かいせん(line)

たくひあい@あい生成

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Commentary

能力者と障害

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その為のフロント企業か……

「だけど、俺が彼の野望の邪魔になるのは分かるけど、分からない。皋さんは、何をしたんだろう?」
「待てよ。皋さんが何故出て来る。関係があるのか?」

「知らない。頭の中でそういう、関係みたいな構図があるんじゃない。少なくとも、昔から、例えば俺が皋さんとかと関わろうとすると、やけに、殺す!って感じで来るんだよね。ジンとかが」

うーん、やっぱり謎だ。どういう意味なんだ?

「いや、単に彼奴が異常なのか、そうだろうな」

 色は、曖昧に言いながら、そのまま辺りを見渡す。
まぁ、細かいことは、後で話すから、と言おうとした色の言葉が止まった。





目の前をスーツケースを引きずるゆう子さんたちが歩いて来たからだ。
「やったぁ! これで貿易が盛んになるー!」
彼女達もニュースを聞いているらしい。



――――事務所も安く買い取れるわね。『障がい者支援』として、逆に支援金がもらえたり!?

ゆう子さんの考えが俺に流れ込んで来る。
どういう事だ?

彼女の喜びようは、まるでこうなる事を知っているかのようにどこか政治的で、含みがある。政界に繋がりがあるのだろうか。


二人は此方に目が合うと、わざとらしく微笑んで「あら、また会ったわね」と言って、何処かに消えて行った。






……。

「こうなると思った」

色がその背中が消えて行った方を見て、淡々と呟く。
「どうせ、多額の融資をしてるとか、寄付金とかだろうけど。行き先で会わなきゃいいな」
ゆう子さんに何か思っているというより、世界そのものが汚れているというようなニュアンスだった。

「色――――」

「結局あの人ってさ」
色は、独り言のように呟く。

「印象をいかに操作して、相手を安く買い叩けるかしか頭に無い人なんだよ」

だから、他人の話をするときも「自分が助けてやった」とか前置き必須なんだと、『押し買いの手口』みたいに、と。

真っ直ぐに俺を射抜く瞳。
それは何処か仄暗さを帯びている。
何を思っているのか。

「きっと、生れたときから、普通に生きられない事が決まっていたんだ。と、今更になって気付くなんて」

触れればわかったのだろうけれど、俺は触れられなかった。




「ね。何処行く?」
まつりが楽しそうに話しかけて来る。
「あ? あぁ」
そういえば、とりあえず何か食べようという事になっていたっけ。

『そういや、この辺に……の美味しい店が』
誰かの声とともに、ズキン、と側頭部に頭痛が走った。

「……っ!」
「界瀬?」

俺は此処に来たことがあるのか?
『船、ちゃんと乗れたんだね――』

ぐわん、ぐわんと盥をひっくり返したような反響が脳内に響き渡っている。
色が不安そうに近づいてくる。

「うわっ、どうしたの?」
遠くで橋引の声がする。
「頭が痛いの?」

俺は何も言えない。
もう少し、もう少し、落ち着けば、何か思い出すかもしれない。
(思い出すって、何を?)


――――脳内に、海が見える。
海面。
白い、丸い何かと、夥しい紅い何かの液体が、一面に漂っている。

あれは   
「うわあああああああああああああああああっ!」


 何処かに出荷されるべく積み上げられた木箱が崩れてあちこちに散らばっていて、そこらじゅうで薬品の甘ったるい匂いがする。

『此処に居たらいけない』
直観的に俺はそう思った。
 目の前にある自分は普段よりも低い目線で、思ったように動けない。
転びそうになって体勢を崩した横でスーツ姿の誰かが寝ている。
『こんなところで寝ていたら危ないよ』
起こそうとして、笑い声を感じた。

海の向こうから、透明な無数の手が呼んでいる。
笑っていて――――


あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

「大丈夫か?」

景色が歪む。色の声が真近に聴こえるから、たぶん、彼が倒れそうになった俺を抱きとめているのだろうけど……あんまり実感がない。
目の前の景色の印象が強すぎて、今の俺は、離人感の中に居る。

「……だい、じょうぶ」

何がか分からないが、俺は答える。
帰ったところで、帰る場所など無いしそれ以前に、この精神状態ですぐさま戻れるとも思えなかったから、どうせなら先に進みたい。

『海には、思念が沢山居る。時々、白い手が呼んでるんだ』
『えー、なんて呼んでるの?』

「そっか。海、苦手なんだっけ」
色が俺の背を撫でるようにしながら、悩まし気に言う。
「……だいぶ、克服したんだけど」


――――おいで。    

――――×××××××××上がりたいんだ。手伝ってくれないか?



「だいぶ、克服したんだけど」
「二回言ったね」
色が心配そうに俺を見ている。
冷静になって来ると他の奴や、背後の乗客まで俺を見ている気がしてきて、慌てて色から少し離れてみる。

「さっきこんなの売ってた」
背後では夏々都が何処からか蝶のようなサングラスを取り出している。
「うわっ。パピヨンじゃん。舞踏会出よう」
「舞踏会にこれは違うだろ」
「ウケるー! 今って舞踏会存在するの?」
「怪しさが足りない。この辺に羽とか付けよう」
「何になるつもりなんだよ」



「……」
マイペースに遊び始める彼女と彼らの傍ら、他の乗客の目が気になって来て、俺は慌てた。
「……どうして苦手なのかは、聞いてもいい?」
色が不安そうに俺を見上げる。
「此処を出てからな」

※2025年9月10日2時00分加筆
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