21 / 27
第一章:剣姫の婿取り
害虫駆除と姉妹姫
しおりを挟む害虫駆除と言っても、本当に害虫を駆除する訳じゃない。
俺が考案した、というか前世のものを再現したカードゲームだ。
「カードの種類はゴキブリ、クモ、ハエ、イナゴ、ケムシ、ムカデ、シロアリ、カメムシの八種類。それぞれのカードは8枚ずつある」
一年連続決闘勝負の二番目を終えた翌日、早速俺の部屋に集まってルールの説明をしていた。
部屋にいるのは俺とイリス。それにアリーシャとリーリア。アウローラは呼んでないんだけど、レフェルを伴ってやって来た」
「全員が同じ手札になるようにカードを配る。シャッフルしてから配るから、当然手札は偏る可能性もあるぞ」
今回は説明なので、手札は公開している。
とりあえず、6人それぞれに10枚ずつ配った。
俺の手札にはハエが4枚あるが、クモが無かったので、偏りについて説明する。
「必ず各種類1枚はくるわけじゃないのね」
「確率的には入るだろうけど、無い場合もあるさ」
続けるぞ、と言って説明を再開する。
「親は本来年長者だけど、今回は説明なので俺が務める。親は若干不利だから、他の人間より1枚多い状態ではじめてもいいけど、どうする?」
「……いいわ、あなたに任せる」
当然、決闘のルールとして採用するかどうかを俺は聞いたわけだけど、イリスはその意味を誤解しなかったみたいだ。
「じゃあ、時間短縮のために親も手札の数を揃えてスタートだ。親はまず自分の手札から1枚選ぶ。そして適当なプレイヤーの前に差し出す」
言いながら、俺はアリーシャの前にカードを置く。
「本来ならこのカードは伏せられているからな。そして宣言する『このカードはクモです』」
「ケムシじゃない」
俺がアリーシャの前に出したカードは、イリスの指摘通りにケムシだった。
「だが本来は裏返っているから何のカードかはわからない。差し出された側は、そのカードを見るか、勝負するか選べる。アリーシャ、まずは見ようか」
「はい。差し出された側が相手の言っている事が正しいと思うか、真偽が不明だった場合、このカードを見る事ができます。この時、他のプレイヤーには見せません。そして見たプレイヤーが今度は親となり、このカードを適当なプレイヤーに差し出します」
そしてアリーシャはアウローラの前に置く。
「この時、一度同じカードが差し出された相手には差し出す事は出来ないから注意な」
「『これはハエです』」
「なるほど。本来ならカードは伏せられているから私には真偽はわからない。お義兄様が嘘を吐いていたかもしれないし、アリーシャさんが嘘を吐いているかもしれない。あるいは、両方が嘘を吐いているかもしれない、それをここで判断するんですのね」
「そういう事だ。ちなみに、別に俺がクモと言って渡したカードを、クモと言って別の人間に渡してもいいからな。じゃあアウローラ、勝負しよう。この場合、このカードはハエであるかどうかを宣言する。ハエだと宣言してもいいし、ハエじゃないと宣言してもいい」
「何か、までは当てなくてもいいという事ですわね?」
「そうだ。じゃあハエと宣言してみてくれ」
「はい。このカードはハエです」
「ここで初めてカードの情報はプレイヤー全員に公開される。まぁ、当然ハエじゃない訳だから、アウローラはアリーシャの嘘を見破れなかった事になってこの勝負はアウローラの負けだ。負けた側は勝負の対象になったカードを手札とは別に自分の前に置く。これも公開情報だ。そして勝負に負けたプレイヤーが新たな親となり、自分の手札から1枚選んで、さっきと同じように、適当なプレイヤーの前に差し出す。アウローラ俺の前にくれ」
「はい。『これはゴキブリです』」
そう言ってアウローラはカメムシのカードを俺に寄越した。
……こういうところでしっかり嘘を吐いてくるあたり、策士というかギャンブラーというか……。
「じゃあ俺は勝負する。これはゴキブリじゃない。ゴキブリじゃないので、このカードは負けた側、つまり出したプレイヤーの前に置かれる」
アウローラに集中する形になっちゃったけど、他意はない。
ホントダヨ。
「で、勝負に負けたから、再びアウローラが親だ。これを繰り返していって、最終的に、自分の前に置かれたカードの中で、同じ種類のカードが4枚になる。8種類のカードが全て揃う。手札が無くなった状態で勝負に負ける。のいずれかを満たすと敗北だ。基本的には一人負けだな」
「ねぇ? これって一対一でやるの厳しくない?」
一通りの説明を受けて、イリスがそんな感想を漏らした。
そこに気付くとは、やっぱりイリスはバカとは違うな。
「できなくはないけど、一応俺は四人での勝負を考えてるけど……」
言いながら、アリーシャとリーリアを見る。
「二人がいいって言うなら、二人にするぜ?」
ババ抜きをやった限りだと、間違いなく瞬殺だと思うけどな。
イリスは顔に出過ぎだ。
「…………いいえ、ここは四人にしましょう。お互いが一人ずつ指名する形で」
「……いいぜ」
今の長考は二人にするか四人にするかで迷ってただけじゃないな。
その証拠に、俺が了承したら口元歪めて笑いやがった。
計画通りって感じでさ。
「じゃあ俺はアリーシャを指名するな」
四人勝負とは言っても、当然ながらお互いが残りの二人を指名するなら、それはチーム戦だ。
となれば、最も信用できる相手を指名するのが当然だった。
「じゃあ私はアウローラを指名するわ」
そしてリーリアじゃなくて、しれっと『賢姫』を指名する『剣姫』。
「だろうな」
相方がリーリアなら、わざわざお互いが指名する、なんて条件つけなくても良かったもんな。
これまで何度かゲームをしてきた感じだと、リーリアも手強そうだけど、やっぱイリス的にはアウローラの方が評価が高いのか。
「よろしくお願いしますわ、お姉様。そして、お手柔らかにお願いしますね」
花が咲くような笑顔でアウローラが笑う。
「お義兄様」
本来ならとても可憐で魅力的な笑顔の筈なんだけど、なんだろう。
獲物を見つけた狐のようにも見えた……。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる