新生月姫

宇奈月希月

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出会いと雪解け

孤高の華・3

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 その様子を笑顔で見ていたキョウノは、「じゃあ、ナギサとの挨拶終わったから、本題入ってもいい?」と聞きつつも、返事を待たずに話を続けた。
「ここに封印されていた重罪人、ガルラ=ミーキニアの脱走について、冥王が詳しい状況を知りたい、とのことで、今回俺たちが来たんだけど」
 その言葉に、カゲツは真面目な表情を浮かべると、すっと壁際の棚を指差した。
「あちらに、透明の球が一つありますね。本来なら、あそこにもう一つ同じものがあります。あれに封印し、ここで管理していたのです」
 そこまで言うと、ふっと息を吐き、思い出すように目を瞑り、話を続けた。
「あの日、ここにやって来たのは一組の男女、だったと思います。ここは神域ゆえ、あなた方が通ってきた池自体と、そこの扉に結界を張っており、かなり厳重なはずなのですが、それらを潜り抜け、対応する前に襲われたのです。とは言え、少しの間視界を奪われただけなのですが……その間に、封印していた球そのものを奪われました」
「二つ並んでて、一つだけ奪われたの?」
「はい。かなりの手際の良さですので、最初からガルラの封印を解こうとしていたのではないかと」
 ナギサの問いに答えるカゲツの話を、今まで黙って聞いていたダークが口を開いた。
「しかし、“神”が張った結界を破るって……できるのか?そもそも、封印の神の結界なんて、その辺の術士で何とかできるものじゃないだろ」
 ダークの言葉に、キョウノも同意を示した。
「俺もそれは気になってた。ただ、結界を破られたというよりも、一瞬だけ消されたという感じだろうな。異変に気付いた冥王の指示で向かった者の話によれば、結界は壊れてなかったようだし」
「消す?そんなことできるの?」
 ナギサの言葉に、キョウノは「うーん」と考えた。
「俺もやったことないからわからないけど、理論上できなくはないと思う。一瞬だけ穴を開ける、みたいな感じで、結界を潜り抜ければ、反応する時間はもちろん、魔力の消費も軽減できるだろうし。どっちにしろ、相当な手練れなのは間違いないかな」
 キョウノの言葉を聞き、今度はナギサが「うーん」と考える。
 ダークはカゲツに向き直った。
「他に何か覚えてないのか?」
「そうですね。……相手は水属性が得意なのではないかと思います。襲われた時も、水法術でしたから」
 カゲツが思い出すように言うと、ダークが今度はキョウノへと向き直った。
「キョウノ、水属性で相当な手練れって辺りで絞れるか?」
「えー、どうだろう。水属性は四大法術の一つだし、ポピュラーだからな。かなり広範囲すぎて」
「そうは言っても、神に対抗できるほどの手練れなんて、そうそういるもんじゃないだろ」
「それはそうだけど」
 ダークの言い分に、キョウノが苦笑いを浮かべながら、頬をぽりぽりと掻く。
 その様子を見ていたカゲツが、しゅんと肩を落としながら呟いた。
「申し訳ありません。私がもう少ししっかりしていれば、こんなことにならなかったのに」
 それにはダークが一番驚いたようで、慌てだした。
「い、いや、あなたが謝ることじゃない。そもそも、こんなことできるの一握りだし、そもそもそれだけの力があれば高い地位にいるはずだけど……そこは把握しきれてない俺たちにも非があるし」
 ダークのことをちらりと見たナギサは、相変わらず嫌悪感を含んでいるものの、彼らが言っていることも一理ある、というのを理解していた。
「神と同等の力か……」
 思わずぽつりと呟くナギサ。
 かなり限られてくるのは事実で、ましてや三大神と呼ばれる封印の神と同等の力となると、本当に一握りしかいない。“神”や“精霊”の類いでも、下位ではここまで上手くいかないだろう。正直、ナギサたち“代理人”はもちろん、“三大王”でも難しいと思うのだが。
 ナギサも、キョウノやダークほど知識はまだないだろうと理解はしつつも、最近叩き込んだ知識をフル回転させながら考えていると、カゲツがふと口を開いた。
「そう言えば、ナギサさんは“光の神”の力を持っていますよね?」
「え?ええ。まだ上手く力をコントロールできないけれど」
 突然言われたことで、驚きつつも答えるナギサだったが、カゲツは笑顔を浮かべる。
「我々、三大神のうち、“光”と“封印”が顔を合わせたのです。折角ですから、もう一人の“闇”に会われてはいかがですか?」
「え?」
 ナギサは思わず目を丸くした。驚いたのはナギサだけでなかったようで、キョウノもダークもカゲツに視線を向ける。
 しかし、すぐにナギサは眉を顰めた。
「闇の神は、魔界の守護神なのでしょう?……会いたくないわ」
 ナギサが嫌悪感を込めた声で言うと、カゲツは苦笑いを浮かべた。
 カゲツ自身も、ナギサの事情を知ってはいるが、随分と根深いことに頭を抱えるしかない。
「そうですか。わかりました。無理にとは言いませんが、いずれは会わねばなりませんから、覚悟は決めておいてください」
 カゲツはそうハッキリと言い切る。
 ナギサは表情を硬くしたのを、キョウノとダークは見逃さなかった。

 三人は冥殿に向かって歩いていた。
 キョウノが大きな溜め息を吐いた。
「あー、疲れたー。とりあえず、リキに報告したら解散しよう。俺、もうお腹空いたー」
「そうね。冥王に犯人を絞ってもらわないと、これ以上は動けないものね」
 ナギサも疲れたように、ふと息を吐きながら返事をする。
「……犯人がわかったら、忙しくなるしな」
 ダークの呟きに、キョウノは「そうだねー」と返しつつ、隣にいたナギサの肩を掴んだ。
「ちょっと!何するのよ!」
「まあ、すぐに見つからないとは思うし、それまでにはナギサも実戦で戦えるようになってるだろうし。ナギサは努力家だから、帰ったら実戦で戦える鍛練をしようと思ってるだろ?」
「当たり前でしょ」
 ナギサは苛立った様子で答えると、キョウノの手をパシンと叩いた。
「同じ過ちは繰り返さないわ。次こそは絶対、足を引っ張らないんだから」
「うん、期待してる」
 叩かれながらも、ウインクをしながら言うキョウノに、ナギサは益々イライラさせると、思わずキョウノの手の甲をギュッと抓った。
「ちょっと痛いって!」
「仕返しよ」
 そんな二人のじゃれ合いを若干呆れながら見ていたダークは、まだ見ぬ敵に一抹の不安を覚えていた。
「大事にならなければいいんだがな」
 その呟きだけが森の中に消えて行った。
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