新生月姫

宇奈月希月

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新月の運命

月界のアイドル・4

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 キレアはぐっと相手を睨み付けていた。
 目の前には、大剣を抱えた女が不敵な笑みを浮かべていた。
「あなたは……」
「ふふっ。聖界は私のだもの。キール様に、ナギサを連れて来てって頼まれたから」
 彼女は、楽しそうにけらけら笑いながら言うが、キレアは彼女が「キール様」と言ったことから、すぐに反乱軍なのかと把握した。
 そこへ、ナギサがやって来た。
「ナギサ様!?」
 驚くキレアを横目に、ナギサは「誰?この人?」とキレアに問う。
「……恐らく、反乱軍の人間かと。それより、ミレル総指揮官は?」
「あー……ちょっと姉貴が、レイに攫われたから、そっちの対応してもらってる」
 ナギサの返事に、「えっ!?」と驚くキレアだったが、それよりも早く目の前の女が口を開いた。
「あ、ナギサ!私、ずっとあんたと戦いたかったの。聖界一の剣術士なんでしょう?どれだけ強いのか教えてよ」
 そう言うと、女は大剣を抜いた。ナギサも反応して、腰から下げていた剣を抜く。
「待って。あなた誰?せめて、名乗ってからにしない?」
 ナギサの言葉に、女はにやりと笑った。
「私、サリア。サリア=ソール。反乱軍で将軍職についているの」
 そう言うと、勢いよくナギサに駆け寄った。
 ナギサは慌てて避けた。
 彼女が振るうのは、とんでもなく重そうな大剣で、軽々と振っているのだ。勢いのまま地面に大きな穴を残していく。
 ナギサはぎょっとするが、すぐに自分も剣を構える。
「キレア!すぐに他の軍人を下げて!私が対応するわ!」
「しかしっ!」
 そう止めるキレアの言葉も聞かず、ナギサはサリアと対峙した。
 サリアは大剣を使うだけあって力で押していたが、元々ナギサはアクロバットな戦い方を得意としているため、そのうちナギサの動きについていけなくなり、サリアはナギサから強い一撃を受けた。
「くっ!」
 左腕に思いっきり切り傷をつけられたサリアは、大剣を支えられなくなり、ごとりと落とした。

 一方、大人しく攫われていたフウだが、ひたすら走らされていることに苛立っていた。
「ちょっと!いい加減離しなさいな!」
 そう怒鳴ると、「うるせぇっ!」と返され、フウはついにぷつりといった。
 ぐっと足を止めると、その反動でレイがぐっとフウの方に引っ張られた。態勢が崩れたのを見て、フウは更にレイの足を払うと、レイは思いっきり地面に叩きつけられた。
 驚くレイだが、起き上がるよりも早く、フウがレイの胸をぐっと踏ん付けた。
「随分と口が悪いわね。王女に言う物言いではないでしょう?恥を知りなさいな」
 ばさりと扇を広げながら、平然と言うフウに、レイは唖然とする。
「プリンセス!」
 そう叫びながら走って来たスイに、フウは「遅かったじゃない」と答える。
 レイは必死でもがくが、フウはさらりとした表情だった。思いっきり踏んでいるため、全く動けない。
 スイの後ろからはグレンたちも来ていたため、フウはそのままレイを引き渡した。が、レイは往生際が悪く、かなり暴れ、拘束から逃れた。
 グレンに「大人しくしろ」と剣を向けられるが、レイは銃を向けた。
 スイは「プリンセス!」と自分の背でフウを守ろうとするが、それよりも早くフウは動き、目にも留まらぬ速さで蹴り技を入れた。それは寸分違わず、銃だけを蹴り飛ばす。
 驚くレイだったが、フウはその蹴り技の反動を使い、今度は手にした扇でレイの横っ面を思いっきり叩いた。
 再び地面に倒れるレイを見下ろしながら、フウが「捕らえなさい」と冷静に言い放つ。

「姉貴!」
 ナギサが慌てて駆け寄って来た。
「怪我はない?」
「ええ。あの男、顔が良いだけで全然強くなかったわ。あんな弱いなら、最初から悪いことなんかしなきゃいいのよ」
 フウは辛辣に言うが、ナギサは溜め息を吐いた。
 確かに、フウはナギサほど活発ではないため、あまり強いというイメージがないのだが、フウもカズエラの元で格闘技を習っていた。正直、そこまで武道に携わってない人間なら、あっさりと倒せるぐらいの強さがあるのだ。
「それで?ナギサの方は大丈夫だったの?あなたも戦闘になったのでしょう?」
「え?ああ……うん。逃げられたけどね」
 ナギサは再び大きな溜め息を吐いた。
 サリアは自分の分が悪いと判断すると、すぐに撤退したのだ。
 ナギサはキレアに、サリアの素性を調べさせるため、セイズへの報告をお願いした後、フウの元へとやって来たのだった。
 そこへグレンがやって来た。
「ナギサ王女、フウ王女。一先ずはこちらの安全は確保されましたので、お二方が明日の花祭りに備えて、お休みになられてください」
「こんなことがあったのに、花祭りは通常通りに行われるのね」
 フウは面倒そうに溜め息を吐く。
「……現時点での被害はわかっていますか?」
 ナギサがそう聞けば、グレンは頭を下げた。
「今のところ、民間人への被害はありません。また、大きな器物破損もないため、花祭りは問題なく行えます」
「わかりました。では、後のことは軍に任せます。ミレル総指揮官にもそう伝えてちょうだい」
「かしこまりました」

「ほう?では、失敗したと?」
 キールが頬杖をつきながら、笑った。
「も、申し訳ありません!」
 地面に頭がつきそうなほど下げるサリア。それを見下ろすキールだったが、「いや、気にするな。下がれ」と言い放てば、サリアは慌てて部屋を出た。
 キールは隣で平然と立っているメサイアに問うた。
「それで?ある程度はナギサに嫌がらせはできたのか?」
「いいえ。サリアはナギサ様と戦って、あっさりと引いたようですね。レイも、フウ様に蹴り飛ばされて、そのまま拘束されたようです」
 メサイアの報告に、キールは盛大な溜め息を吐いた。
「あの男はそもそも期待してなかったが……サリアはもう少し粘ってくれると思ったのだがな。当分、サリアには別任務を入れておけ」
「かしこまりました」
 メサイアは頭を下げたが、そもそもキールはこの結果を予測していたのだろうと考えていた。
 そう、ただの嫌がらせ。または、フウの戦力の確認か。そこまで考え、メサイアはすぐに考えるのを止めた。

 後日、何とか花祭りも終え、ナギサはセイズとキレアに向き合っていた。
「先日の件ですが、レイから何とか情報を得まして、反乱軍内部の話を吐かせました」
「あら?よく吐かせたわね」
 驚くナギサだったが、キレアは「まさか!」と声を上げた。
「全然吐いてくれなかったので、こちらから冥王に直接連絡を入れ、彼を冥王に預けました。それで、あちらに任せまして、情報だけをいただいた形になります」
「ああ……冥王ね。まあ、あちらならそれは納得ね」
 ナギサは思わず頭を抱えた。冥界側は、中立で普段は穏やかだが、たまに強引な場合があるのを知っているからだ。
「それで、この情報を元に、こちらも準備を」
 セイズの言葉に、ナギサはハッとすると、首を振った。
「いえ。これはこちらで預かるわ。大神様に直接報告の上、結界強化のお願いをしてくる。外から入って来なければいいだけなのだから。軍は、今まで通りでお願いするわ。念のため、パトロールは入念にやってくれればいいわ」
 ナギサの言葉に、セイズは一瞬眉を顰めたものの、すぐに「わかりました。よろしくお願い致します」とだけ返した。
 ナギサはただ、忙しくなるなと思い、そっと溜め息を吐いた。
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