戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第61話 女性と司祭

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2人は対峙したまま、一歩も動かなかったのだが、細路地と言えど人が来ない訳では
なかった。1人の女性が通り掛かった時に、勝負は決したのだった。

「きゃ~~斬り合いよぉ!」

好成は、背後から行き成り大声が聞えた事に、驚いて固まってしまったのだった。
その隙を衝いて相手が動いたのだ。好成は一瞬の遅れが生じた事に焦りを隠せない
でいると、相手は素早く懐から何かを取り出すと、足元に投げつけたのだった。

ボッフゥ~!

足元に投げられたのは、白い粉の様な物だったのだが、これが目隠しをするのに非常に
役立っていて、相手を捉える事が出来ないで居たのだった。そして、相手が居た位置か
ら、声だけが聞えてきたのだ。

「驚いて剣を抜いてしまったが、私は貴方と敵対をしたい訳ではない。今はまだ名
 を名乗ることは出来ぬが、時期が着たら、この事を誤らせていただく。」

そう言うと、尾行者は白い霧の中から消えたのだった。好成と通り掛かりの女性はと
言うと、霧に咽ながら細路地から大通りに、出てきていたのだった。

ゴホッゴホッ

2人は真っ白になっていた!女性が何やら言っているな?

「これって小麦粉じゃないの?何考えてるのよ!食べ物を粗末にして罰が当たるわ
 よ貴方!」

好成は、女性に対して釈明をしたのだった。小麦粉を投げたのは、対峙していた相手
であり、自分が投げた訳ではなく、襲われたのも自分だと釈明したのだった。

「そうだったのね。ごめんなさいね誤解しゃったみたいね!」

騒ぎを嗅ぎつけた町の警備隊の者達が、俺達の側に遣ってきたのだった。随分と身なりが
良い警備隊の者達だったのだ。着ている鎧は新しく、ピカピカに光っていた
それに、高価そうな剣を腰にさげても居たのだ。盾には紋章も入っていたのだが、
好成が紋章を見ても、何処の者かなど解るはずも無かったのだ。

「これは何の騒ぎだ?誰か状況説明出来る者は居ないか?」

警備隊の隊長らしき人物が、辺りの住人達に説明を求めていると、俺が先程まで話して
いた女性が、警備隊長の側に行き話し出したのだった。

「――そう言う事だったのか!ご協力を感謝する!また何かあったら警備隊本部ま
 まで知らせて欲しい。我等は白の精霊騎士団は住人の安全を脅かす者達を決して
 許さない!」

警備隊長は、そう言うと警備隊本部に戻って行ったのだった。

残された俺は、一生懸命に真っ白になった衣服を叩いていたのだが、一向に白が落ちな
いでいた。これは1回宿に帰って着替えた方が良さそうだなと、好成は思って居ると、
巻き添えを食らった女性が、好成の側に来たのだった。

「ねぇ~貴方!この近くに教会があるのだけど、一緒に行ってお湯を貰わない?」

嬉しい申し出であったのだ。好成は宿に戻るより、教会に行った方が近いし、用件
も頼めるので、女性の申し出を笑顔で了承したのだった。

「此処の教会はね、小さいけど三大宗派の1つなのよ!精霊教と言ってね。精霊と
 人間が、争わないでも暮らしていける世界を作って行こうと言うのが、精霊教の
 教えなの!素晴らしいと思わない?私は精霊教の信者なの!もしも良かったらだ
 けど、貴方も入信してみない?」

あっ......好成は、女性の申し出を丁寧に、凄く丁寧に断って本来の目的を果たすべく
教会の聖職者との面会を女性を通して、お願いしていたのだった。

「あら残念だけど、精霊教の信者の方達の為に、貴方は動いてらっしゃるのね!
 それは素晴らしい事だと、私は思います!貴方に精霊のご加護がありますよう
 に、お祈りしておきます」

女性は、そう言うと精霊教の聖職者の方を呼びに、教会の奥に消えたのだった。
暫くすると、教会の奥から女性と共に、聖職者の方が一緒に遣ってきたのだった!

「初めまして、私は此処の教会で司祭をしている者です。今日はどの様な用件で
 お越しになられたのですか?」

精霊教の司祭に、事情を説明すると、司祭は快く引き受けてくれたのだった。

「この島の住人の殆どは、精霊教の信徒です。その信徒が困って居るのならば、
 私共は、信徒の為に危険を顧みず、信徒の為に戦う所存です!」

一向宗の好成には、精霊教の教えは、何やら違和感を覚えるのだが、この司祭の
事は、少しだが気に入ってしまった様だった。聖職者と言う者達は、偉そうな事
を言うが、決して自分達は危険な場所には出ずに、安全な場所で人を使う輩だと
好成は思っていたのだが、この司祭は危険を顧みず、自分も前線に赴いて戦うと
言ったのだ。

「それで、信徒の遺骸は何時頃に、回収出来るのですか?私がもっと早く知って
 いれば、協力出来たのに、詳しい情報など町に居ては、何にも入って来ないの
 と一緒なのです!私が現地に赴けばよかった。」

司祭は情報の遅れを悔いていたが、この時代に便利な情報網など無い。司祭を攻め
る者など居ないのだが、司祭は自分が何もしなかった事を悔いているのだ。

「司祭様、人材の戦闘訓練が済み次第、人材と資材を現地に送ります。もしも司祭
 様がお望みならば、私共で貴方が戦える様にも出来ますよ!」

「私でも戦えるのですか?それはどの様にしてですか?信徒を守る為ならば、私は
 信徒と共に剣を取りますが、私は剣を扱えないのです。お恥ずかしい限りです」

「剣が駄目ならば、司祭様はシーランド銃を使えば宜しいのです!」

「シ....シーランド銃?」


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~アールブヘイムの常識講座~

小麦粉を狭い部屋や風通しの悪い洞窟などで、振りまいたりすると
粉塵爆破つが怒る可能性があります。

粉塵爆発と言うのは、可燃性の粉が部屋の中に広がる事で、部屋全体
に広がった粉に炎が燃え移り、その炎の力が大きくなった物と考えて
下さいね。

現代で粉塵爆発を起そうと思うならば、小麦粉やコピー機のトナー
カートリッジの中に入ってる黒い粉が、狭い部屋中に広がると爆発の
原因になってしまいます。危険ですので、実際にするのはお止め下さい!
当方は責任を持ちませんし!一切関知しません!

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