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王都編
ゴブリン捜索隊
しおりを挟む俺達は朝目覚めると朝食を済ませ、ギルドへ向かった。
日本にいた頃より人間らしい規則正しい生活をしているせいか、体調は万全だ。
「タロウさん達おはようございます。」
「おはよう。人員は確保できましたか。」
「はい、できましたよ。女性が2名です。」
「えっ?女性?男二人に交じるなんていいんですか?」
「お二人なら平気でしょう。それにゴブリンに女性が捕らえられている可能性も有りますから。」
「なるほど。」
ビオさんのケースのようなことが起こったことを想定しているようだ。
「そうだ。ビオさんの件ですが、18時ギルドでお願いします。」
「承知しました。あっ、他の冒険者の方も揃ったようですよ。」
後ろを振り替えると金髪と茶髪の女性がいた。俺は、挨拶をする。
「おはようございます、今日一緒に行動するDランクのタロウです。こちらは仲間のスラです。」
「同じくDランクのスラだ。よろしく。」
「私はララ。Cランクだ。よろしく。」
「私はリリィ。Dランク。よろしく。」
「早速だか行動の予定を決めよう。一応ランク的には私が一番上だし、まとめ役を引き受けるつもりだが、よいだろうか?」
「「「意義は無し(い)(です)。」」」
「ありがとう。では、こういうのでいいだろうか…」
この場での話し合いで決まったことは以下の通りだ。
剣士であるスラさん、ララは、前衛。斥侯であるリリィは、スラゴンと共にパーティーの誘導、後衛は俺。なお、リリィは風、ララは、火の魔法が使えるらしい。
捜索ルートについては、まず林を回り、その後森へ向かう。ギルドには17時過ぎに戻る捜索になる。キングとの交戦が避けられない場合は前衛が足止めし、リリィを報告に向かわせる。
俺達はララのこの方針に特に反論することなく予定はすぐに決まり、出発した。
「あの、ゴブリンキングって珍しいんですか?」
俺はララに尋ねる 。
「敬語は堅苦しいから不要だよ。まぁ、珍しいね。そもそもゴブリンはそこまで成長するまでに討伐されちまう。それにここは王都に近いせいもあって定期的に魔物は倒されることも含めれば本当に珍しいんだ。」
「なるほど。そうなると、人目につきにくい場所が怪しいな。」
「その通り。だから今日は森の深部にいくことになるかも知れない。」
俺達はそのまま森付近へきた。林では、ゴブリンに会うことがなかった。
「おかしい。」
「ああ、俺もそう思う。」
「何がだ?」
俺とスラさんの会話の内容をララは尋ねる。
「昨日までは林にもゴブリンはいたんだ。それと、少し歩けば遭遇してしまう程度には。」
「しかし、今日は一匹も出会わない。妙だ。」
「そういうことか。だとしたら不味いかも知れない。」
「え?」
「ゴブリンが一ヶ所に集められている可能性がある。そして、ゴブリンがそうするのは人里を襲うときと相場が決まっている。」
「スタンピード」
リリィがポツリと呟く。スタンピード、魔物の大量発生のことだ。
「ギルドに戻るか?」
「いや、もう少し捜索しよう。仮にゴブリンのスタンピードだとしても、規模がわかった方がいい。」
「その前にここで飯を済まそう。」
ララの指示に従い俺達は昼食をすませた。その後、俺達は林を抜け森を進む。
「ギギ!」「ヴォヴォ!」
!?
森を歩いて一時間程、滝の近くに来たときだった。俺達はゴブリンとハイゴブリンの声を聞いた。
「どうやら、遂に発見したようだな。」
「凄い人数だ。リリィ様子を観てきてもらえるかい?」
「了解。」
そして、リリィは音もなくゴブリン達の下へ向かう。
「スラさん、ざっとみ20はいるが、彼処にどうやって隠れてたんだ?」
「俺もわからん。」
そんな疑問を抱いていたら、リリィが戻ってきた。
「お帰り。」
「ただいま。」
「どうだった?」
「数は100を越えるうちハイゴブリンは約30、ゴブリンキングは確認に出来なかった。滝の裏に洞穴があった。あと、人の声が聞こえた。」
「人の声?」
「そう、嘲笑う声と苦しむ声。明日引き渡すとかなんとか言ってた。」
「どう言うことだ?人拐いが目的?」
「そこまではわからない。」
「ともかく私たちだけでは危険だ。拐われた人にも猶予はある、一旦報告に戻ろう。」
「にしても妙だね、滝の裏に洞穴?ゴブリンの人拐い?聞いたことが無いものばかりだ。」
ララは王都に住んで長いが知らない洞穴、また知らないゴブリンの行動に混乱していた。
「まぁ、とりあえず戻ろう。その間に何匹か間引ければいいが。」
結局帰り道でもゴブリンには遭遇しなかった。
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