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Commentary
いい人には不向きな仕事
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「やれやれ。気性の荒い奴」
色が外に出ていったのを見送り、晶は苦笑する。
それからドカッと椅子に腰掛けた。
「急に怒るなんて、せっかく来てやったのに」
「誰のせいだと……」
色が常に事件に向き合って来たことを思えば、「その程度の与太話」がとても笑えるものではなかったことは明白だ。
俺もちょっと驚きはしたけれど、考えてみれば当然の事である。
俺にも、藍鶴色にも、晶は同じように、
信頼関係を築けるとは言い難い態度で接してきた。その上、本人はケロッとしてるもんだから被害者みたいな面をし始める。
「今のは先輩が悪いよ」
橋引までそんな事を言うので、晶は、俺のせいかよ?と苛ついていた。
「どう考えたって俺は悪くないだろうが。超能力者なんて居るわけ無いんだから」
――――あぁ。まただ。
もう、立ち直ったはずなのに。
イライラし始める晶を見ていると、沸々と怒りが湧いてしまう。
過去に、「お前何しに来たんだよ」と俺が言ったときと同じだ。
晶の本質は変わっていない。
「あぁ、思い出したわ
この仕事は向いてるのに、人間関係だけクソだったんだよな。だから出ていかざるを得なかったんだ」
自分は悪くない。
そう言って常識を盾に言葉を振りかざし
、罪悪感で抵抗しないでいた色や、能力者の存在を何度も、何度も、傷付けた。
『まぁ、彼の言葉にも一理あるからねぇ?』
「いい加減にしろよ!!」
だから、だから、だからだから
「お前、昔からさ、なんなの?
こんなとこにまでわざわざ、来て、言うことがそれかよ!?」
「カイちゃん!」
少女がしがみついているのに気付き、我に返る。
身体が前のめりになっていた。
「ごめんなさい、私が無理を言ってしまったの。組織について、知っていると思ったから」
「……橋引」
彼女の辛そうな顔を見ていると、少しだけ冷静になってくる。
俺も最初は少しだけ期待したんだ。
成長したんじゃないか、って。
もう何年も経ったし人として多少はマシな性格になったりしているんじゃないか。
「だってそうだろ、未来なんかわかる訳無いし、スピってる可哀想な奴に事実を言って何がいけない?」
でも、彼は全く変わって居なかった。
どうしてそんな事が平気で言えるんだろう。
自分の視点だけで、周囲に振りかざしてまで、晶が何度も否定して、自分を守るのに使ったもの。
藍鶴色には、それしか、なかったのに――――
思わず力が入る俺と、困ったような顔でそれを止めている橋引。
「……いー人、なんだけど、ね。あはは」
彼は『自分だけの正しさ』に囚われている、幼稚なだけの人種。
マニュアル通りの世間一般の常識を信じているだけ。
それを誰にでも振りかざすことに対して、個々人そのものに人道的といえるかや、環境の違いで生じる罪悪感への呵責を一切感じ無い――――無知以前の想像力の無い人物に過ぎないという事は、分かっている。
「未来から攻撃でもするのか?おう、やってみろ――――よ」
パン!
と高い音が響いた。
橋引が浮かせたラップの芯が、晶を叩いた音だった。
「あ、ごめん、叩いちゃった」
晶が唖然としている。
「色ちゃんを否定しないと、存在意義が無いからってさ。そうやって都合のいいとこだけ自分の手柄にしてたんだね」
「橋引……?」
「他の先輩は、いい人っていってたよ。でも、わかった、やっぱそうだったんだ」
「あー、あー!そっか、色ちゃんが未来について他人に言われるのが苦手なの知ってて、偉い人が来るときだけわざわざ何度も『こいつは違う』とか名指ししてたのってそういう事か、自分が目立たないから」
一体、何の話だろう。
橋引はずっと前から何か思っていたという態度で
「あー、あー!そっか、色ちゃんが未来について他人に言われるのが苦手なの知ってて、偉い人が来るときだけわざわざ何度も『こいつは違う』とか名指ししてたのってそういう事か、自分が目立たないから」
と、納得している。
「何するんだ!」
「どうどう」
晶が激高して掴みかかろうとするのを、今度は俺が止める。
橋引は前から色の事になると過激なところがあったが、昔の事件の話だろうか。
「ウマかよ」
ギリギリ掴みかかって居ない晶が俺を睨む。
代わりに殴りかかろうか一瞬考えたが、収拾がつかなそうなので堪える。
橋引が唇を尖らせる。
「本当、どうしてそんなウソ吐いたの…… 未来、信じて無いんでしょ? だったら貴方の話な訳が無い。
それさえ隠す為に自分で解釈してしまったという事? めぐみさんの事だって調べもしないものね。……それで回っていくなんて状況が異常なのか。だから、色ちゃんも怒っちゃったし……」
「はぁ? だから何が悪いんだよ!相手が誰だろうが弔う気持ちはいい事で」
「めぐみさんの講演を暴力団が資金源にしてるって話もあんのよ? いわばブランド扱い!中身も知らない奴が同じように反社に巻き込んでくると思わないわけ」
晶と橋引が言い争いを始める。
そういえば、奴らが反社なら乗っ取ろうとする企業と、めぐみさん以外の隠蔽が関係するかもしれないなと漠然と思った。
ドアが開いて、また人が入って来る。
「なんか、賑やかだな」
菊さんと花子さんだった。
色が呼んだのだろうか?
晶が、何か挨拶している。色を追いかけるつもりが、橋引と二人にしておくのもと考えて居たのでちょうど良いタイミングだ。
「この場任せて良いですか?」
と何も知らない菊さんに言う。菊さんは不思議そうに「出掛けるのか?」と聞いた。
「ちょっと。行ってきます」
2025/06/191:43
色が外に出ていったのを見送り、晶は苦笑する。
それからドカッと椅子に腰掛けた。
「急に怒るなんて、せっかく来てやったのに」
「誰のせいだと……」
色が常に事件に向き合って来たことを思えば、「その程度の与太話」がとても笑えるものではなかったことは明白だ。
俺もちょっと驚きはしたけれど、考えてみれば当然の事である。
俺にも、藍鶴色にも、晶は同じように、
信頼関係を築けるとは言い難い態度で接してきた。その上、本人はケロッとしてるもんだから被害者みたいな面をし始める。
「今のは先輩が悪いよ」
橋引までそんな事を言うので、晶は、俺のせいかよ?と苛ついていた。
「どう考えたって俺は悪くないだろうが。超能力者なんて居るわけ無いんだから」
――――あぁ。まただ。
もう、立ち直ったはずなのに。
イライラし始める晶を見ていると、沸々と怒りが湧いてしまう。
過去に、「お前何しに来たんだよ」と俺が言ったときと同じだ。
晶の本質は変わっていない。
「あぁ、思い出したわ
この仕事は向いてるのに、人間関係だけクソだったんだよな。だから出ていかざるを得なかったんだ」
自分は悪くない。
そう言って常識を盾に言葉を振りかざし
、罪悪感で抵抗しないでいた色や、能力者の存在を何度も、何度も、傷付けた。
『まぁ、彼の言葉にも一理あるからねぇ?』
「いい加減にしろよ!!」
だから、だから、だからだから
「お前、昔からさ、なんなの?
こんなとこにまでわざわざ、来て、言うことがそれかよ!?」
「カイちゃん!」
少女がしがみついているのに気付き、我に返る。
身体が前のめりになっていた。
「ごめんなさい、私が無理を言ってしまったの。組織について、知っていると思ったから」
「……橋引」
彼女の辛そうな顔を見ていると、少しだけ冷静になってくる。
俺も最初は少しだけ期待したんだ。
成長したんじゃないか、って。
もう何年も経ったし人として多少はマシな性格になったりしているんじゃないか。
「だってそうだろ、未来なんかわかる訳無いし、スピってる可哀想な奴に事実を言って何がいけない?」
でも、彼は全く変わって居なかった。
どうしてそんな事が平気で言えるんだろう。
自分の視点だけで、周囲に振りかざしてまで、晶が何度も否定して、自分を守るのに使ったもの。
藍鶴色には、それしか、なかったのに――――
思わず力が入る俺と、困ったような顔でそれを止めている橋引。
「……いー人、なんだけど、ね。あはは」
彼は『自分だけの正しさ』に囚われている、幼稚なだけの人種。
マニュアル通りの世間一般の常識を信じているだけ。
それを誰にでも振りかざすことに対して、個々人そのものに人道的といえるかや、環境の違いで生じる罪悪感への呵責を一切感じ無い――――無知以前の想像力の無い人物に過ぎないという事は、分かっている。
「未来から攻撃でもするのか?おう、やってみろ――――よ」
パン!
と高い音が響いた。
橋引が浮かせたラップの芯が、晶を叩いた音だった。
「あ、ごめん、叩いちゃった」
晶が唖然としている。
「色ちゃんを否定しないと、存在意義が無いからってさ。そうやって都合のいいとこだけ自分の手柄にしてたんだね」
「橋引……?」
「他の先輩は、いい人っていってたよ。でも、わかった、やっぱそうだったんだ」
「あー、あー!そっか、色ちゃんが未来について他人に言われるのが苦手なの知ってて、偉い人が来るときだけわざわざ何度も『こいつは違う』とか名指ししてたのってそういう事か、自分が目立たないから」
一体、何の話だろう。
橋引はずっと前から何か思っていたという態度で
「あー、あー!そっか、色ちゃんが未来について他人に言われるのが苦手なの知ってて、偉い人が来るときだけわざわざ何度も『こいつは違う』とか名指ししてたのってそういう事か、自分が目立たないから」
と、納得している。
「何するんだ!」
「どうどう」
晶が激高して掴みかかろうとするのを、今度は俺が止める。
橋引は前から色の事になると過激なところがあったが、昔の事件の話だろうか。
「ウマかよ」
ギリギリ掴みかかって居ない晶が俺を睨む。
代わりに殴りかかろうか一瞬考えたが、収拾がつかなそうなので堪える。
橋引が唇を尖らせる。
「本当、どうしてそんなウソ吐いたの…… 未来、信じて無いんでしょ? だったら貴方の話な訳が無い。
それさえ隠す為に自分で解釈してしまったという事? めぐみさんの事だって調べもしないものね。……それで回っていくなんて状況が異常なのか。だから、色ちゃんも怒っちゃったし……」
「はぁ? だから何が悪いんだよ!相手が誰だろうが弔う気持ちはいい事で」
「めぐみさんの講演を暴力団が資金源にしてるって話もあんのよ? いわばブランド扱い!中身も知らない奴が同じように反社に巻き込んでくると思わないわけ」
晶と橋引が言い争いを始める。
そういえば、奴らが反社なら乗っ取ろうとする企業と、めぐみさん以外の隠蔽が関係するかもしれないなと漠然と思った。
ドアが開いて、また人が入って来る。
「なんか、賑やかだな」
菊さんと花子さんだった。
色が呼んだのだろうか?
晶が、何か挨拶している。色を追いかけるつもりが、橋引と二人にしておくのもと考えて居たのでちょうど良いタイミングだ。
「この場任せて良いですか?」
と何も知らない菊さんに言う。菊さんは不思議そうに「出掛けるのか?」と聞いた。
「ちょっと。行ってきます」
2025/06/191:43
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