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KAISEN
pool
しおりを挟む夜中。
食事を終えて、レストランを出る。
「ふー、美味しかったね!」
橋引が言い、俺も頷いた。
「そうだな。ステーキの焼き加減も絶妙だったし……何よりワインが格別だった」
彼女は満足げに言った。
「でも値段も格別だったけどね……」
クリスマスシーズンだけあって、あちこちにツリーが飾られ、電飾で輝いている。夜風が少し肌寒いが、それ以上に気分が高揚していた。
ただ……
いつもなら、こういう話を嬉しそうにする色は何か考え込んでいて、
まつりと夏々都も何か相談し合っている。
なんだか、微妙な空気。
さっきまではみんなわいわいと盛り上がっていたと思うのだが、何かを感じ取っているのかもしれない。
「どうしたんだ? そこの、三人」
短い階段を降り、宿に向かって進んでいると色が俺を見つめてきた。
そして、まっすぐに手を伸ばして来る。
俺は黙ってその手を掴んだ。
――――あの倉庫、どうも違和感がある。
感情が言葉となって伝わる。
違和感?
色の方を見るが、無表情で外からは感情がわからなかった。
――――何か実行するとしたら、夜中、明け方……
どういう意味だ?
普通の何もない倉庫だっただろう。
俺が見逃した何かがあの場所にあったのか?
――――あのとき運よく逃げられたのは、俺達の能力が知られて居ないから。
だけど、明らかに殺害する気で動いていた装備だった。
何も無い倉庫にわざわざガスマスクで出向いてくるのも、妙だ。
暴力性の高い装備を常日頃出してこれるという立場は、
基本的に警察や自衛隊などの組織にしか許されていない。
一部の自治体、自警団、暴力組織等が自主的に所持している事もある、が……
――――彼奴は、兵器開発部の話をしていた。
あの場所では当然のように危険物を取り扱っている。
だからこそあんな何万もする防護服をいくつも持っているんだ。
……よくわからないが、近くで、ガスマスクが必要なものを製造している、そう思っているという事か。
色と目が合う。彼は頷いた。
――――そう。恐らく、薬そのものを。
そして、『プール』を持っている。
昼間の輸出とは違って、内部にプラントが存在する、か。
(確かに立地は良さそうだけど)
あ。此処での良さそうというのは別に土地代が高いとかじゃなく、
あの場所が住宅や繁華街から離れた誰も来ない場所にあり、港が近く、輸出入品の行き来も盛んだという意味だ。
それでいて、設備が全て高いセキュリティーという事も無さそう。
何かが紛れたところで食品にでも偽装すればそう分かりはしないだろう。
――――カムフラージュの為に、昼間は通常の薬を輸出している可能性もある。
「うーん」
デートって、なかなかロマンチックにならない気がする。
「どうした?」
思わず唸った俺に、色が不思議そうにする。
「いや……なんでもないよ」
あいつに気は無さそうだったし、まぁ、いいか。
苦笑いする俺を、色が見つめている。
2026年1月14日16時49分
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