24 / 27
第一章:剣姫の婿取り
婿取り12番勝負:害虫駆除 前編
しおりを挟む「皆さんお待たせいたしました! ただ今より、レオナール・エルダードとイリス・ソルディークによる一年連続決闘勝負、その三番目を開始したいと思います!
司会は今回も私、ソルディーク領地軍所属のミリナ。そして解説には、諸事情によりイリス様の侍女である、リーリア様にお願いいたします」
「不慣れですが、よろしくお願いいたします」
決闘も三回目とあって、観客達も段取りをわかってきたらしく、それぞれの挨拶に合わせて歓声を上げた。
入場料や賭けの胴元だけでなく、今回はアウローラの人脈を生かして行商人を呼び込み、彼らに露店や屋台を出させていた。
当然、場所代もしっかり取っている。
「今回は四人による決闘という変則ルールですね。勝負内容は前回のリバーシと同じく、レオナール様が考案されたゲーム、害虫駆除。こちらも本来は一人負けのゲームなのですが、特別ルールで勝ち残り制となっております」
「レオナール様かお嬢様が一位を取れなかった場合は、先に負けた方が決闘に敗北するというルールですね」
「このゲームはエルダード領内やその周辺でも、貴族より平民の間で流行っているそうですね」
「前回のリバーシもそうでしたが、ルールがシンプルですし、文字を読めなくても遊べますからね。一人負けというのも、賭けを行う場合に丁度良いのでしょう」
王国内の識字率は決して高くない。それがイコールで頭の良し悪しに直結するわけではないが、ルールを聞いただけで理解できる、というシンプルさは平民の間で流行るのに重要な要素だった。
分厚いルールブックを必要とするゲームでは、流行りようがないから当然の話ではある。
「今回は四人対戦という事で、レオナール様とイリス様以外のお二人は、それぞれが一人ずつ指名して決定しました」
「四人対戦と言いつつ、チーム戦という事ですね」
「そういう意味では、イリス様が指名なされたのがアウローラ様というのは意外でした」
「お嬢様への忠誠心では誰にも負けないと自負しておりますが、今回のような頭脳勝負では、やはり『賢姫』様には敵いません。そして、これを受け入れられたレオナール様の優しさにも敵いませんね」
「優しさ……ですか?」
「ええ。特にこの一年連続決闘のルールからしてそうですよ。例えばこのルールだったら、お嬢様は最後に一度勝つだけで良いわけです。それまで全敗だったとしても関係ありません。たった一勝でお嬢様の願いは叶います」
「しかしそれは、勝った側が次の決闘内容を決められる、というルールでバランスを取っているのではないでしょうか?」
「いえ、それもレオナール様の優しさです。先に言った通り、最後に勝てばいいのですから、決闘内容を決めるのが前の決闘で負けた側だった場合、最後の決闘の勝負内容を決めるのは誰ですか?」
「え?」
聞かれてミリナが戸惑う。
観客達もそれぞれに考えているようだ。
その空気がしっかりと伝わるだけの間を取った後、リーリアは続ける。
「それはレオナール様です。最初の決闘にレオナール様が勝っていますからね。そのような状態で、さっきの決闘には自分が勝ったから負けたそっちが勝負の内容を決めろ、と言われれば、お嬢様の性格なら間違いなく応じるでしょう」
「目に浮かぶようです」
そこで観客達の間で笑いが起きる。
「言われてるぞ」
「あなたが言わせてるんでしょ」
「大まかな流れを指示しただけで、内容までは伝えてないよ」
舞台の中央に座るレオナールとイリスが口論をしていた。
しかし、ミリナ達とは違って、二人の声は観客達に聞こえない。
また、歓声でお互いの声が聞こえにくいため、顔を近付けて会話する二人は、仲良くしているようにしか見えなかった。
「つまり一戦目の内容を決めるのがお嬢様だとすれば、間違いなく一対一の武術による勝負を選ぶでしょうから、十中八九レオナール様が負けるでしょう」
「でしょうね」
その断言に、再び笑いが起きる。
「言われてるわよ」
「言わせてんだよ」
「となると二戦目の内容を決めるのはレオナール様です。これを繰り返していくと、最後の決闘内容を決めるのは?」
「レオナール様ですね」
ミリナと観客達がようやっとリーリアに追いついた。
「つまりレオナール様は、敢えてイリス様に有利なルールとしているという事ですか?」
「全勝する自信がおありなのでしょうけれど、それ以上に、お嬢様との関係を深めていく事を目的にしているものと思われます」
「これまでの勝利要求を鑑みると、確かにそのようですね」
「勿論、負けた方が決闘内容を選ぶ、というルールでも、レオナール様が何度か要求する事はできるでしょう」
「つまり、イリス様に結婚に納得して貰いたいという思いによる優しさという事でしょうか?」
「少なくとも私はそのように考えております」
リーリアがそう締め括ると、観客達の間から感嘆の声が漏れた。
「本当?」
「さてね」
疑惑の目を向けながらも、若干頬が赤いイリス。
しかしレオナールははぐらかした。
「さて、親を決める訳だが……」
「じゃんけんをしましょう!」
いよいよ決闘が開始されるという時、イリスがレオナールの言葉を遮ってそんな提案をした。
レオナールだけでなく、アリーシャとアウローラも冷めた目でイリスを見る。
「ふふ、あの決闘以来、何度かあなたとじゃんけんをしたけれど、その内にあなたの弱点を見つけたのよ!」
「ほう。それは面白い。じゃあ勝った方が親って事でいいな?」
「ええ、勿論よ!」
「「じゃーんけーん」」
アリーシャとアウローラはそっちのけで、じゃんけんを始める二人。
決闘の主役は二人なので、アリーシャ達も文句を言わなかった。
「「ぽん!」」
果たして出された手は、レオナールがパーであるのに対し、イリスがチョキだった。
「お」
「おや」
「あら」
「よっし! ふふ思った通りね、レオナール。あなたは最初の一手でよくパーを出すのよ!」
「…………あー、そうかもな」
それは、未だにイリスがグー、チョキ、パーの順番で手を出す確率が高いからなのだが、そちらには気付いてないようだった。
「お姉様……」
「ふふ、任せておきなさい、アウローラ。頭脳戦なら確かに負けるかもしれないけれど、観察眼には自信があるんだから」
アウローラの呟きは、残念な姉に対するものだったのだが、イリスは気付かず胸を張った。
「じゃあ親はイリスな」
「ええ、わかったわ」
自らの力で親を勝ち取ったイリスは上機嫌だった。
しかし彼女は忘れている。
このゲームの敗北条件を。
敗北条件は三つ。
自分の前に同一種類のカードが4枚置かれる事。
自分の前に八種類のカード全てが置かれる事。
手札が無い状態で勝負に負ける事。
親は自分の手札から一枚出して、他のプレイヤーに渡す。
手札が無くなる事が敗北条件にあるゲームで、それは間違いなく不利だった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる