。
何処かで同じ事を言っていた人を見た事がある。
……そういえば犬って荷物用のスペースに預けられるんじゃなかったっけ。
「どうかした?」
橋引に聞かれて、なんでもない、と答える。
「いや、あいつら探しに行かないとと思って……」
その時。
「こっちは藍鶴色に、迷惑をかけられたんですよ!?」
一際大きな声が響いた。
「せっかく隠蔽しているのに表に出すなんて、お前がやったのか?って。私がやったんじゃないのに」
犬のゲージを抱えたまま、派手な紫のワンピースの女性が、人目も憚らず泣きじゃくっている。
背中を向けているので顔は見えないが――――
「!」
俺は導かれるかのようにその近くに進んでいた。
一番手前のスペースの傍に行き、柱の影から見守る。
彼女達は通路の真ん中でときどき通行人に道を譲りながらも、怒りを抑えきれない様子で語り続けていた。
「あいつのせいで、いつも私の責任みたいに誤解されて……恐かったんだからな!」
「でも、好きだったんじゃないの?」
すぐ隣にいるスーツの女性が背中を撫でている。
「そりゃさ、昔は大好きで、いつも話しかけてたよ。でも、それが悪いと?」
――――は? この気持ちさえ、私がやったことを間接的に疑われるのに使われたって事?
心の声が混じって聞こえて来て、油断していた俺は一瞬気分が悪くなった。
「私が話しかけなきゃよかったって事? そんなわけ、ないよね」
――――酷くない? 他人の気持ちをなんだと思ってるんだろう。
たぶん何とも思ってないぞ。
藍鶴色がそっち方面への感情が他人以上に希薄だとは彼女も思うまい。
「そっか、辛いね」
――――そりゃそうだろ。地雷原が火元に近づくなよ……
狙われるに決まってんだろうが
「でも、貴方もそういう事していたんだし」
「は? そんなの、皆バレてないって……」
――――経歴だって、工作は完璧だとトモも言ってたのに。
それすら見抜いて交流していたみたいな事言うつもり?
「私は被害者なんだけど?」
皆して私を馬鹿にしていたって言いたいわけ?
――――いや違う。私はこの気持ちを利用されたんだ。
この気持ちが止められる訳が無かった。そして、指摘されて笑われた。
唯一私の事を理解してくれると思っていた相手に裏切られ、見捨てられたんだ。
何度考えても泣けてくる。
「……」
奥のスペースに座ってしまうと、さすがに声を控えるようになってしまい、よく聞き取れなくなる。
顔は見えなかったけど、藍鶴色を知っていて、利用していた側の女……
途中から認知が歪んでいたような気がしたが『隠ぺい工作』が完璧だと思っていたからこそのものみたいだ。
それを認めたうえで現実に向き合うと、自分は特別でも理解される者でもなくただの使い捨ての駒で、全て掌の上で転がっていた事になってしまう。
自分に酔って、認知を歪めて周りが自分の為に存在しているかのような錯覚をし、その中で空回っていただけになってしまう。
それが許せないのだろう。
まぁ彼女の事はどうでもいい。それよりも、此処に彼が居なくて良かった。
と思ったところだったが、
「あ」
ちょうどそのタイミングで正面から藍鶴色が歩いてくる。
「あーーー!!!」
彼女が藍鶴色を指さす。
「ゆうこさん」
「藍鶴色!」
ゆうこさん!?
「何故彼女が此処に……」
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