2 / 30
1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン
1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン①
しおりを挟む
俺の名前は黒田誠。
厳めしいって?
文句は名前を付けた親に言ってくれ。
だいたい『黒田』も『誠』もありふれた名前なのにつなげて名乗るとどうにも厳めしいというか古臭いというか……
俺は20代の若者なんだぜ!
もっと今風の…別に奇をてらわなくても良いけど…時代に合った名前を付けて欲しかったよ……
武士みたいな名前にしなくたって良かろうに……
と、名乗る度に思うが仕方がない。
それでもまぁ…今となっては愛着も有るし、名前的には普通だと思っているので改名までは考えていない。
就職難を謳われて久しいがどうにか職に就く事ができて数年目、俺はお気楽サラリーマン生活を満喫している。
最近一人暮らしを始めたが日々雑用に追われ親の有り難さを噛みしめる毎日だ。
今日も今日とて疲れた身体を引きずり自宅の最寄り駅の改札を通ると
「『旅が好きー列車居酒屋ー』ただいまオープン記念キャンペーン中で~す!」
という元気な声と共にチラシを押しつけられた。
別に受け取る気は無かったのだが反射的に手にしてしまったのだ。
俺は手にしたチラシを歩きながら眺める。
溜め息をつきつつ…ね……
【旅が好きー列車居酒屋ー オープン記念キャンペーン】
チラシの上で文字がキラキラと踊っていた。
別に旅なんか好きじゃない。
というか好きか嫌いかという感情を持つ程、旅なんかをしたことがない。
俺は"フンッ"と鼻を鳴らすとチラシを捨てられそうなゴミ箱を探しかけて苦笑した。
テロ等を警戒する為に町中からゴミ箱が撤去されて随分経つってのに……
ゴミ箱の代わりに目に入って来たのは当のチラシの店舗だった。
【旅が好き~列車居酒屋~】
地方都市の駅舎のような店構えに思わずたじろぐ。
そして、手の中にあるチラシを改めてよく読んだ。
『オープン記念キャンペーン中にこのチラシをご持参して来店された方は席料1時間無料』
と、書いてある。
はぁ……
俺は深々とため息をついた。
1時間しか無料にならないとは…世知辛い世の中だねぇ……
チラシを丸めようとした時、不意に今日の夕飯の準備を何もしていなかった事を思い出した。
夕飯…何だか作るの面倒くさい…なぁ……
たまには…外食も…アリだよ…なぁ……
好奇心も手伝って俺は店に入ってみた。
『いらっしゃいませ。乗車券をご購入下さい』
機械音声が出迎えてくれた。
ジョウシャケン???
疑問符で一杯の頭で辺りを見回せば【券売機】としか表現できない装置が目に入る。
これか?
空いている券売機の前に立ちチラシに掲載されていたQRコードを指定された場所にかざす。
『ご来店ありがとうございます。お好きなお席をお選び下さい』
機械音声に促されるまま俺は表示された液晶パネルを見る。
何だコレは?
どう見ても特急電車の指定席の図が液晶パネルに表示されている。
よくわからないまま、俺は適当に空いている席の一つを指定した。
『ありがとうございます。行き先をご指定下さい』
今度は行き先だぁ~??
表示されたのはカタカナで書かれた駅名と時間。
オレはスマホで現在の時間を確認する。
現在時刻は…もうすぐ18:30になるってところか……居酒屋だし、ゆっくり酒を楽しみたい。
無料分の1時間だけだとかなり慌ただしいかな……
そう考えてすぐに入店できる時間から1時間半程先の駅名を選ぶ事に決めた。
視線を券売機の上に上げると、そこには路線図よろしく駅名と到着時間が表示されている。
17:00 シリウス駅 ※開店
17:30 フォーマルクラフト駅
18:00 サザンクロス駅
18:30 オリオン駅
19:00 ジェミニ駅
19:30 デネブ駅
20:00 ポーラスター駅
20:30 ベガ駅
21:00 アルタイル駅
21:30 スピカ駅
22:00 スコルピオン駅
22:30 サジタリウス駅 ※ラストオーダー時間
23:00 アンドロメダ駅 ※閉店
俺は
【オリオン駅(18:30) ー ポーラスター駅(20:00)】
を購入した。
そして店内奥へ移動しようと辺りを見回す。
と…意外な人物に出くわした。
「え? もしかして黒田さん?」
目を丸くして俺を見ていたのは同僚の関口真奈美だった。
「せ…関口さん? どうしてここに?」
黒いロングヘアを無造作に一つにまとめたいつもの会社の制服姿からは想像もつかない…と、言っては失礼かもしれないが、今まで持っていた彼女の印象とはかけ離れた明るい青色のパンツスーツ姿に俺は目を瞬く。
厳めしいって?
文句は名前を付けた親に言ってくれ。
だいたい『黒田』も『誠』もありふれた名前なのにつなげて名乗るとどうにも厳めしいというか古臭いというか……
俺は20代の若者なんだぜ!
もっと今風の…別に奇をてらわなくても良いけど…時代に合った名前を付けて欲しかったよ……
武士みたいな名前にしなくたって良かろうに……
と、名乗る度に思うが仕方がない。
それでもまぁ…今となっては愛着も有るし、名前的には普通だと思っているので改名までは考えていない。
就職難を謳われて久しいがどうにか職に就く事ができて数年目、俺はお気楽サラリーマン生活を満喫している。
最近一人暮らしを始めたが日々雑用に追われ親の有り難さを噛みしめる毎日だ。
今日も今日とて疲れた身体を引きずり自宅の最寄り駅の改札を通ると
「『旅が好きー列車居酒屋ー』ただいまオープン記念キャンペーン中で~す!」
という元気な声と共にチラシを押しつけられた。
別に受け取る気は無かったのだが反射的に手にしてしまったのだ。
俺は手にしたチラシを歩きながら眺める。
溜め息をつきつつ…ね……
【旅が好きー列車居酒屋ー オープン記念キャンペーン】
チラシの上で文字がキラキラと踊っていた。
別に旅なんか好きじゃない。
というか好きか嫌いかという感情を持つ程、旅なんかをしたことがない。
俺は"フンッ"と鼻を鳴らすとチラシを捨てられそうなゴミ箱を探しかけて苦笑した。
テロ等を警戒する為に町中からゴミ箱が撤去されて随分経つってのに……
ゴミ箱の代わりに目に入って来たのは当のチラシの店舗だった。
【旅が好き~列車居酒屋~】
地方都市の駅舎のような店構えに思わずたじろぐ。
そして、手の中にあるチラシを改めてよく読んだ。
『オープン記念キャンペーン中にこのチラシをご持参して来店された方は席料1時間無料』
と、書いてある。
はぁ……
俺は深々とため息をついた。
1時間しか無料にならないとは…世知辛い世の中だねぇ……
チラシを丸めようとした時、不意に今日の夕飯の準備を何もしていなかった事を思い出した。
夕飯…何だか作るの面倒くさい…なぁ……
たまには…外食も…アリだよ…なぁ……
好奇心も手伝って俺は店に入ってみた。
『いらっしゃいませ。乗車券をご購入下さい』
機械音声が出迎えてくれた。
ジョウシャケン???
疑問符で一杯の頭で辺りを見回せば【券売機】としか表現できない装置が目に入る。
これか?
空いている券売機の前に立ちチラシに掲載されていたQRコードを指定された場所にかざす。
『ご来店ありがとうございます。お好きなお席をお選び下さい』
機械音声に促されるまま俺は表示された液晶パネルを見る。
何だコレは?
どう見ても特急電車の指定席の図が液晶パネルに表示されている。
よくわからないまま、俺は適当に空いている席の一つを指定した。
『ありがとうございます。行き先をご指定下さい』
今度は行き先だぁ~??
表示されたのはカタカナで書かれた駅名と時間。
オレはスマホで現在の時間を確認する。
現在時刻は…もうすぐ18:30になるってところか……居酒屋だし、ゆっくり酒を楽しみたい。
無料分の1時間だけだとかなり慌ただしいかな……
そう考えてすぐに入店できる時間から1時間半程先の駅名を選ぶ事に決めた。
視線を券売機の上に上げると、そこには路線図よろしく駅名と到着時間が表示されている。
17:00 シリウス駅 ※開店
17:30 フォーマルクラフト駅
18:00 サザンクロス駅
18:30 オリオン駅
19:00 ジェミニ駅
19:30 デネブ駅
20:00 ポーラスター駅
20:30 ベガ駅
21:00 アルタイル駅
21:30 スピカ駅
22:00 スコルピオン駅
22:30 サジタリウス駅 ※ラストオーダー時間
23:00 アンドロメダ駅 ※閉店
俺は
【オリオン駅(18:30) ー ポーラスター駅(20:00)】
を購入した。
そして店内奥へ移動しようと辺りを見回す。
と…意外な人物に出くわした。
「え? もしかして黒田さん?」
目を丸くして俺を見ていたのは同僚の関口真奈美だった。
「せ…関口さん? どうしてここに?」
黒いロングヘアを無造作に一つにまとめたいつもの会社の制服姿からは想像もつかない…と、言っては失礼かもしれないが、今まで持っていた彼女の印象とはかけ離れた明るい青色のパンツスーツ姿に俺は目を瞬く。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる