かいせん(line)

たくひあい@あい生成

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Commentary

詐称の代償

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・・・




 事務所内は現在、暇だ。
所長の「お客さん」だと言って彼女と蛇さんが通されたが、肝心の所長は来ないし藍鶴色や界瀬が居ないしで、かれこれ30分程待たされている。


晶と共に蛇さんと遊んでいた撫子がふと、我に返る。


「あれぇ?そう言えば、藍鶴色が見えないね?」

晶があー……と気まずそうに目を逸らす。
「さっきまで居たのに」



菊がこそっとソファの背もたれから彼にアドバイスした。

「斧野晶君さ、いー加減、今までお前が嘘吐いてたって事、謝ったらどうなんだ? もとはと言えばそのせいなんだから」

彼が吐いた嘘が、色のやって来た事を勝手に私物化、否定するようなものだったので、出て行ったというのがわりと真相なのだが、彼からすると「今そんな事言われてもなぁ」という感じであまり重大に捉えていないようだった。

「今まで、ってそんなに嘘を?」
撫子が聞き返すと、彼もまた、困った表情になった。
蛇さんが彼女の着物の裾から首をかしげている。

「い、いや、違う、違う! 嘘なんて無くってぇ。行き違い?普段は仲良しなんだよ」
「なんかあったの?」

完全に面白がっている菊が苦く笑った。
「罪状が多岐に渡り過ぎて逆に言い辛いな」
庇う気は無いらしい。

「いい奴なんだけど、ね」

これまで吐き続けて来た嘘は沢山ある。
学歴をずっと、小卒を大卒だと詐称していた事。

他の被害者にまで迷惑をかけたり、これはめぐみさんだ、これは俺の領分だとあちこちで言いまわって他の仕事を奪ったり、巻き込んだりで治安を悪化させた事。
細々とした嘘や備品の私物化。

それらを隠す為に他責を繰り返して来た事。




「色だって、仕事のちょっとしたミスとかどうでもいい間違いなんか気にしちゃいない。それよりも今まで話を逸らし続けて来た
これらさえ認めて、皆の前で正直に全部告白、ごめんなさいすれば、許してくれる可能性も0.00000000000001くらいあると思うぞ?」

「……けど、ジンだってやってた。俺だけじゃない」
晶が不満そうにドカッとテーブルに足を乗せる。

花子はというと、のほほんと三杯目のコーヒーをカップにそそぎながら、それらを遠巻きに見ていた。
「ねー。でも、あっくんの学歴詐称って今関係あるの?」
自身のカップを向けて来た菊の近くでのんびりと訊ねる。

菊は地味にあるんだよな、と苦笑いした。
「前に聞いたんだけど、依頼者の信用問題もあるが、色の方にも迷惑が掛かってた。
大学で出来る事と同じ事をするのか、みたいな?」

「なにそれ?どういう事?」

「あー……なんていうか何処でも権威主義者みたいなのがいるんだけど、そういう依頼者のときって、どんな大学を出ているかで話になるかならないかって言い出すんだよ。で、晶が吐いた嘘っていうのは今思えば、
その場面で自分が目立つように、色よりも――――」

「うるさい!!」

晶が立ち上がると、何故か足元に猫が来た。
にゃー? とちょっとびっくりしたように口を開けている。

「その晶の対応が悪くて結局めちゃくちゃになったんだけど、依頼者も大学名で決めてるもんだから」

「うるさいって、言ってるだろ!」

晶が菊の胸倉を掴む。
晶よりも大柄な彼は特にひるむことも無く、

「『あんな嘘を吐かなければ、事件に関するいい話が聞けたかもしれないのに、全部駄目になって勿体なかった』って。その頃から、なんでそんな嘘ばっかり吐くんだってこじれてて、たぶん、今日はそれで出て行ったわけだな」

「まぁ……それは、全員に正直にごめんなさいすべきでは」
撫子がドン引きしている。


「する訳無いだろ!まだバレて無いんだから」
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