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recycled steel barrel
朝
しおりを挟む今日の朝は忙しい。
限られた時間の中、朝食を摂って、それからまたバスに乗ったりして目的地に向かう。
聖堂の前に、大きな神木があるらしい。
10分くらいで身支度を整え、急いでロビーに向かうと、
まつりさんと夏々都君がエレベーターの前で私に手を振っている。
それから、色ちゃんや界瀬が「おはよう」と言ってくれた。
「ごっめーん、昨日、寝れなくて」
なんだかこういう朝は久しぶりで、夢みたいだ。
急いで輪の中に向かいながら、そんな事を思った。
「大丈夫。ちょっと早めに集合しておいたし」
色ちゃんが優しくフォローしてくれる。
夏々都も「いえ、こっちも危なかったですよ」と言った。
「まつりが起きなかったらぼくが引き摺って来るとこでした」とのこと。
「失礼な、今日はちゃんと起きてたよー!」
とまつりが唇を尖らせるとドッと笑いに包まれる。
「うう、低血糖なんだよ……」
拗ねたように言っているまつりは、既に何かチョコレートのようなものを食べていた。
「あ、食べる?」
目が合うと、箱入りの小さなチョコを一つ、此方に渡して来る。
「ありがとー! 私も朝弱いんだ」
美味しい。
チョコを食べながらはしゃいでいると、昨日二人と話した事を思い出した。
……忘れるところだった。
「かいちゃん」
「何」
昨日持っていた雑誌を彼に渡す。
彼はそれを受け取りつつ、ぽかんと私を見ていた。
「これは」
「あのね、うまく言えないんだけど……この雑誌から感じる事、教えて欲しいの」
突然変な事を言っているのは分かっている。
彼はどう言う意味か測りかねるように、私が何か言うのを待っている。
「……その、最近のゆう子さん騒動の事とかで、私も自分の事思い出して、それで、子どもの頃の事もちょっと思い出した。……えっと、ゆう子さんって、能力者をネタにした本とか出してたでしょ? それで、その雑誌の中に、私の思い出もあるかもしれないって」
言おうと思った事と、言いたい事がごちゃごちゃに混ざる。
「その、何か、手掛かりになるかなって……」
あぁ、どうしよう。彼は何も言って来ない。
意味がわからないと思われているに違いない。
私が落ち込んでいると、色ちゃんが横から覗き込んで来た。
「事務所に来る前、彼女は普通の学生だった。これはその頃刊行された雑誌だ」
「あぁ、やっとわかった」
界瀬は、納得したように顔を上げる。
無視されていたのではなく、言葉の意味を考えてくれていたみたいだ。
何故だか泣きそうになる私を、色ちゃんが撫でる。
「ほら、界瀬、じっとしてると怖いんだから……」
「お前が言うなよ!」
不服そうな界瀬と、ゆるく咎める色ちゃん。昔から変わらない。
「ていうか、言う程怖くないだろ」
雑誌を懐に入れながら界瀬は私を向いた。
「じゃあ、しばらく預かっとく」
そう言った彼に、私は頷く。よかった。
これで、心残りが無くなる。
本に情報がある、というのが意味するのは個人情報の転売、漏洩疑惑。
それは能力者の場合はかなり危険な用途、反社が関わっている事案も特に警戒する必要があった。
――――あの頃みたいに、今も誰かが後をつけているのかもしれない。
終わっているのか、続いているのかはわからないけど、どうしてだか今その事を気にかけたくなっている。
(オークションの時からずっと感じている落ち着かない感じ……)
皆で歩きながら、私は考える。
……昔からのその正体がわかって、それで、どうだというのだろう。どうしたいのか。
(わからない。事務所もきっともう無くなる)
……私は、どうするんだろう。
まず、出て行く。
バイトでも、泊まり込みでもなんでもして、今の全てにさよならしよう。
仕事柄という関係もなくなるので、色ちゃんや皆とも、もう会えないのかもしれないけど、どうせ常に一緒だった訳でもないし。
(……どうせ初めから叶わない恋だったし)
歩いている色ちゃんを盗み見る。相変わらず優しい目だった。
今はただ、色ちゃんが存在の理由を求めて、この旅を決めたように。
私も最後の心残りをなくして、いつでも居なくなれるようにする。
それで何か、これまでの恩を返せたらいいと思う。
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