かいせん(line)

たくひあい@あい生成

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KAISEN

送別会2

 手を引かれて戻ると、大きなテーブルにはすでに様々な料理が並び始めていた。
所長はもうビールを一本空けているらしく、顔を真っ赤にして花子さんに絡んでいる。
「いやー! ほんとにお前たちは最高の社員だった!」
「所長ぉ、泣きすぎ~」花子さんが慣れた様子でハンカチを差し出している。

「見てみてー! おいしそうでしょ」
橋引が給湯室からやってくる。
彼女が持っている皿には、手作りだというたこ焼きとチョコバナナが山盛りに盛られていた。
「おいしそう……縁日?」

刺さっているつまようじは、わざわざ画用紙で手作りしたらしい『ネジ太』を象った飾りがついている。
元彼?がいっぱいいるけど、これはこれでいいんだろうか。

「よくみてよっ、こっちがネジ太で、こっちがネジ子で、
こっちがロクレン君で、こっちがタイラちゃんで」
「あ、ほんとだ」




「よし! ケーキも運んじゃおうぜ!」
 界瀬が得意げに切り分けたケーキを持ってきた。イチゴがたっぷり乗ったショートケーキは見事なもので、思わず感嘆の声が漏れる。
「おぉー!プロだよこれは」
「マジで? へへっ。ケーキ屋さんにでもなろっかな?」


ピンポン、とインターホンが鳴り、ドアを開ける。
まつりと夏々都が、ドーナツの入った箱を持って立っていた。

「こんにちはー」

「来ちゃった」









一番仲の良い橋引が「いらっしゃい」と手招いている。「あがってあがってー!」
俺も二人に手を振った。

二人が靴を脱いで上がってくる間にも、どんどん食べ物が増えていく。たこ焼きの香ばしい匂いが漂う中、「ケーキ食べたい……」「ちょっと待ってろって。まずは乾杯だろ」というやりとりが続く。

「おせちみたいになってきたね」
と橋引が楽しそうに笑った。
所長は「もういいから乾杯しようや!」と叫んでいた。
花子さんも「そうだねぇ」と苦笑いしながらお酒の準備を始めた。



グラスが全員に行き渡るのを待って所長が改めて乾杯の音頭をとった。未成年もいるので、ジュースとお茶がメインだ。
「かんぱーい!」
あちこちでグラスが重なり合う音がする。美味しいと評判のチーズケーキがあると聞きつけたまつりが、「おいしい!」と早速感想を言っていた。

夏々都君は黙々と、たこ焼きと寿司を交互に食べている。





しばらくは他愛もない話題で盛り上がり、酔いも回ってきた頃。
唐突に菊さんが立ち上がって何か歌い出した。

「じゃあ一曲歌います!」
BGMとして流れていた静かなジャズソングから突然アップテンポの陽気な音楽へと変わる。
「えぇ!?」
呆気にとられる僕たちをよそに、花子さんが拍手をして煽っている。
「おぉー!」
橋引やまつりも便乗して「もっともっと!」と言い出した。
次第に皆が手拍子を打ち始めると、ついにはみんなで歌うことになってしまう。


 お前もと言われたのだが、俺は考えたいことがあり、遠慮した。
皆をデスクに座って眺めていた。
「藍……」
あの声。それにアレを送ったのは、藍なのか?
何故急に、助けてくれたのか。


菊さんのデスクのカレンダー横
に視線を向けると
『要りません』と付箋を貼られた煙草の箱がある。藍が渡して行ったものらしい。

「なんで煙草なんだ?」

ふと隣を見れば、ケーキの前に座っていたはずの界瀬がいつの間にか近くに来ていた

「界瀬……」
肩が触れるほどの距離で、彼は楽しそうに騒ぎを眺めている。
その横顔はどこか大人びて見えた。
「……なんか、変な顔してるぞ、疲れたか?」
こちらの視線に気づいたのか、彼が小さく笑った。
「べつに」
少し、あの映像を思い出してしまっただけだ。俺は苦笑いしながら答える。

「煙草はさ。前に、西尾さんと、盗作について揉めたことがある。
それで、藍が言った。
ゆう子さんたちの芸術は副流煙みたいに広がって、害にしかならない、と」

それでも、市場が続く限り彼らは辞めようとはしなかった。
友情、一番の友だち、そんな風にずっと特定保険を誤魔化している。
仲の良い人なら尚更、自分たちを見せ物にしないはずなのに。


「その返しが、西尾さんが藍宛に大量に送りつけてきた煙草ってわけ」
「うわ……大人げないな」


今で言うと、特定保険を利用していて、
その情報のせいで自分と藍が間違われて迷惑だった!という意味のわからない因縁もあったりするし、煙草も煙草だし。
この手の奇行は様々あるが、まぁ長くなるから割愛しよう。


「ところで、さ」
言いながら彼はすっと距離を詰めてきて耳元に唇を寄せた。

急に何かと思うより早く、
吐息混じりの低い声が鼓膜を震わせる。
「後で、この前の続きしようぜ」

脳天が痺れるような衝撃と共に全身の血流が一気に加速していく感覚に襲われた。
「馬鹿。なんで、今言うんだよ……!」



「はーい、皆、注目!」
マイクの音量がでかくなり、俺たちは正面を向いた。
ボードや標語の飾られていてたスペースに書いてある
「お別れパーティ!!! 特異能力科よ永遠に!!!!FOREVER!!」
を背景に所長がみんなの注目を集める。






「此処で、えー。重大発表があります」
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