戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

文字の大きさ
72 / 122

第70話 天麩羅とマリネ

しおりを挟む
俺達は買い物を終えたので、宿に買った物を置きに帰る途中での事である。
時刻は既にお昼前近くになっており、宿で昼飯を食べるか、それとも、外で
食べるかを帰りながら決めていたのだった。

俺は3人が決めた場所で良いと言うと、3人がそれぞれ違う事を言い出したのだ。
芳乃は宿での食事を主張している。それに対して、他の2人はと言うと、静は昼に
デザート専門店のホイップで、昼飯を食べたがっている。流石に甘い物で、昼飯に
するのは嫌だったので、静の意見は流す事にした。秋が行きたい店と言うのは、
大衆食堂なる店で、値段もお手頃で料理の量も多いと評判だそうだ。

俺的には、秋の言っている大衆食堂なる店に行ってみたいのだが、他の2人を納得
させるだけの物がなければ、芳乃も静も自分達が行きたい店を変えないだろうな!

「あのね、あのね、大衆食堂ってお店でね、天麩羅が食べられるんだって!凄いよ
ね!あの南蛮人が日ノ本に伝えた料理が、此方でも食べられるんだよ!」

たった一言で、この場の空気が変わる程の一撃を秋は、3人に入れたのだった。
秋の一撃は、凄く重く俺達の心を砕いてしまているのだ。

「天麩羅って、あの天麩羅だよね?秋ちゃん本当に天麩羅が食べられるの?」

静は秋に、信じられないと言った顔をして、秋に詰め寄って聞いているのだが、
肩をつかんで揺らすのは止めような静!

「堺の豪商・今井宗久様のお屋敷に招かれた時に出された。あの料理があるのならば、
また食べて見たいですね。好成様!」

俺と芳乃は、父上のお供で堺の今井様のお屋敷に招かれた事がある。その時に出
された料理が、当時、まだ日ノ本に伝えられたばかりの天麩羅だったのだ。あの時に
食べた味が忘れられなくて、父上には何度も今井様のお屋敷に行こうと、子供ながらに
我が侭を言って父上を困らせたものであった。

そんな時は決まって、兄上や義姉上に叱られたものだ!弟の好時は、まだ幼くて
連れて行く事も出来なかったな.....好時も俺と一緒に此方側に来ていたら、幸せな
人生を送れただろうに、何でこちらに来てはいないのだ!

ふっと悲しい顔をしてしまった事を隠すかの様に、好成は空を見上げていたのだ。

「よし!決めたぞ。今日のお昼はをお腹一杯食べるぞ!」

鶴の一声とは此の事なのだろう!?俺が言うと3人は賛成をしていたのだ。

「好成サマ!そこの天麩羅料理で一番の人気は、魚の天麩羅を甘辛くて酸っぱい
ツユに付けた料理なのだそうですよ!一緒に食べましょう」

魚の天麩羅を甘辛で酸っぱいツユに付けた料理だと!それは是非とも食べて見たい
料理であるな!芳乃は何も言わないなと思い、芳乃を見ると芳乃は静かに口元だけが緩み、
少しだけだが涎が垂れているではないか!

「好成様、今は私を見ないで下さい!」

芳乃を見たら叱られてしまった。芳乃も食べたいのであろうな!そうと決まれば話
は早いのだ。秋がお奨めする大衆食堂なる店に向けて、一行は早足で向かったのだ
った。

お店に入ると、中は繁盛しており賑わっていたのだった。店員に席に案内されて席に付くと、
直ぐに秋が先程の料理と天麩羅料理を注文していた。

「うふふふ!初めて天麩羅料理を食べるから、楽しみで楽しみで胸が躍って居るのが、
自分でも解りますよ」

静はお淑やかなのだが、自分が好きな事には積極的だったのだ。好きな事には自分
から率先してするといった性格なのだろうな!お店に来る道中も、静が秋に道を聞
いてから、静が先頭になって店まで皆を連れてきたのだ。それだけ、静は天麩羅を
食べたいと言う事なのだろう!

芳乃はと言うと、静かに口元だけが緩んでいるのは、先程までと変わらずなのだが
顔だけは真剣そのものと言った。何とも珍妙な顔付きになっていた。

「だから、好成様!今は私を見ないで下さい!」

芳乃を見ると、怒られるので俺は食べ終わるまでの間は、芳乃を見ない事にしたの
だった。

「お待たせしました。此方が魚のマリネになります。」

秋が注文した料理で、魚の天麩羅を甘辛くて酸っぱいツユに漬けた料理が、早速に
テーブルに運ばれてきたのだった。鯖や鰯と言った魚を漬けていると思ったのだが
天麩羅にしている魚は、小魚だったのだが、小魚は全部丸ごと食べられる様で、
余す所がない食べ方であった。内臓類は流石に取り除かれていたが、その裂いた
場所からツユが良く滲みこんでいる。

「何これ!凄く美味しい、次から次えと口に運んでしまうわ」

「芳乃様、本当に美味しいですよね!私も止まりませんよ」

「芳乃サマ、天麩羅も来ますから、全部1人で食べたら後から来る天麩羅が
食べれなくなりますよ!」

3人は、それぞれに感想を言いながら食べていたが、食べる速さが何時もの倍も
早いのだが、俺が食べるマリネが無いのではないだろうか?小魚を一匹食べてい
る間に、3人は2匹から3匹は食べているのだ。そんなに早く食べても味が解るの
か解らないが、3人はマリネが非常に気に入った様であった。


......................................................

~中世の小魚のマリネ~

“小魚マリネ”は、コリアンダーとにんにくの抽出液を、にんにく胡椒で和える
だけのものだそうで、この作品の小魚のマリネとは少し違いますね。

この作品で、出されるマリネには酢が使われていますが、昔のマリネには使われ
ているかは不明です。ですから、現代風のマリネが向こうの世界にあった!っと、
思ってくれれば、全てが繋がる事でしょう!なるべくならば、当時あった料理を
作品に出したいですが、作者の勉強不足なのもあり。正直言うと味が解りにくい
ので、現代風の味付けでしか、表現が出来ないのです。コリアンダーとか知らな
いもの!


......................................................

「兄上.....姉上.....どこなんですか?」

この者の正体は、何者なのかは今は定かではない!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

処理中です...