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十日目

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どこかの洞窟に、黒いローブをきた4人が話していた。

「うむ。剣第一村は失敗か。まぁ魔物化の適応期間は5日以上と分かったのだ。それが成果というところか。」
「そうですね、あとはこの黒玉で再生ができるという点ですかね。」
「私たちの悲願、術士による天下統一のためにもこれらも実験をしなくては。」

「次はいつ頃実験をしますかね?」
「貴重な薬だ。そんな簡単には実験できん。人の素材が弱いとできる魔物も弱いしな。」
「そりゃあ、そうでしょう素材となる黒王の確保は、そんな簡単に集まるわけがないのです。」
「ところで、ヨシツネンの死体はどうなったのです?」
「どうやら倒されたようだぞ。」
「そうですか、残念です。」

「剣県では警戒されるでしょう。となると、次はどの県ので実験をしましょうかねぇ。」
「だから貴重な薬といっておろう。魔物化自体は成功したんだ。焦らずともよいではないか。」
「そんなこと言っているからいつまでたっても武器に頼る者たちに侮られるのです。」
「おっとこれは喧嘩を売られているのかな?」

「やめろ、身内で争いなど脳筋共の権力争いと同じ程度としれ!」
「相変わらず君は手厳しいねぇ。」
「まぁ次の実験先はゆっくり決めようか。」

彼らはまだ知らない。ヨシツネンが生きていることを。彼らはまだ知らない拳が魔物化を解除したことを・・・


「んー、良く寝たぁ。」

日が昇りそのまぶしさで拳は目が覚めた。どうやらみんなも目が覚めているらしい。

「皆さんおはようございます。」
「「おはよう(♡)」」
「朝食はパンと干し肉だし、馬車で移動しながら食べましょうぞ。」

拳たちは野営の片づけをし、馬車に乗り込んだ。

馬車に乗って、3時間ほどたった時だった。

「おい、その馬車止まれ!」

!?

「命が惜しけりゃ積荷を馬車ごと置いてきな。」

「うむ。盗賊のようですな。」
「数は15ね♡」
「倒しますか?」
「それがいいと思いますぞ。」
「拳ちゃん人を殺したことある?♡」
「いえ、ありません。殺すんですか?」
「魔物と同じことよ、いいたいことわかるでしょ♡」
「あーなるほど。」
「無理しなくてもよいですぞ?」
「いえ、とりあえずやってみます。これからも必要になりそうですし、いつまでも逃げるわけにはいかないので。」

魔物と同じ。つまり、今回みたいな周囲に収監できる場所がない場合には二次被害を防ぐためにも殺さなければならないのだ。重傷を負わせて放置ということもできるが、その場合はかなりの苦しみを経たのち死亡する。それは逆に酷である。ゆえに逮捕できなければ殺すことになるのだ。

「おい!べらべらしゃべってんじゃねぇ、さっさと馬車から降りろ!」

拳たちは馬車降りた。

「へっへ、素直じゃねぇか。安心しな命(たま)までは取らんよ。お前たちみたいなのはある意味資源だからなぁ。へっへっへ。」

スッ

と盗賊が話し終わると同時にベンケンが首をはねる。それを合図とするように拳たちは戦い始めた。

乱戦となれば威がかなり有効だな!

ゴンゴン

拳は威を常に放ちつつ盗賊たちに殴りかかる。最初は4発ほど必要であった攻撃が次第に3発2発と少なくなっていく。常に威を放つ故に時間がたっても威力は衰えない。

「な、なんだこいつだんだん強くなっていやがる!」
「そいつ拳闘士だ。威を発動しているに違いない。威は短時間しか効果がないはずだ。距離をとれ!獲物はこっちの槍の方が長いんだ!」
「む、無理だ!こいつ早すぎる!」

拳は自慢のフットワークで常に足を動かし盗賊を責めていた。数にかまけて油断していた盗賊は反応に遅れ拳の左ストレートの餌食になっていく。
そして、拳は最後の5人目を倒した。

「こちらは終わりました!」
「わたしもよぉ♡」
「こちらもですじゃ。」

拳たちは開始10分で盗賊を壊滅させていた。

「盗賊のアジトとか探す?♡」
「俺は先を急いだほうがいい気がするんですが。」
「うむ、儂もじゃ。」
「私もそれでいいわぁん。アジトって不潔だし♡」

ここで盗賊のアジトに行き獣魔や奴隷を手に入れるとかいうテンプレは残念ながら起きない。

こうして拳たちは再び歩みを進めた。

「拳ちゃんに戦っているところ見たけど本当に梅級なの?すごい立派だったわよ?♡」
「拳殿はわしが初めてあったころから素晴らしい拳闘技術を有しておりましたぞ。」
「まあ、探索者になる前から日々鍛えてたんですよ(喧嘩だけど)。多数人との殴り合いなら結構自信あります。」
「あらぁ、じゃあ私も気を付けなくちゃ・・・♡」

なんでだ?今貞操の危険を感じた。

「そいうえば、クフリン殿はなぜ剣県へ?」
「商人さんの護衛任務だったのよ。♡」
「そうだったんですね。」
「拳ちゃん達はどうして拳県へ?♡」
「知人の治療方法を探しにいくためです。」
「なるほどねぇ。あの県医療大県ですものね。治療法見つかるといいわねぇ♡」
「はい!きっと見つかります!」

この日はこの後特に何も無く拳たちは馬車を進めた。
明日は訓練をしたいな。拳はそんなことを思いながら眠りについた。
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