かいせん(line)

たくひあい@あい生成

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Commentary

夢の輝き

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・・・



某国に住んでいた頃。
占い師の母が、書籍に合わせてドラマを作ると言ったことがある。
 学校からの帰宅時に、玄関に顔を出した彼女は「ちょうどよかった」と俺を手招きし、気安いノリで
「実は今度、書籍の宣伝のためにドラマを作ってもらうのよ」
と言って来た。

「ふーん」
興味無かった。どうでもよかった。
とりあえず部屋に鞄を置いて来ようと、俺が、鞄を部屋に置いて再び戻って来ると、リビングで、カウチに寝そべって居た彼女とまた目が合った。

「あんたに出て欲しいけど、どうせヤダっていうだろうから」
彼女は家用のワンピース姿でだらけた姿勢でそんな風に補足して来た。

「当たり前だろ!」
俺の役もあるのかよ。と勝手に決められた俺はショックだった。
ドキュメンタリーらしく、子どもが変な言動をしていたとかが面白おかしく書かれるんだと思うといらいらした。
足元に通販で買った高い化粧品が転がっているのにも、なんかむかついた。

「なに怒ってるの? よかったじゃない。夢の世界よー? 一躍スターかもよ?」

全部が一方的で偉そうで――――
何が夢だ、大人の醜悪さの象徴じゃないか。

「いいわねぇ、俳優さん。夢を与えてくれる……」

「ふざけんな!」

俺は叫んでいた。

「夢なんて言ってんのは、お前らだけだろうが!」
バン、と扉を勢いよく開けて、俺は部屋から走り出た。



自分で言うのもなんだが、見た目に恵まれていたのだろうか?
才に溢れていたのだろうか。
昔から主導権を握って利用したいが為に、「やってやるから」と態度だけ偉そうな奴ばかりが近付いてくる。


 俺は彼女も、テレビ局もそんなに好きじゃなかった。
あの放送してやって居るって上からの目線に酷く腹が立った。
映してやる、作ってやる、占ってやる。

あの謎の自意識過剰な界隈から逃れたかった。
――――だから。

どのみち遊びに行こうと思っていた格好のまま、家を飛び出した。
確かに、テーブルに投げてある台本には、数ページだけだけど俺の役まであったからだ。









絶望していた。
あんなの放送されたら、俺が注目にさらされたら。


――――えー、気味悪い!

――――お前、超能力☆とか言ってるの? 恥ずかしくない?

近所の子たちに笑われる。可哀想な目で見られる。

――――俺もなんか当ててみろよ!
――――自分に酔ってる痛い人だったんだ。あんな見た目で……

――――知らなかった―。やっぱスピ系? 痛そうな人


真面目に過ごして来た。目立たないように過ごして来た。
それが彼女の『善意』でガラガラ崩れて行く。

『救ってやってる、此処まで来い』と、全ての環境の下地を破壊して、俺から自尊心を奪い偉そうに呼びかける。





「何が、夢だよ! スターだよ!」

勝手に制圧に来た軍隊が、勝手に戦争を始めるから退いてくれというのと同じだ。
テロだろ。こんなの。拒否権なく巻き込まれて。

「夢を、他人に与えて、それって持っていた側は無くなるってことか? あぁ、俺は真っ暗だ」


目の前の景色と同じ。
真っ暗な夜空に、大量の星がある。
あの星と違って人の輝きは作る事が出来る。
権力さえあれば、いつだって勝手に組み込めるのだと、思い知らされるのはそればかりだ。




 しばらく走っていると、港の方に来ていた。

夢とか商売とか、そういう空気を無意識に遠ざけて店と反対の方に向かったのだろう。
そこには、シャッターの上がったままの古びた倉庫があった。
いつからあるのか、子どもの頃にも遊んだりした場所で、この時間になると人気はあまりない。
懐かしいなと思いながら、俺はなんとなくそこに足を向けようとした。

家に帰りたくなかったので、夜風をしのげる場所くらいになるかと思っての事だ。

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