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三日目

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 拳は朝起きるとそのまま登録所へ向かった。



 「拳殿!早いな!」

 「おはようございます。」



 ベンケンさんと合流すると俺たちはそのまま受付に向かった。



 「あら、ベンケンさんと拳さん?お二人は面識があったんですね」

 「そうじゃ、拳殿を村に連れてきたのは某ゆえ。今日は沼に行きたいんだが、よい依頼はあるかの。」

 「あー、今なら毒蜥蜴の毒袋の採集と大蜥蜴10体の討伐それと、沼の生態系調査ですね。」

 「うーん、せっかく拳殿と一緒だし、腕を見てみたいのでな討伐依頼かの?どうだろうか拳殿?」

 「はい、構いませんよ。」

 「では討伐ですね、お二人ともカードを提出ください。」



 そういって、拳達はカードを提出した。その時見たらベンケンは竹級だった。



 「はい、手続きは完了です。それではご武運を!」



 登録所をでて俺たちはそのまま沼に向かった。



 「どうだろう拳殿お互い一匹づつ倒しその様子を見学するというのは?」



 俺は極拳を見せるわけにはいかないと思っている。となると、問題は大蜥蜴の強さなんだが、そんな強いと思えないんだよな。でも初見は怖いな。



 「あの、先にベンケンさんからということでいいでしょうか。大蜥蜴討伐経験はないのですが。」

 「うむ。ではそういうことで行きましょうぞ。」



 グルルルル



 沼を進んで数分早速一匹目に遭遇した。でかい。体調は2メートルはある。ぐでーとした体勢でこちらをにらんでいる。

 ベンケンさんは腰の剣を取り出し大蜥蜴に突っ込んでいった。大蜥蜴もベンケンさんに突進していった。うわ、大蜥蜴結構早いな。小鬼なら一瞬で吹っ飛ばされそうだ。



 ザシュ!



 「え?」



 ベンケンさんは姿勢を低くし、蜥蜴の開いた口に刃を入れ、そのまま走り切った。蜥蜴は口にそって、きれいに二枚おろしされていた。



 「ベンケンさんすごいです!」

 「はっは!いやいや儂の主と比べればまだまだじゃよ。」

 「え?ベンケンさんは誰かに仕えているんですか?」

 「そうじゃ、ヨシツネン様に命をささげておる。」



 義経じゃねーか。牛若丸とか言われてるんかな気になるな。でも、微妙に名が違うしまあ違うか?



 「でも、主人を置いて僕と狩とかして大丈夫なんですか?」

 「……今は大丈夫じゃ」



 ん?なんか引っかかる言い方だが、正直そんなに深く聞けるほどの仲でもないし、ここは流しておこう。



そしてすぐ二匹目の蜥蜴が現れた



 「じゃあー次は俺ですね。」



 蜥蜴は立ち上がり威嚇してきている。拳はメリケンを握り蜥蜴に突っ込んだ。蜥蜴の突進を交わすと横っ腹に一発ぶち込んだ。蜥蜴が大勢を崩すとそのままアッパーで横に倒れる蜥蜴を上に力をかけ倒れなくし、がら空きの腹にフックを当てる。そのまま蜥蜴はうつぶせで動けなくなった。そして、とどめに小鬼同様ナイフで頭を一突きした。

 なお、なんで異世界に来たとたん拳が恐れずに戦えるのか。それは、根性が重要な世界で戦ってきたためとしか言えない。



 ギィーーーーーーーーー



 蜥蜴は苦しそうに息を引き取った。



 「お見事!なんという連撃、蜥蜴がかわいそうに思えるほどでしたぞ。」

 「ありがとうございます。」

 「いやー、拳殿は小梅級ではもったいないですな。梅級をじゃんじゃんこなして早く梅になるべき人材ですじゃ」

 「いやいや、そんなすごくないですよ!」

 「ですが、あの蜥蜴は防御力が高くて有名なのですじゃ、それをメリケンを付けてるとはいえあんな一瞬で再起不能にするのは相当な技術がいると思うんじゃが・・・」



 やばいな。同年代の天才クラスってのは本当だったんだな・・・



 「いやー、親(神様)に感謝です。」

 「そうかの?まあでは残りを倒すかの。ハッハッハ!」



 ベンケンさんは細かいことは気にしないタイプだ。

 そのまま拳たちは残りの大蜥蜴を狩りつくした。



 そんなこんなで最後の蜥蜴を倒したころである。



 〈拳技 崩を取得〉拳一ヒットごとに相手の防御力を低下させる。



 おお!ついに極撃以外の技を獲得したか!しかも防御力低下!これで硬い魔物が出ても大丈夫だな。



 「10匹討伐しましたな。では拳どの戻りましょう。」



 俺たちは帰路についた。



 「拳殿は優しいですな」

 「え?」

 「我が主人のことは聞かなかった。」

 「いや、それはまだ僕達立って数日ですし、そんな身内のことまで詮索できませんよ。」

 「ハッハッハそれもそうですかな。ですが、今日の拳殿戦いを見て私は完全に拳殿に心を開いてしまったようですじゃ」

 「なんですかそれ。笑」

 「もしよろしければ主の話を聞いてもらっていいですかな」

 「はい僕でよければ。」



 ベンケンさんのはなしをまとめると以下のとおり。

 主の名前は源ヨシツネンという。第一剣町町長の弟。二人がこの村に来たのは沼の先にある洞窟で修行の山籠もりをするため。




  修業は持ち物は剣のみで新しい剣技を取得するまでサバイバル生活することで1人でやらなければならない。とはいえ、すでに10日経っても戻ってこない。ということだった。ベンケンもすぐに捜索に行きたいが、仮に修行中であれば規則違反になり修行失敗になるのだという。



 俺の知っている歴史通りならもうヨシツネンは・・・



 「なんで試練を受けてるんですか?」

 「剣県では4つの町の代表を集め県の最強を決める大会があるんじゃ。これは、第一剣町の代表を決めるための試練なんじゃよ。」



 県は市が1つ町が4つ村が4つからなる。



 「それはお兄さんではダメなんですか?」

 「うむ。ヨリトモン様は政治は圧倒的なんじゃが、腕っぷしはヨシツネン殿の方が上なのじゃ。ゆえに第一町では内政をヨリトモン様が、軍事をヨシツネン様が担当しておられる。」



 「ということは、ヨシツネンさんがいなくなると軍事に被害が出るということなんですね?」

 「そうじゃ。そこでなんじゃが、明日中にヨシツネン様が帰還しないときは捜索に協力してほしいのですじゃ。実は今日も沼に来たのは沼に異常がないかを確認するためでもあったのですじゃ。異常があればすぐに洞窟に向かおうと思いましての。」



 うん。これは危険なにおいがプンプンするぞ。でも、こういうのは管理者としては見逃してはいけない気もする。



 「わかりました。受けましょう!」

 「真か!拳殿がいればどんな相手がいようとも楽勝ですな。がっはっは!」



  そのまま俺たちは登録所へ向かい依頼達成の報告を完了した。報酬は折半した。銀貨5枚だ。少しづつだけど、貯金も順調だな。

  明日はフリーだし、技の確認をメインに依頼をこなしていくか。
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