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Commentary
色の家庭
しおりを挟む「私も居るよ」
隣の、スーツ姿の女性が手を振る。
短めのボブヘアーは毛先がカールしていて、色と似た髪色に、目つき。
「ねぇ。貴方の本、私に譲る気になった?」
猫のような目が歪み、優しそうな笑みを浮かべて言う。
「貴方が持っていても暴力団に絡まれるでしょ? 私なら大丈夫。ね?私が使うから」
「母さん……」
色が苛立ったように呟く。
「探したわよ。貴方、全然連絡しないからー」
彼女はそんなこと気にも留めていないという様子で笑い、手を振っていた。
「……なんで、母さんがゆうこさんと居るんだ」
呆然としている色は、さすがに細かい乗客までは把握していなかったらしい。
「同僚ー? まさか移動先で会うなんて。ねぇ、それより……」
母さん、が色に手を伸ばして近付こうとする。
色は反社的に身体を逸らして避けた。
「絶対に何も渡さない。来るなって言っただろ!」
彼からしてみれば、あまりにも勝手だった。
小さい頃から自分だけが所有出来るものがほとんどなかった気持ちが、彼女には分からない。
『使うから』と親まで当然のように道具として見てくる悲しみ。
藍鶴色が、普段能力を使い、また制御する為……今までどれほど努力をしてきたのかも知らず、
当然のようにタダ乗りする気なのだ。
「なんでよぉ」
彼女は不満そうにそう言って、色を睨んだ。
「昔から思っていたけど、貴方って昔から、事件の話しかしない。気味が悪いからそれやめてって私が何度も言ってるのに。なんで聞けないの?
だから、私が太田さんに『あの子って事件の話しかしませんよねー』って笑われるんでしょ」
恥ずかしかったんだから。そう言う彼女の横にいるゆう子さんは、ニヤニヤ笑って頷いている。
「それは……」
「私だってね、周りの話に合わせて好きな漫画の話とかして、外で元気で遊ぶような子がよかった」
少なくとも周りと同じように、食事中に薄気味悪い事件の話や変なことばかり言わない普通の子がよかった。
彼女の心が、伝わって来る。
だから、そうなって欲しくて彼女なりに教育を行っていた。
色は何も答えない。
その通りだと感じて居る。
「そうやってニュースだ新聞だって暗ーい事ばかりしてないで、もっと明るくて想像力がつくような? 事すればいいのにね。私は別に、オタクでもいいのよ? アニメとか観ないの?」
色は何も答えない。
明るさとは何か。想像力とは何か。そこからの話になってしまう事は、想像に難くない。
「退けよ。そっち通るから」
ただ淡々と、無感情に通路を塞ぐなと指摘する。
一瞬、俺と目が合った。
彼は無理矢理隙間を通ると、俺の手を引いて後方……色から見て前方、奥の方へと足早に歩いて行く。
――――行こう。
色の心の声。
「お、おぉ……」
引っ張られるままに俺も移動する。
――――やっぱり、私が話しかけなきゃよかったって事?
ゆう子さんの心の声がいつまでも木霊していた。
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