149 / 307
Commentary
麻倉会と光福
しおりを挟むそこでは晶が、机たちからやや離れた壁際、隅っこにある冷蔵庫を開けていて――――アルミホイルに包まれた納豆ご飯を手にしていた。
「此処来るまであんま飯食って無かったからさ、腹減ってしゃーねぇ」
横転。
「それにしたって、なんだこの異臭! お前、何入れたんだ」
「なにって、別に普通だろ、なんとかのタレとか、そういう」
晶は、近くの事務椅子に腰かけて、わずらわしそうに俺を見上げている。
「晶」
色が近付いて彼に問いかけた。
「光福に居たの?」
晶は、少し色を見た後、おにぎりにかぶりつきながら言う。
「んにゃ、俺は山口さんや、キムと作戦に参加していたんだ」
「山口さん?」
「あー……」
晶が言葉を濁す。
「晶。山口さんって、麻倉会の人でしょ? なんで、光福のキムといるの?」
「うー……」
「えっ、まって、誰」
俺は慌てて色の肩を掴む。
しかし、色は晶を見つめたままだった。
「それは、木部さんが、だな――」
「晶!!」
色がいつになく怒っているように見える。
「いつから、麻倉会と光福が繋がって居たんだ」
「……」
晶はご飯を飲み下し、数秒、間を置いてから言う。
「俺だって、その辺はよく知らない。ロシア辺りに居たときに会ったんだ。
脱北者が中国に逃げて中国人として生活しているってのは聞いた事があるけど、そういう関わりなんじゃねぇの。結局のところ辞めちまえばそんなの関係ねぇんだから」
要は山口さんと、キムの所属していたどちらも同じくらい警戒しなければならなくて……本質としてはこれも宗教以前に軍事的戦略とかそういうのに該当しそうってことか。
言われてみれば確かに、自主的に辞めるか、出来なくともテロ事件のゴタゴタなんかで捜査されるより先にあちこちに散ってしまえば、宗派や教義がどうのじゃないという気もするように思う。
(キムって誰なんだ)
晶が嫌そうに言いながら立ち上がった。
「テロの起きる前、武器と鎮痛剤を運び出していた―――と、木部さんは言っていたけど、恐らくその時点で暴力団と交流があったんじゃないか」
蛇口で手を洗っている。水の音がする。
「俺はそのとき、別に、普通について行っただけだ。麻倉会と光福の信者がどう繋がって居たって知った事じゃ無い」
「他の被害者の話は!」
色はその後ろで強めに問いかけた。
余裕のない声。
「めぐみさんの事を考えるように仕向けたのか。拉致された場所が違うはずだ!」
晶は何も答えず、デスクのポットの方に向かうとお茶を入れた。
静かに飲み始める。
――――場の空気が静まる。
確かに、暴力団やマフィアの取引という体で宗教とは別につながりを持つという手もあるのか。
あそこは日本転覆計画なんて立てていた程だから、そういう関わりがあってもおかしくはない。
「色ちゃん……」
橋引が泣きそうな声で彼を呼ぶ。
「落ち着いてよ、この人に聞いたって、たぶんそこまでは知らされて―――――」
「なんで、知りもしないで、勝手な事を言ったんだよ!!」
色が取り乱すのは、最近は殆ど無い事だった。
久しぶりに見た。
晶は不思議そうに、なんでそんなに怒っているのかと色を見上げた。
「はぁ? この程度、講演で適当に安心させる与太話じゃないか」
「真実を探している人だって居るんだ!この程度ってなんだよ、何故邪魔になるってわからない!」
――――俺は、色の事を知らない。
知っている事もあるけれど、普段何を考えて来たのか、殆ど知らない。
色が言いたかったこと、思って来た事。
だから、あのときも、引き留めるような言葉が浮かばなかった。
2025年6月16日1時23分
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
天の求婚
紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。
主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた
そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた
即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語
僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる