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3.山本 皐月 故郷は遠きにありて
3.山本 皐月 故郷は遠きにありて②
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幸い財布は持っている。
仕方ない……
雨宿りさせてもらおう。
今の時刻は午後5時。
お店は開店時間になったばかりだ。
一時間もすれば止むかな…
止んで欲しいなぁ…止まなくても小雨程度になってくれると助かるんだけど……。
私は券売機で【シリウス駅(17:00) ― サザンクロス駅(18:00)】を購入することにした。
なんとなくの気分で『マリンパーク号』の席を選ぶ。
へぇ…本物の乗車券そっくり……
まじまじと眺めていたら父が店の更に奥へと勝手に入っていってしまった。
私は慌てて父の後を追う。
【待合室】
と、書かれたドアを父はおもむろに開けた。
そしてスタスタと中に入りどっかりと座る。
でも、ここはどう見ても食事ができる部屋ではない。キョロキョロと部屋を見回すと矢印が入ってきたドアとは違うドアを指していた。
【改札口はこちら】
改札口? このドアから奥に入るのかしら……?
よくわからないけど行ってみるしかない!
私は父に呼びかける。
「お父さん。ここは【待合室】だからもっと奥に行きましょう」
「おぅ、そうか。もう電車が出るのか?」
「そうですよ。行きましょう」
父の話を否定してはいけない。
新しい情報は混乱させるだけなのだ。
どんなところなのか父を混乱させずに席まで誘導できるのか。
かなり不安だが仕方ない……。
だが、通路の先に有った光景は私の予想を遥かに上回る設備だった。
本物そっくりの自動改札機。
駅のプラットホームに止まる特急列車……。
え? ここ居酒屋さんだよね?
でもこれなら…
この光景なら父は混乱せずに済む。
私は改札へ向かう父を急いで追いかける。
「お父さん。切符! 乗車券!」
「あぁ…そうだな」
父は素直に乗車券を受け取ると、そのまま自動改札機を通ろうとした。
「お父さん、乗車券をここに当てなきゃダメよ」
私は父の手にある乗車券を自動改札の液晶に当てるように誘導する。
出入口の扉が自動的に開いた。
私は父と一緒にプラットホームへと進む。
「いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですか?」
駅員さんのような制服を着た女性がにこやかに話かけてくれた。
おそらく店員さんなのだろう。
「はい、初めてです。どうすればいいんでしょう?」
私はオロオロしながら答える。
彼女は楽しそうに微笑みながら
「では、こちらへ。トレイをどうぞ」
と、トレイを渡してくれた。
「お飲み物をお選び下さい」
ドリンクバーのような場所に誘導された…が……。
…どうしよう。
「あ、あの…お冷か白湯はいただけますか?」
彼女は一瞬目をしばたかせたが、すぐに笑って
「お冷はこちらになります。お白湯はご用意がございませんが沸騰したお湯ならこちらです。お茶用のお湯なので火傷にご注意下さい」
と、教えてくれた。
私はお茶でもいただけるが父はお冷(水)かお白湯でないとむせてしまう。
どうしようか…と少し考え、私は父のグラスにお湯を注ぐと氷を2~3個入れて飲み頃の温度に調節しトレイにセットした上で父に持たせた。
そして私は冷たいお茶をグラスに入れ自分のトレイにセットする。「こちらがお通しになります。お好きな小鉢をお選び下さい」
小鉢に入った料理が並ぶテーブルへと案内された。
3種類程の料理が小鉢に入って並んでいる。
どれも美味しそうだが父は食べられるだろうか?
実は…父には軽い嚥下障害があるのだ。
故に食べられる料理は限られている。
冷奴なら大丈夫かな……。
私は1/4丁ぐらいの冷奴が入った小鉢を選んだ。
「【シリウス駅名物、限定骨付きカルビ】は如何ですか?」
彼女がにこやかに指し示した場所には肉料理のお皿が並んでいた。
ジュウジュウと音を立てているのは【骨付きカルビ】。
どうやら焼き立てのようだ。
「数量限定です」
う~ん…
食べてみたいけど、お父さんは食べられるかな……。
少し悩んで一皿だけ買うことにする。
父が食べられるようなら追加で買いに来よう。
トレイと小鉢で両手が塞がったのを見た店員さんが小鉢をトレイにジョイントする方法を教えてくれたので父と私のトレイをお弁当箱のように設える。
「そろそろ列車の発車時刻になります。ご乗車下さい」
店員さんに促され私達は列車に乗り込んだ。
乗車券の番号を頼りに席を探す。
さほど時間もかからず席に到着した。
「では、良い旅を!」
笑顔が眩しい店員さんは通路と席の間にあるビニールカーテンを閉めた。
私は父を座らせると父の前の座席の背もたれに有るテーブルを出してトレイを置かせる。
そして自分も座席の前に設置してあるテーブルを準備しトレイを置いた。
席に座るとかなり狭かったのでリクライニングを調節する。
隣に座る父も無言で席のリクライニングを調節しているところだった。
そういうところは忘れていないらしい……。
苦笑しつつ後ろの座席の様子を確認する。
開店直後だった為か後ろの席に他のお客様はいなかった。
「ほら、お父さん見て! 海が見えるわ」
窓の外に目を向ければ雨にけぶる海が見えた。
正確にはライトアップされている海の絵が描かれた大きな看板だ。
それでも窓から眺めると雨にけぶる海沿いの景色そのものだった。
『まもなく列車はシリウス駅を出発致します。どなた様もお乗り遅れのございませんよう…。次の駅はフォーマルクラフトです』
臨場感たっぷりに発車ベルが響いた。
そしてホーム側のドアが閉まる。
列車の走行音まで流れてきた。
今にも列車が動きだしそう……。
動かない事がおかしな気分になる演出だ。
仕方ない……
雨宿りさせてもらおう。
今の時刻は午後5時。
お店は開店時間になったばかりだ。
一時間もすれば止むかな…
止んで欲しいなぁ…止まなくても小雨程度になってくれると助かるんだけど……。
私は券売機で【シリウス駅(17:00) ― サザンクロス駅(18:00)】を購入することにした。
なんとなくの気分で『マリンパーク号』の席を選ぶ。
へぇ…本物の乗車券そっくり……
まじまじと眺めていたら父が店の更に奥へと勝手に入っていってしまった。
私は慌てて父の後を追う。
【待合室】
と、書かれたドアを父はおもむろに開けた。
そしてスタスタと中に入りどっかりと座る。
でも、ここはどう見ても食事ができる部屋ではない。キョロキョロと部屋を見回すと矢印が入ってきたドアとは違うドアを指していた。
【改札口はこちら】
改札口? このドアから奥に入るのかしら……?
よくわからないけど行ってみるしかない!
私は父に呼びかける。
「お父さん。ここは【待合室】だからもっと奥に行きましょう」
「おぅ、そうか。もう電車が出るのか?」
「そうですよ。行きましょう」
父の話を否定してはいけない。
新しい情報は混乱させるだけなのだ。
どんなところなのか父を混乱させずに席まで誘導できるのか。
かなり不安だが仕方ない……。
だが、通路の先に有った光景は私の予想を遥かに上回る設備だった。
本物そっくりの自動改札機。
駅のプラットホームに止まる特急列車……。
え? ここ居酒屋さんだよね?
でもこれなら…
この光景なら父は混乱せずに済む。
私は改札へ向かう父を急いで追いかける。
「お父さん。切符! 乗車券!」
「あぁ…そうだな」
父は素直に乗車券を受け取ると、そのまま自動改札機を通ろうとした。
「お父さん、乗車券をここに当てなきゃダメよ」
私は父の手にある乗車券を自動改札の液晶に当てるように誘導する。
出入口の扉が自動的に開いた。
私は父と一緒にプラットホームへと進む。
「いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですか?」
駅員さんのような制服を着た女性がにこやかに話かけてくれた。
おそらく店員さんなのだろう。
「はい、初めてです。どうすればいいんでしょう?」
私はオロオロしながら答える。
彼女は楽しそうに微笑みながら
「では、こちらへ。トレイをどうぞ」
と、トレイを渡してくれた。
「お飲み物をお選び下さい」
ドリンクバーのような場所に誘導された…が……。
…どうしよう。
「あ、あの…お冷か白湯はいただけますか?」
彼女は一瞬目をしばたかせたが、すぐに笑って
「お冷はこちらになります。お白湯はご用意がございませんが沸騰したお湯ならこちらです。お茶用のお湯なので火傷にご注意下さい」
と、教えてくれた。
私はお茶でもいただけるが父はお冷(水)かお白湯でないとむせてしまう。
どうしようか…と少し考え、私は父のグラスにお湯を注ぐと氷を2~3個入れて飲み頃の温度に調節しトレイにセットした上で父に持たせた。
そして私は冷たいお茶をグラスに入れ自分のトレイにセットする。「こちらがお通しになります。お好きな小鉢をお選び下さい」
小鉢に入った料理が並ぶテーブルへと案内された。
3種類程の料理が小鉢に入って並んでいる。
どれも美味しそうだが父は食べられるだろうか?
実は…父には軽い嚥下障害があるのだ。
故に食べられる料理は限られている。
冷奴なら大丈夫かな……。
私は1/4丁ぐらいの冷奴が入った小鉢を選んだ。
「【シリウス駅名物、限定骨付きカルビ】は如何ですか?」
彼女がにこやかに指し示した場所には肉料理のお皿が並んでいた。
ジュウジュウと音を立てているのは【骨付きカルビ】。
どうやら焼き立てのようだ。
「数量限定です」
う~ん…
食べてみたいけど、お父さんは食べられるかな……。
少し悩んで一皿だけ買うことにする。
父が食べられるようなら追加で買いに来よう。
トレイと小鉢で両手が塞がったのを見た店員さんが小鉢をトレイにジョイントする方法を教えてくれたので父と私のトレイをお弁当箱のように設える。
「そろそろ列車の発車時刻になります。ご乗車下さい」
店員さんに促され私達は列車に乗り込んだ。
乗車券の番号を頼りに席を探す。
さほど時間もかからず席に到着した。
「では、良い旅を!」
笑顔が眩しい店員さんは通路と席の間にあるビニールカーテンを閉めた。
私は父を座らせると父の前の座席の背もたれに有るテーブルを出してトレイを置かせる。
そして自分も座席の前に設置してあるテーブルを準備しトレイを置いた。
席に座るとかなり狭かったのでリクライニングを調節する。
隣に座る父も無言で席のリクライニングを調節しているところだった。
そういうところは忘れていないらしい……。
苦笑しつつ後ろの座席の様子を確認する。
開店直後だった為か後ろの席に他のお客様はいなかった。
「ほら、お父さん見て! 海が見えるわ」
窓の外に目を向ければ雨にけぶる海が見えた。
正確にはライトアップされている海の絵が描かれた大きな看板だ。
それでも窓から眺めると雨にけぶる海沿いの景色そのものだった。
『まもなく列車はシリウス駅を出発致します。どなた様もお乗り遅れのございませんよう…。次の駅はフォーマルクラフトです』
臨場感たっぷりに発車ベルが響いた。
そしてホーム側のドアが閉まる。
列車の走行音まで流れてきた。
今にも列車が動きだしそう……。
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